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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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1116.転売屋はナッツを仕入れる

「道中気を付けて。」


モコモコの服に身を包んだ男は俺と入れ違うように馬車に乗り込み街の方へと走り出した。


この感じだと夕方には到着するだろうか。


心なしか冬になってから北方商人の動きが活発になっているように感じるのだが、やはり寒さに強いからだろうか。


「なに突っ立ってんだよ。」


「いや、どこからどう見ても宿屋の店主だなとおもっただけだ。」


「似合わないってか?」


北方商人を店の外まで見送っていたダンが俺を見るなり営業スマイルを崩す。


こいつもこんな顔できるんだなぁ。


戦うことしか出来ないとか言っておきながら、今では立派な宿屋の主人だ。


「その逆だ、よく似合ってるよ。」


「ほめても何も出ねぇぞ。ほら、さっさと入れ。」


「それが客に対する態度か?」


「お前が客ならな。リンカ、シロウが来たぞ!」


「シロウさんが?あ、ほんとだ!やっほ~シロウさん!」


「あい!」


ほかに客がいないんだろう、中に入り大きな声を出すとカウンターの裏からリンカとカリナが勢いよく顔を出してこちらを見てくる。


ファンは仕込みの最中だろうか、まぁ後で声をかければいいだろう。


「二人とも元気そうだな、風邪ひいてないか?」


「おかげさまでこの寒さでもなんとかやっていけてるかな。カリナはこの前鼻水出てたけど、アネットさんの薬ですぐに良くなったの。今度お礼言っておいて。」


「元気になって何よりだ。ほらカリナ、お土産だぞ。」


「わ!!ありあとございましゅ!」


持ってきた人形を手渡すと、目をキラキラさせて受け取りさらにはお礼まで言ってくれた。


マジか、もうそんなことできるのか。


子供の成長は早いなぁ。


「どういたしまして。しっかし、会うたびにどんどん成長していくなぁ。」


「でしょ~、ここにきていろんな人に会うじゃない?だからおしゃべりもどんどん上手になってくるの。みんなカリナを見ると笑顔になるのよ。」


「そりゃそうだろう、立派な看板娘だな。」


「あい!」


「カリナがいると酒を飲んで暴れるやつもいないから大助かりさ。っと、そうだシロウ例のブツが売り切れたから補充を頼めるか?」


嬉しそうに人形を抱きしめるカリナの頭をなでてやると、横に来たダンが思いもしなかったことを言い出した。


ここに来たのはそのブツについて話を聞きに来たんだが、まさかもう売り切れるとは。


「まだ二日目だぞ。」


「初日に半分ぐらい売れて、さっきすれ違ったあの人が残り全部買って行ったんだ。」


「マジか。」


「北に戻った時のお土産にするんだと。」


「そのつもりで俺も持ってきたんだが、こんな短期間で売り切れるとはなぁ。他のはどうだ?」


「保存食やジャムが人気だな、後は西方のガラスも見ている人は多い。だが移動するにはちょっと繊細過ぎるから売れるとしたら帰りだと思うぞ。」


うーむ、これは思っている以上に新しい金儲けができるのかもしれない。


ダンの店の一角を借りて始めたのは街の特産品や南方で買い付けて加工してきた品を売る特設スペース。


道の駅なんかでよくあるようなやつだが、とりあえず説明せずにぱっと売れるものをと思って置いておいたのがまさか完売しているとはちょっと想像できなかった。


売れたとしてもせいぜい半分ぐらいかと思っていたんだが、思っていた以上に南方の品は魅力的なようだ。


向こうで加工してもらっているグラススラグの破片や南方の砂や貝殻が入った可愛らしいボトル。


これまたお土産物屋かなんかでよく見かけるやつだが、街で売るよりもさらに高い値段をつけたにもかかわらず完売したということはかなりの需要があるということだろう。


この感じだと南方の砂糖や布なんかも売れるんじゃないだろうか。


街で売るよりもこっちで売った方が利益が高いとなれば持ち込まない理由はない。


もちろん販売数が増えればダンたちの手を煩わせることになるのだが、販売額の二割を報酬にする約束なので向こうとしても悪くない話だろう。


営業外利益があればあるほど安心して本業に取り組めるというもの。


宿屋を任せている立場としても、その辺のフォローはしっかりするつもりだ。


「とりあえず置物に関しては全部置いていくとして、南方系の商材はまだまだ売れそうだから今度持ってくるとしよう。それで、向こうも何か置いていったか?」


「あぁ、最初は懐疑的な感じだったが最後には納得してもらえた。でもいいのか?向こうの品は手数料なしだなんて、みすみす儲けを捨ててるようなもんだぞ。」


「確かに手数料を取れば二度美味しいが俺たちからすれば北方の品を手に入れるまたとないチャンスだ。どんなものがあるかわからないし、ぞれを探るための実験場だと思ってくれ。仮に俺たちに使い道はなくても南にもっていけば売れるかもしれないし、転がすだけで儲けが出るなら悪い話じゃないだろ?」


ダンの所に俺たちの商品を置いたように、北方の商人にもここに好きな商品を置いて取引出来る事をアピールしてもらっている。


ようは無人の交易所をここに作ろうってわけだ。


向こうの商人が手軽に参加できるよう手数料を払うのは俺たちだけ、商品を置いて帰りに立ち寄るだけで売れた分はすべて儲けになるんだからやらない理由はないだろう。


もちろん売れ残ったら向こうとしては損失だが、南方の品が完売してしまったように北方の品もまた完売する可能性が高い。


っていうか、する。


仮に売れ残ってもしばらくは俺たちが責任を持って買い付けることで、ここに置いていけば売る手間が省けると思ってもらえたら完璧だ。


土壌を作るための初期投資を怠って芽が出ることはほとんどない。


何事にもリスクはつきものってね。


「ちなみに今回置いていったのはそいつだ。ピーピーナッツっていう豆らしいんだが、固い殻に覆われていてそれを割って食べるらしい。知ってるか?」


「俺の知っている食い物と同じならな。しかし北方の名産だってことは知らなかった。」


「夏の間に花を咲かせて秋のうちに地面に実をつけるらしいぞ。必要になったらその都度雪の下から掘り起こすからかなり長いこと収穫できるんだそうだ。」


「なんにせよ食べてみたらわかるだろう、一個もらうぞ。」


壁際に置かれた麻袋に手を突っ込んで中身を一つ取り出す。


真っ黒い殻は見覚えのあるひょうたん柄をしていて、振るとからからといい音がする。


色はさておき他は思っていたのと同じようだ。


『ピーピーナッツ。主に北方で栽培される豆の一種で黒い殻は寒さに強く、長い冬の間も土の中で実を守り続けている。殻はハンマーで割らないと割れないぐらいに固いが、中身はコリコリとしており栄養価が高い。若木の葉を吹くとピーピーなる事からその名がついた。生のまま食べたり茹でたりと調理法は様々。最近の平均取引価格は銀貨2枚。最安値銀貨1枚最高値、銀貨5枚、最終取引日は本日と記録されています。』


元の世界の奴は指で簡単に殻を割ることができたのだが、生憎とこれはそういうわけにもいかないようだ。


ハンマーがないので腰にぶら下げた短剣の柄で叩いてみると、三回ほどでパキンといい音がして殻が割れ中から白い実が姿を現した。


「ん、美味い。」


「ほぉ、そんな感じになってるのか。」


「味はいい感じだし自分で割るのも新鮮で冒険者に受けそうだ。全部で何個あるって?」


「置いていったのはそこにある二袋だけだが、在庫自体は結構あるような口ぶりだったな。一袋銀貨30枚、二つで銀貨50枚だそうだ。」


「よし、買った。」


麻袋一つで30kg分ぐらいは入っているだろうか。


殻付きが一つ5gとして考えると1kgで200個程、キロ単価銀貨1枚で考えると一人10粒として20人分確保できるから一人前が銅貨5枚の計算になる。


麻袋一つで600人分あると考えれば上乗せした分が丸々利益になるので計算がしやすいな。


さすがに倍の値段ってのは難しいだろうが、銅貨2枚上乗せして銀貨12枚。


それだけの利益が出る上に加工もせずそのまま客の前に出すだけでつまみとして完結できるとなれば、導入する飲み屋も多いだろう。


俺はただ右から左に転がすだけで二袋につき銀貨10枚も稼ぐことができる。


なんてぼろい商売だろうか。


なにより北方の品は今のところこのルートでしか手に入らないので、ここを取引所兼納入先にすれば他人が真似して仕入れることは難しい。


完璧じゃないか。


「即決かよ。」


「あぁ、こいつは金になる。仕入れ用の金を置いておくから、戻ってきたときに次回から持ち込んだ分はすべて買い上げると伝えてくれ。一度味を占めたら次からまた新しいネタを持ち込んでくるはずだ。」


「よくまぁそこまで頭が回るもんだ。」


「それで飯食ってるからな。向こうも持ち込む分が確実に金になる上に、ここで買い付けた南方の品がもっと金を運んでくるんだからウハウハだろう。さらに俺の分が売れればダンも儲かる、まさに三方良しってやつだ。」


本来は「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」という元の世界の言葉だが、この場合「世間良し」ではなく「仲介良し」ってなるんだろうか。


いや、こっちは新しい食べ物を手に入れ、向こうは南方の品々を手に入れることでそれを享受する人も喜ぶからやっぱり「世間良し」になるのかもしれない。


となると四方良しになるのか?しらんけど。


「まさに金が金を呼ぶわけか。」


「そういうことだ。その噂が広がればこの宿を使う人はますます増えるだろうからここももっと忙しくなるぞ。」


「まったく、俺はお前が恐ろしいよ。」


「もっと褒めていいんだぞ。」


「いや、ほめてないし。」


「なんでだよ!」


誰もが喜ぶ最高のやり方だぞ。


まぁ俺もここまでうまくいくとは思っていなかったが、そうなってくれればここに宿を作った買いがあるってもの。


誰もやったことがないことをやるからこそ金は金を生む。


それを考えるのが楽しいんだよなぁ。


さて、新しいネタも手に入れたし早速持ち帰ってどう売りさばくか検討しよう。


転がすだけで儲けるのもいいが、それを使って儲けを出すのはもっと好きだ。


ピーピーナッツ。


新しい食材がどんな利益を生み出すのか、今から楽しみだなぁ。

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