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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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11.転売屋は色街に行く

怪しげなネオンサイン・・・ではなくオレンジ色の灯篭が道を照らしている。


街の中心街から離れた一角。


そこはいつもとは違う雰囲気に包まれていた。


道行く人は皆男ばかり。


いや、時々女も交じっているが9割ほどは男だ。


誰もが熱に浮かされたようにフラフラと道を歩いていく。


ここに満ちる匂いのせいだろうか、甘ったるい香りが鼻の奥から脳を溶かしてくる。


そんな感覚すらある。


危ないクスリでも入ってるんだろうか。


いや、まさかな。


そんなことを考えていると、突然目の前に胸元の空いたドレスを着た女が飛び出してきた。


「お兄さん、良かったらこれからどぉ?お姉さんが色々と教えてあげるわよ。」


女はただでさえ開いた胸元をさらに広げ俺を誘って来る。


乳首まで見えるんじゃないか、それぐらいにだ。


この年齢相当の俺だったら今ので一発KOだっただろうが、生憎中身は40越えたオッサンなんでね。


そんな色香じゃなびかねぇよ。


「生憎経験は豊富な方でね。」


「ここに来る男はみんなそう言うけど、本当に豊富なのかしら。」


「おっと、その手には乗らないぜ。いい女が見つからなかったら手ほどきしてもらうよ。」


「失礼ね!」


頬を打たれそうになるのを軽く避け、お返しとばかりに大きな乳房を下から持ち上げる。


まるでマシュマロのような柔らかさに思わず力が入りそうになるが、可愛い悲鳴を上げた女に免じてすぐにその手を放した。


ヒラヒラを手を振りながら先に進むも女はもう追ってこない。


不思議に思って後ろを振り返るともう別の男に声をかけていた。


商魂たくましいな。


そう、ここは町一番の繁華街。


この街唯一の遊びと言えば、そう女ってわけだ。


リンカの話じゃ部屋にお持ち帰りも出来るらしいが、生憎部屋に呼べるほどきれいにしていないんでね。


女を買うよりも高い品がごろごろ転がってるんだ、お小言言われないようにこっちで楽しませてもらうさ。


そんな事を思いながら、他の男たちのようにゆっくりと時間をかけながら通りを歩いていく。


先程のように声を掛けて来る女はいるが、あまりそそられるようなタイプじゃなかった。


正直に言って皆美人だ。


この商売をしているだけあって身なりは綺麗だしスタイルもいい。


でもなぁ、なんか違うんだよなぁ。


そんなことを考えていると気づけば通りの端まで来てしまった。


ふむ、もう一周するか。


くるりと反転して戻ろうと思った時、ふと路地裏の何かと目が合った。


「何か用か?」


そいつに声をかけると慌てて目をそらしてしまった。


だがまたチラリと俺を見る。


何時までもここに居ると変なので用心しながら路地裏に近づくと、そいつは近づいた分だけ離れて行った。


「・・・別に。」


「見た感じここの女じゃないな。」


「ここにいる安い女たちと一緒にしないで。」


「へぇ、じゃあ自分は安い女じゃないっていうのか?」


「そうよ。一晩銀貨5枚程度の女なんかと一緒にされたくないわ。」


銀貨5枚。


それはマスターに聞いたここの相場と同じ値段だ。


安ければ銀貨3枚とか2枚の女もいるし、高ければ一晩で金貨1枚かかるようなのもいるらしい。


どの世界でも夜の世界の価格差は変わらないんだな。


「じゃあ自分はいくらなんだ?」


「だからそう言うのと一緒にしないでって言ってるでしょ。」


暗くて容姿まではわからないが気の強そうな感じはしている。


男を連れ込んで金品をせしめるつもりなら逃げるのはおかしいよな。


「そうかい、悪かったよ。」


「フン、適当な女でも買って満足して来れば。」


気の強い女は嫌いじゃないがお呼びでないのなら他を当たるまでだ。


顔もスタイルもわからないし、そんな素性の分からない女を買う程飢えているわけでもない。


一先ず路地から出て深呼吸をしてもう一度そいつの方を見る。


だが何時の間にかそいつは路地の奥へと消えてしまったようだった。


ま、いいか。


気を取り直して再び色街を進んでいく。


何軒か話を聞いてみると、気になる女が二・三人いた。


他も当たるよと言ったのは焦らしたかったわけではなく、ただ頭の奥に残るモヤモヤが無くならないからだ。


再び端まで来てしまったのでまたクルリと回り通りを進む。


二往復するのは流石に恥ずかしいな。


まるで風俗に入り損ねた童貞みたいじゃないか。


さっき誘って来た女は無事に客を捕まえたようでもうどこにもいなかった。


頭の奥に残るモヤは一向に取れる気配がない。


やはり疲れているんだろうか。


そんなことを考えながら歩いていると再びあの視線を感じた。


「何か用か?」


「・・・別に。」


「安い女じゃない割には客が捕まってないじゃないか。」


「アンタこそ金がなくて安い女も捕まえられなかったんじゃないの?」


そいつはさっきと変わらない場所でこちらを見ていた。


だがさっきと違うのは少しだけ通りに出ていたこと。


オレンジ色の明かりに照らされて、やっとその容姿を見る事が出来た。


正直に言って美人ではない。


いや、美人の概念は人それぞれだから人によっては美人かもしれないから、平均点以上であるとだけ言っておこう。


美人というよりも、愛嬌のある顔をしているな。


胸はそれなりにあるようだがなぜか腕を組んでそれを隠している。


まるでみられるのを拒んでいるようだ。


背は俺よりも低いが、組んだ腕は他の女たちのような柔らかい見た目と違い筋肉が目立つ。


立ち姿も不自然だ。


本職の女は皆力が抜け、しなだれかかる様に男を誘う。


だが、そいつは仁王立ちするかのように俺を見ている。


いや、睨まれているのか、これは。


「ありがたい事に金には困ってなくてね、安くても高くても気にならないんだ。しいて言えば気に入る女がいなかった。」


「言い訳にしてはきついんじゃない?」


「これを見てもそう言えるのか?」


おれはポケットから金貨を一枚取り出した。


オレンジ色の明かりの下でもわかるその輝きにそいつの目が大きく見開かれた。


金貨に引き寄せられるように、そいつは一歩こちらに出て来る。


歳は今の俺と同じぐらか。


だが、どう見ても本職でもリンカのような普通の女でもない。


着ている服も派手な胸元の開いた服ではなく、むしろ薄汚れた普通のシャツだ。


下もスカートではなくただのズボン。


浮浪者には見えない。


だが、それに近い物を感じるな。


訳あり。


その言葉がピッタリの女だ。


「おっと、ここまでだ。安い女じゃないんだろ?」


「・・・そ、そうよ。それっぽっちじゃ私は買えないわね。」


慌てて路地まで戻ったが、それでも逃げる様子はない。


自信ありげに話しているが、声が変に裏返っている。


「じゃあいくらなんだ?」


「そうね、金貨2枚、いや3枚なら抱かせてあげてもいいわよ。」


「金貨3枚、随分と安いんだな。」


「そ、そうかしら。」


「てっきり金貨10枚ぐらい言われるかと思っていた。」


「そ、そんなに価値のある女じゃ・・・ないわ。」


最後の方は声が小さくなり聞き取れなかった。


最初の勢いはどこへやら、急にしおらしくなったな。


気付けば頭のモヤモヤも無くなっている。


そうか、俺はこの女が気になっていたのか。


こんな感覚久々ですっかり忘れていた。


俺は意を決して女の方に歩みを進める。


一瞬ビクッとして逃げようとした女だったが、観念したようにその場に立ち続ける。


近くで見るとなかなかにいい女じゃないか。


「さすが、高いだけあっていい女だな。」


「そうでしょ、普通じゃ買えないんだから。貴方だけ特別よ。」


「普段からそうやって男を誘ってるんだろ?」


「馬鹿言わないで!こんなこと初めてに決まってるで・・・!」


慌てて口を押さえるも、もう遅い。


しまったと言った顔をした女をみて、思わず笑みがこぼれてしまった。


それを見たそいつはまた不機嫌そうな顔をする。


だが文句を言わず、グッと耐えたようだ。


「お前、名前は?」


「・・・エリザ」


「その見た目、冒険者か。」


「ど、どうしてそう思うの?」


「本職の女がそんな恰好をするはずがない、それと腕の筋肉だな。普通に暮らしていたんじゃそこまでに筋肉はつかないだろう。大方急に金が必要になって仕方なく体を売ろうとしたがこの期に及んでビビったって所か?」


「うるさいわねあなたには関係ないでしょ!」


どうやら図星らしい。


普通であれば面倒事を抱えてそうな女にちょっかいをかける必要はないのだが、この世界に来て若くなったからかどうもそっちの欲望が強くなってしまったようだ。


この女を抱きたい。


その考えが頭をグルグル回っている。


「それで、本当はいくらいるんだ?」


「え?」


「だから、いくら必要なんだって聞いているんだ。」


「アンタには関係ないって「いいから言えよ。」」


かぶせるようにして言うと女は黙ってしまった。


無言の時間が過ぎていく。


幸いここは通りの外れ、通る人なんていやしない。


根比べだなと思った、その時だった。


「・・・金貨5枚。」


「金貨5枚必要なのか?」


「明日までに金貨5枚持って行かなかったら売られるんだ。」


「金でも借りたのか?」


「仕方ないじゃない、他の仲間は死んじゃったし外に出てもケガの治療費やなんやらでどんどんお金は無くなっていくし。装備を質に入れて何とか工面したけど、装備なしじゃ誰も雇ってくれないし、最後は自分を質に入れたけど、駄目だった・・・。」


さっきまで気丈にしていた女が堰を切ったように言葉を漏らす。


気付けばその瞳からは涙があふれ、乾いた地面に吸い込まれていった。


ドラマか何かなら肩の一つでも抱いてやるんだろうが、残念ながらそんなことはしない。


「わかった。」


「え?」


「金貨5枚やる、だから俺に抱かれろ。」


「アンタ、何言ってるの正気?」


「俺は正気だ、金貨5枚でお前を買えるんだろ?思っているよりも安いじゃないか。」


今度は革袋から金貨を掴み女に握らせる。


恐る恐る開かれたその手には5枚の金色の硬貨が握られていた。


「嘘・・・。」


「嘘じゃない、これで俺はお前を買う。明日その金で自分を買い戻して来い。」


「どうして、なんで?別に美人でもないし、身体だってごつごつしてるし。」


「俺が抱きたいって思った、それだけだ。ほら、さっさと行くぞ、覚悟決めろ。」


正直に言ってもう我慢も限界だ。


口では冷静を装っているが心臓はバクバクとうるさいし、下半身は今にも暴走しそうだ。


俺はエリザの肩を抱き通りに戻る。


肩を抱いた瞬間またビクリと震えたが、そのまま俺の腑に身を寄せてきた。


どうやら覚悟が決まったようだ。


「ねぇ、一つだけお願いしたいんだけど。」


「なんだ?」


「お湯、貰ってくれる?この2日ぐらい外にいたから・・・。」


「そうだな。初めてくらいは綺麗な方がいいだろ。」


「ちょ、何で初めてって知ってるのよ!」


「そんな雰囲気だったからな。そうか、やっぱり初めてか。」


「うるさいわね、別にいいでしょ!」


さっきまでのしおらしさはどこへやら、肘で思いっきり突かれた。


正直に言って無茶痛い。


だがそれよりも早く抱きたくて仕方ない。


エリザを抱いたまま宿に戻るとマスターは一瞬驚いた顔をしていたが何事もなかったように鍵をくれた。


だが、お湯を持って来たリンカには信じられないと言った顔をされてしまう。


別に俺が誰を抱こうが構わないだろ?


最後の清めだけは一人でしたいと懇願されたので仕方なく部屋の外でその時を待つ。


永遠とも思える時間が続くと思ったが、ドアはちゃんと開き、中から恥ずかしそうな顔をするエリザが俺を見ていた。


さぁ、お楽しみの時間だ。


俺は襲いかかりたくなる気持ちをぐっとこらえ、ゆっくりと部屋に入るとそっと扉を閉めるのだった。


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