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ナルニア物語(桃花)

作者: 狼花

  「管理人さん、本借りにきたよ」

「あ、君かとりあえずいつも言ってるけどドアを開ける前にインターホンを鳴らそうよ」

今日はこのマンションの管理人さんから本を借りに来た。

出会って3ヶ月くらいになるけどいつも優しくしてくれる大人のお姉さんの管理人さん。

「えー、でも鍵かかってないし」

「家に鍵がかかってなくても鳴らして欲しいな」

管理人さんは相変わらず椅子に座って本を読んでいた。


 「今何読んでるの?」

「図解、錆・腐食・防食の事典」

「なんでそんなの読んでるの?」

「面白そうだし、水道管とかたまに直すから為になると思って」

管理人さんは私と会話しながらお茶の準備を始めた。

管理人さんとは本の貸し借りだけじゃなくてこうやってお茶をしながら

学校や家のことを話したりもするんだ。


 「で、今日は何を借りにきたの?」

「面白い本」

「じゃあ、今私が読んでた本を貸そうか?」

「いや、錆とか面白くないでしょ」

「それは読み手の受け取り方次第だからね」

・・・どゆこと? ああ。人によって見方が変わるってことかな?・・・

「じゃあ、一般的に面白いと思うのを貸してよ」

「一般的?」

「ほら、アンパンマンとかドラえもんとかおばあちゃんから赤ちゃんまで

 みんなが知っているって言う作品あるでしょ」

・・・よし、この聞き方なら管理人さんでもいい本を教えてくれるでしょう・・・

物事の尋ね方って大事だよね。

そしてこんな賢い質問ができる私はやっぱり普通の小学生じゃないよね。

ウンウン。腕組みをしながら1人頷く


 「お茶入れたから上がっていいよ」

「はーい」

私は靴を玄関に揃えてから家にお邪魔することにする。

「あ、ちゃんと靴を揃えるんだ」

と管理人さんが言った。

「うん?」

なんでそんなこと聞くんだろうか?

「このうちの上はちょうど君の家だから君がいつも家に帰って廊下を走ると

 少しドタバタ足音が響くんだよ。だからてっきり靴を脱ぎ捨ててると思ってて」

「え、そうなの!!」

「と、言ってもほんの少しの音だけど」

管理人さんは笑っていた。笑っている管理人さんはいつもより綺麗だ。

・・・聞こえるんだ・・・

衝撃の事実を耳にしてしまった。


 「あ、お茶飲んで」

丁寧に空いている席に座ってくれと促される。

私が座るのは促された場所ではなくさっきまで管理人さんが座っていた椅子。

そこにわざわざ私が座るはずだった場所におかれているお茶を引き寄せる。

特に深い理由はないがどうやら私は好意を持った相手のところに座る習性があるらしい。

・・・なんか落ち着く・・・


 「幅広い年齢層の人が知っている作品か」

管理人さんはブツブツ言いながら本を探してくれている。

「これはどうかな」

差し出されたのは不思議の国のアリス

・・・なるほどこう来るか・・・

「ダメ?」

「この間、学校で読んだ他のは?」

学校で読んだと言うのは嘘だ。

ほんとは読んでないけど管理人さんが私のために本を選んでくれるのが嬉しくて

ちょっと意地悪をする。

あと他の本も見て見たいと言う好奇心もある。

「そうか。じゃあこれはどう?」

今度はナルニア国物語と言う本

・・・あ、面白そう。・・・

タイトルは知っていたんだけどそういえばこの本を読んだことはなかった。

これを借りよう。でも……

「他には何かない?」

「えー、赤ちゃんからお年寄りまで知ってる本だよね」

困っている管理人さん。

・・・まぁ、不思議の国のアリスもナルニアも赤ちゃんもお年寄りも知らないんだけど・・・

「じゃあ、これしかないよ」

・・・あ、あるんだ。・・・


 ガサゴソと取り出されたのは


   日本昔ばなし 桃太郎


 「借りる?」

「私はもうとっくの昔に卒業してるの!!」

そう言うとまた管理人さんに笑われる


  ・・・ でも、確かにみんな知ってる本だよね  ・・・

その日はナルニアを管理人さんから借りて帰った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が読みやすく、最後まで楽しませて貰いました。ラストのオチにはほっこりしました。
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