表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第二回 夏

 あと一週間もすれば、夏休み。

 定期考査及びその返却も終了し、教室に流れる空気はどこか浮かれている。


 振り返れば、色々なことのあった一学期だった。


 春には新しいクラスになり、憧れの女子生徒である杏と同じクラスになれた。あれは、今考えても奇跡だったと思う。しかも最初は隣同士の席だったという幸運ぶりだ。


 あの後、席替えがあって、僕は杏と少し離れてしまった。が、今はまた隣同士に戻れている。試験期間中だけは、出席番号順の席に戻るからだ。


 そのこともあって、今年だけは試験が楽しみで仕方ない。



 僕はあれからも、日々、杏の様子を観察していた。そして気づいたことがある。それは、彼女の読む本の内容には統一感がまったくないということだ。



 ある日は『みったちゃん』という折り紙くらいのサイズの絵本。


 ある日は『記者会見中に突如、頭に納豆をかぶった美初老が現れて、一緒に謝罪してくれたが?』というライトノベル。


 ある日は『ぼくたんたまねぎ』というコミックエッセイの五巻。


 ある日は『仏教対談』というハードカバーの本。


 ある日は『芦屋川マツカレハ』という曲のCDの歌詞カード。


 ある日は『ポケットからハエトリグモくん登場! 〜殺虫剤で大激突〜』という児童向け。


 ある日は『先人に学ぶ、偉大な迷言』という知識本。


 ある日は表紙にイケメンのイラストが描かれた『誰でもできるよさこい開発』という漫画の特装版の三十八巻。


 ある日は『みんな歩き方ガイド〜ミュン編〜』という海外旅行ガイドブック。


 ある日はビーバーの写真がたくさん載った『ヴィーヴァー』というA4サイズの写真集。


 ある日は『昆布だしでクッキン』という料理本。


 ある日は『何を以て独裁者とするか』という白黒表紙の文庫本。


 ある日は『おたまじゃくし集め隊』という翻訳小説。



 ……と、とにかくバラバラだ。


 それゆえ、杏の趣味はまったく分からない。

 どういったジャンルが好きなのか、あるいは苦手なのか。まったく掴めないのである。


 だから、話しかけづらい。

 どんな話を振ればいいのかよく分からない。


 けれど、まだ諦めるつもりはない。絶対に友達になってみせる。いつかは、だが。



 こうして、また一日が終わるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ