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レティス王女の近衛7騎士  作者: 相馬あさ
気炎万丈編
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第二十三話 力比べ

 翌日。


 ツィスカがティアと力比べをすると言い出した。


「待ってくれ、ツィスカ殿下。どういう状況なんだ?」


 ジークはツィスカとティアの間に何か問題が発生したのではと考えながら尋ねる。


「どうって? ただどちらの力が上か確かめたいだけよ」

「いや、だから何故確かめたいんだ。昨日何か口論にでもなったのか?」

「昨日? 熟睡だったわ」


 ジークは眠そうな顔でフラフラしているティアを一瞥する。


「本当か?」

「嘘を言ってどうするのよ。ともかく私は……姉としてルクレーシャに力を見せる必要があるのよ」

「姉? 従姉妹だろう」

「うるさいわね。いいからやるのよ」


 ツィスカはティアの腕を掴むと無理やりに引っ張る。


「ち、ちょっと待ってください。今からですか? まだ朝食も取ってないですよ」


 ティアに指摘されてツィスカはピタリと立ち止まった。


「確かにそうね。でも一試合くらいは」

「私、お腹が空くと力が出ないんです。一緒に食べましょう、ツィスカ姉さん」

「し、仕方ないわね。みんな、食事にするわよ」


 ツィスカはとても楽しそうに笑いながら、軽い足取りで食堂へと向かう。


「な、何がどうしたんだ? あんなツィスカ殿下は見たことがないぞ」

「僕、ちょっと聞いてみます」


 アルフレートは事情を知っていそうなフローラとリーゼロッテに駆け寄ると話を聞いてみた。


「ツィスカ皇孫女は一人っ子らしいのですが、長年妹が欲しいと願っていたそうです」

「それでティア姉ちゃんが姉さんって呼んだら大喜びしちゃったんだ」

「なるほど。でもそれだけであそこまで豹変するものなのかな?」


 アルフレートの疑問に後ろでしっかりと話を聞いていたジークが納得するように言う。


「以前、俺が妹と話しているのをジッと見られていた事があったんだが、あれは羨ましがっていたのか」

「ジークベルトさん、妹がいたんですね。僕は一人っ子ですけど、兄弟に憧れたりとかは特になかったな〜」


 アルフレートが何気なく言うと、ジークが急に立ち止まる。


「ジークベルトさん?」

「お前、兄弟はいないのか?」

「はい。いませんけど……まさかジークベルトさん、僕に弟になれって言う気じゃ」

「い、言うわけないだろう!」


 ジークは図星を突かれたからなのか、アルフレートを追い越して食堂へと足早に歩き去った。




 朝食の後、ツィスカは本当にティアと力比べをするらしく、昨日ケイオスと戦闘を繰り広げた荒野へとティアを連れ出した。


 通常なら城に勤務している人々が見物に来そうなものだが、現在は総出を上げてアデライード王国へティア達を返還する準備をしているので、見物人はアデライード王国組を除けば、ジークとテオドールだけだった。


「ツィスカ様、本気なのですか? 全力勝負など危険過ぎます」

「黙りなさい、朝帰り野郎。私のことはいいから船の手配でもしていたら?」


 テオドールはツィスカの鋭い返しにショックを受けて、何も言えなくなった。


 ツィスカは立ち尽くすテオドールを無視して、ティアと一定の距離を取りつつ向かい合う。


 ツィスカとティアが準備をしている間に、ジェイクはニヤニヤと下品な笑みを浮かべるとテオドールに近付いた。


「……楽しめました?」

「いや、まあ……それなりにな」

「城で働いている人を見た限りだと、この国の女の子って美人が多いですよね」

「手は出すなよ」

「それは約束できないですね」


 2人の会話を聞いていたジークはため息を吐きつつアルフレートに近付いて尋ねる。


「ジェイクの奴はリサと婚約しているんじゃなかったのか?」

「していますけど、もうあれは癖ですね。でも心はちゃんとアリサに向いてるんで大丈夫ですよ」

「そうなのか?」


 ジークは疑わしそうな視線をジェイクに向けた後、アルフレートの肩に手を乗せた。


「お前はああはならないようにな」

「なりませんよ」

「なら相手はいるのか?」

「い、いませんけど……」

「よければ俺の妹を」

「――あっ、始まるみたいですよ」


 アルフレートはツィスカとティアの力比べが始まるのを利用して話題を転換させた。


 ツィスカとティアは50メートルほど距離を取って両手を重ねてお互いに向かってかざす。


「全力で行くわよ、ルクレーシャ!」

「私もやるからには本気でいきます!」


 2人の正面に真紅の魔法陣が展開されると、そこから火球が飛び出してぶつかり合う。


 比較的大きめだが最大サイズではなく、一定のサイズに留めつつ、火力だけを最大にした魔法だ。


「このブリュンヒルデの炎魔法はランクB、いやランクAか? やはり王国は魔道士ランクが高い者が多いな」

「おかしいな。ティアのランクはB+だったはずなんですけど」

「成長したということか? 俺の経験だとあの熱量は明らかにランクB+を超えているぞ。これはツィスカ様が危険かも知れん」


 ツィスカの魔道士ランクは炎B+なので、このまま力勝負なら勝ち目はない。


 テオドールは腰に挿してある風の剣に触れると、いつでも止めに入れるように身構えた。


「ぐっ、生意気な! 私よりもランクが上だっていうの!?」

「このまま押し切らせてもらいます!」


 ティアの炎はツィスカの炎をどんどん押し込んでいき、ツィスカへと距離を縮めていく。


 自分の魔法がランクAへとパワーアップしたことを感覚で理解したティアは勝利を確信して、直撃しても大丈夫なようにツィスカを攻撃対象から外すように魔法をコントロールし始めた。


「これは、ティアお姉さんの圧勝ですね」

「すげえなティア姉ちゃん! これだけ離れててもあっついぞ!」

「ふ、2人とも、もう少し離れましょう」


 比較的近くで観戦していたフローラ、リーゼロッテ、ライラの3人が身の危険を感じて退避する。


「あの炎、俺の炎魔法と互角だな。ツィスカ殿下の炎魔法だと正面からの勝負は無理だ。止めに入るか?」

「いえ、ティアの事ですからちゃんと対象指定でツィスカ皇孫女を燃やさないようにコントロールすると思います――あっ!」


 当然、ツィスカの出していた炎が消えた。ツィスカが魔法への魔力供給を止めたのだ。


 障害物が無くなったティアの炎魔法は勢いよくツィスカへと接近する。


 このツィスカの行動には優勢だったティアが一番驚いて魔法を消しそうになったが、すぐに冷静さを取り戻した。


 炎越しに見えたツィスカの表情が諦めたものではなかったからである。


 ツィスカはティアの炎魔法が自分へと当たる寸前のところで、新しい魔法を召喚した。


 大地と同じ色の魔法陣から現れた土魔法の岩は、鋭く正面へと伸びてティアの炎魔法を串刺しにするように突き破る。


 そのまま一直線にティアの元まで伸びて、彼女のかざした両手の前でストップした。


 ティアに怪我をさせないギリギリの位置での停止。


 ツィスカの勝利である。


「う、うそ?」

「嘘じゃないわ、現実よ」


 ツィスカは嬉しそうに笑いながら魔法を消し去る。


「ティアの炎を貫通しやがった。もしかしてフランツィスカ皇孫女の土魔法って」

「ああ。ツィスカ様はランクAの土魔法使いだ」


 ティアは心底悔しそうな顔でツィスカに尋ねる。


「姉さん、最初は私に合わせて炎魔法を?」

「別に合わせたわけじゃないわ。私はもともと炎魔法の方が好きなのよ。どういうわけか土魔法はランクAなんだけど、本当は炎魔法でルクレーシャに勝ちたかったわ」


 ツィスカが今回は引き分けだと言うと、ティアはあからさまに不機嫌な顔になって俯いた。


 ツィスカはすかさずティアの頭を撫でる。


「ぐっ……子供扱いはやめてください」


 ティアがツィスカの手を払い除けると、ツィスカはつまらなさそうに払われた手を反対の手で押さえる。


「これやってみたかったのよ」

「ツィスカ姉さん、もし次があるならその時は負けませんから」


 ティアの言葉で次の勝負の実現が難しいことを思い出したツィスカは、少しだけ憂鬱な気持ちになりながらも返答する。


「ええ。受けて立つわ。だから絶対にまた会いましょうね」


 こうしてツィスカとティアの力比べは幕を下ろした。




 更に翌日。


 アデライード王国組は更に翌日に厳重な警備のもとで船に乗ってアデライード王国へ戻り、船着場で待っていたレティスと再開した。

ティアとツィスカが再び勝負出来るの日はいつになるのでしょうか。


こればかりはすぐにとは言えない問題ですね。

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