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レティス王女の近衛7騎士  作者: 相馬あさ
外伝 シーラ王女の近衛7騎士
57/90

第一話 第一回シーラ王女の7騎士会議

色々、こんがらがってきた現状を振り返って解説するシーラ様の短編です。


外伝ですので、読まなくとも次章のストーリーは楽しめるように作ったつもりです。

もちろん、読んでいただいた方が、より深く物語を楽しんでいただけるとは思います。


全五話を予定しています。

 12月1日。エウニス学園、応接室。


 深い水のような青髪を持つ第一王女、シーラ・エレノア・アデライード・オーウェルは、自身の近衛7騎士を学園の応接室に集めていた。


 いくつかあるソファに各々が適当に腰掛けたところで、赤紫色のミディアムヘアを編み込んだ女性――フラン・ローズが尋ねる。


「で? 急に私たちを集めてどうしたの? シーラちゃん」

「フラン。あなたならもう分かっているのではないですか?」


 シーラはこれまでの経験から、フランのブラッドスキル『第六感強化』ならば、自分がこれから何をしようとしているのかなど、簡単に察することが出来ると理解していた。


「ん~と、何となくはね。でも、むやみやたらにスキルを使うのは印象が悪くなりかねないってアルフレート君に言われてさ。ちょっと力を加減してるんだ」

「アルフレート・クルーガーですか……」


 シーラは持って来ていた紙の束の中から、一枚を手に取る。


「彼を私の騎士に出来なかったのは少々惜しまれますね。まさか魔獣石であれほど優秀な魔獣を呼ぶとは思いもしませんでした」

「シーラ様。何をご覧になられているのですか?」


 尋ねてきたのはフランの双子の妹、リアン・ローズだ。


 フランと顔は似ているが、髪はサラサラのストレートロングで言葉遣いも丁寧、性格は真逆である。


 シーラは手元の紙をリアンに手渡す。


「私が独自に集めた優秀な魔道士の資料です」

「こ、これは……」


 リアンは渡された資料を真剣な表情で注視する。


「……リアン? どうしたの?」


 フランが後ろから覗き込むようにしてリアンが持っている資料を見る。


「あらら……これは、これは。アルフレート君について書いてあるねぇ」


 フランはリアンに負ぶさるように体重を預けると、後ろからリアンの首に巻きつくように腕を回す。


 ニヤニヤと笑う表情から純情な妹をからかう気なのだと読み取れる。


「――っ! ね、姉様、違います! 誤解です!」

「ん~、私はまだ何も言ってないけど? 何が誤解なのかな?」

「うっ、く……し、シーラ様! お返しします!」

「は、はい」


 リアンは真っ赤な顔でシーラに資料を突き返した。


 リアンがアルフレートに対して好意を抱いている事は、フランだけでなくシーラも知るところなのだが、彼女自身はいまだに自分の想いに正直になれておらず、アルフレートへの気持ちを否定し続けている。


 シーラも何か協力してあげたいと思ってはいるのだが、恋愛経験の無い彼女には的確なアドバイスなど思い浮かぶはずもなかった。


 三人のやり取りを眺めていた赤いメッシュの入った金色巻き毛のヒルダが黒髪の東方人であるアリサに小声で話しかける。


「ねえ、アリサちゃん。アルフレート君ってモテるの?」

「うん? まあ、7騎士になってからは二年生や若い先生から人気かな? 見た目も可愛い系だしね、年上キラーなのは間違いないよ」

「はぁ~なるほど、おねショタってやつだ」

「な、何それ?」

「――アリサ、その話本当なのか?」


 リアンが突然会話に加わってきたので、二人はびくりと身体を震わせる。


 シーラはその様子をいつもの無表情を崩すことなく眺めながら、心の中で二人は小動物のようだと思いながらくすりと笑った。


「えっ、は、はい……アル君と一緒にいると、よく普通科の二年生に声を掛けられるので」

「普通科だと? なるほど……盲点だった……」


 リアンは下唇に手を当てて何かを考える様に黙り込む。


 考え事をする時の彼女の癖だ。


「わ、私、何か不味いこと言いました?」


 不安そうなアリサの問いに、黙り込んだリアンの代わりにフランが答える。


「ううん。むしろ情報提供ありがとね。それと二人の携帯端末を登録させてもらえる? 私も色々聞きたいことがあるからさ」

「はい……」


 レティスの7騎士になってからというもの、アルフレートの人気は鰻登りであった。


 当然、リアンがライバルの存在を黙って見過すわけがなく、妹の恋路を応援するフランも積極的に同学年の女生徒たちに睨みを利かせていた。


 もっとも、リアンに関しては風紀や規律といった言葉を隠れ蓑にして、自分の気持ちを誤魔化していたが。


 アリサとヒルダがフランと携帯端末の登録していると、シーラが咳払いをして緩んだ空気を引き締める。


「そろそろ本題に入ってもよろしいですか?」

「あ、うん。ごめんね、シーラちゃん」

「いえ、大丈夫です。まずは……そうですね、こうしてあなたたちを集めたのは私の7騎士にはこのように月に一度は集まって話し合ってほしいと思ったからです」

「話し合うって何を?」

「その時々で変わるとは思いますが、今日はこの国の平和を脅かす存在への対抗策などですね。今年度に入ってから既に二つの大きな事件が起きました。その二つとも主犯となる人物の捕縛には失敗しています。その辺りから話し合って行きましょう」


 シーラはソファから立ち上がると、事前に準備していたホワイトボードを全員が見える位置へと移動させる。


 顔には出さないが、シーラは内心でワクワクしていた。


 この会議自体、ほとんどシーラが楽しくてやっているだけなのだ。


 王女と言えどまだ10代の学生であり、憧れていた自分の7騎士を持てたことにはしゃいでいるのだが、その無表情からフラン以外そのことに気付いていなかった。


「まずは10月10日に晋共和国から留学生である、魔法科一年生のリー・シアメイが誘拐され、その翌日に彼女と引き換えのようにしてレティスが誘拐、拷問を受けた事件についてです」

「救出したのはアルフレート君でしたよね?」

「ええ。ヒルダはこの件には関わっていませんでしたね。ですが、あなたの知識が加われば見えてくるものもあるでしょう。詳しく話します」


 シーラはそう言ってホワイトボードに『アッシュ』『カーミラ』『ケイオス』の3人の名前を書く。


「この3人が今回の事件を起こした犯人とされています」

「あれ? 報道されていた名前と違うような……」

「それはアッシュとカーミラの本名ですね。アレン・レッドメインとヴィオラ・メルボーン。現在はセントオレスト要塞の地下に厳重な監視付きで収容されていますが、7騎士の権限を使えば面会も出来ますよ」

「え、遠慮しておきます」

「そうですか。ですが、私が彼らと面会する際は護衛を頼みます」


 ヒルダは青ざめた顔で隣に座っていたアリサの腕に抱き着く。


 少しかわいそうだが、こればかりはシーラも譲る気はなかった。


「レティスが拷問を受けた際にアッシュから聞いた話によると、アッシュとカーミラはレオンティウス帝国との戦争で家族を亡くしており、その元凶として私たちオーウェル家の人間を憎んでいたそうです」

「元凶……それってネットとかでたまに出るうわさ話じゃ――」

「いえ、真実です。私とレティス、そして女王である母も、先の戦争は当時女王として魔法軍の実権を握っていた私の曾祖母、サンドラ・エメライン・アデライード・オーウェルが娘夫婦を亡くしたことで心を壊してしまった結果の暴走だと考えています」

「そんな……。でも、それをシーラ様が認めてしまったら……私のお父さんは……」


 ヒルダはシーラの口から語られた真実を知ってショックでうなだれる。


 シーラが調べた情報によれば、ヒルダの父親は軍人であり、先の戦争で戦死扱いになっていた。


 彼女の心中を考えれば、この話はしない方がよかったのだが、信頼する7騎士には真実をちゃんと知っていて欲しかった。


「じゃあ、アッシュとカーミラは王族を殺害するためにシアちゃん――シアメイちゃんを誘拐したんですね」


 寄り掛かってくるヒルダの頭を撫でながら、アリサが話を元に戻す。


「ええ。リー・シアメイが晋共和国の首相の娘だったのは偶然だったらしいですが、結果として彼らの当初の計画よりも早く私たちは交渉の場に立たされることになりました」

「首相の娘が留学先の外国で凶悪犯に誘拐されたなんて知ったら、晋共和国も黙ってないだろうしね~。でも、絶対酷い目に遭うって分かってるのにシーラちゃんを送り出すのは辛かったよ」


 当時、学園からシーラの無事を祈っていたフランはどこか遠い目で言う。


 フランの『第六感強化』は目で見た人間の近い未来しか予測出来ないが、ブラッドスキルを抜きにしても、あの交渉に応じるというのは危険極まりない行為としか思えなかった。


「実際、足の骨を折られましたからね。戦いの後に軍の魔道士たちが総力を挙げて治療してくださったので綺麗に治りましたが」


 シーラは自らの足を一瞥する。


 ソフィア、シーラ、レティス、セルゲイの4人だけで交渉の場へ赴くなど、普通に考えれば承諾できる話ではなかった。


 しかし、それでもソフィアが半ば強引に首相を説得できたのは、王族の圧倒的な強さ故だった。


 アデライード王国内で10人しか存在しないランクA魔道士であるソフィア女王。


 天才の集うエウニス学園でも数年に一度と言われるほどの魔法の才に恵まれたシーラ王女。


 生まれながらにランクAの水魔法を操る力を持っていたレティス王女。


 そして7魔宝具の中でも最強クラスの力を秘めた大鎌を持つ不死身のセルゲイがいれば、どのような攻撃を受けたとしても周囲に待機した魔法軍が駆け付けるまでの時間はしのぎ切れると誰もが確信していたのだ。


 それはシーラも同じであり、自分の実力に関してもそれなりに自信があった。例え誘拐犯に魔法で攻撃されようとも、そう簡単に自分がやられるわけはないと根拠のない自信にあの頃の彼女は満ち溢れていた。


 だが結果はどうだっただろうか。


 成す術もなく足を折られ、惨めに地面に転がされ、挙句の果てに大切な妹の誘拐を許してしまった。


 その悔しさが、今のシーラの原動力となっていた。


「さて、ここからが本題です。アッシュとカーミラはアリサも含めた数名のエウニス学園生と『不死身の大鎌』、それに『黒風の太刀』の活躍によって無力化し捕縛に成功しましたが、一番肝心な人物の逃走を許してしまっています」

「ケイオス――と呼ばれていた魔道士ですね」


 いつの間にか自分の世界から帰って来ていたリアンが会話に加わる。


「ええ。しかしケイオスは魔道士でありながら、多くの魔術を操る魔術士でもありました」

「……私と同じってことですね」

「そうです、ヒルダ。彼は闇魔法と呼ばれる強大な魔法に加えて、様々な魔術を駆使して追跡隊を苦しめました」

「具体的にはどんな魔術を使っていたのですか?」

「私自身、全てを見たわけではないのですが、知る限りを書いていきましょう」

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