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レティス王女の近衛7騎士  作者: 相馬あさ
明鏡止水編
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第二十二話 理沙とアリサ

「トウヤ様」


 アイリーンの猛攻を闇魔法で防ぎながら、グーニラはトウヤに話しかける。


「――何だ?」


 トウヤはシアメイとシェリーめがけて雷の遠隔斬撃を飛ばした後、グーニラの隣へと移動する。


「ミヤコ様が任務を成功したようです」

「そうか!」

「ええ、ですのでトウヤ様は撤退を。私は理沙さんの最後を見届け――」

「おい。任務を優先しろ。お前はまだやることがあるだろう」


 トウヤに睨まれてグーニラは肩をすくめる。


「……仕方ありませんね」


 グーニラが観念したように言うと、彼女の闇魔法が目に見えて巨大になっていく。


「ぐっ、どこからこんな魔力を!」

「簡単ですよ。各地に散っていた私の力を回収したのです」

「分けわかんねえこと言ってんじゃねえ! シェリー!」

「はい、隊長!」


 アイリーンとシェリーはトウヤとグーニラを挟み込むように空中に位置取りする。


「ドラゴン・クロー!」

「スコーピオン・レーザー!」


 アイリーンの風魔法の刃とシェリーの水魔法の水流がグーニラとトウヤに襲い掛かる。


「今の私には無意味です」


 グーニラは小さな闇魔法で二人の魔法を軽々と飲み込む。


「クソッたれ、今のあたしじゃ火力が足りねえ!」

「『金剛盾』を持っていないあなたではここまででしょう。無能なこの国の人間共を恨みなさい」

「何? お前、どこまで知っている!」

「答える義理はありませんね」


 グーニラは闇魔法を消すと、暗い緑色の魔法陣を展開する。


 その魔法陣を見て、アイリーンとシェリーは目を見開いて驚いた。


「シアメイ、掴まれ」


 アイリーンは地上にいたシアメイを拾い上げると、シェリーと共にグーニラから距離を取る。


「な、何が起きてるんですか?」


 シアメイはアイリーンに抱えられながら尋ねる。


「ヤバいぞ。あれは――毒魔法だっ!」


 グーニラの魔法陣から暗い緑色の霧が噴き出す。


 3人が距離を取ったのを確認して、グーニラとトウヤは学園の外へと撤退した。


「くそっ! 何なんだあいつは! 闇魔法と毒魔法だと?」

「毒って……どうにか出来ないんですか?」

「出来るならとっくにやっている! ここは、戦場じゃない。あたしの風魔法で吹き飛ばしたりしたら、周りの家に住んでいる人たちに被害が出るかもしれないんだ!」

「な、なら炎魔法で燃やすとか」

「下級魔法で上級魔法をか? 一番無茶な話だっての。生憎あたしの炎魔法のランクはB止まりだ。あたしに出来るのは風魔法で壁を作って毒を外に逃がさないことくらいだよ」


そう言うと、アイリーンは緑色の魔法陣から風魔法を召喚し、目に見えない風の壁をドーム状にして毒の霧を包み込む。


 しばらくして内包していた魔力が尽きたのか、霧は薄まり消滅した。


 アイリーンは地上にシアメイを降ろすと、悔しそうにコンクリートの地面を殴りつける。


「こんなに悔しいのは久しぶりだ」

「……念のために、炎魔法で焼いておきますね」


 シェリーは毒魔法がまかれた範囲に炎魔法を召喚する。


「あの魔法は消えたんじゃないの?」

「毒魔法は魔力が尽きても繁殖して微弱な毒がこの世界に留まることがあるの。だからこうして空気を熱して菌を殺しておくのよ」

「こ、怖い魔法だね」

「一呼吸でも吸い込んだら大変なことになっていたわ。魔法で生み出された毒だから治療薬もないし」


 シアメイは不安になって、シェリーと一緒に炎魔法で周囲を焼く。


「――ん?」


 シェリーが何かに気付いたようにグラウンドの方向へ視線を向ける。


「シアメイ、隊長、ここは頼みます」

「何かあったんだな? 任せろ」


 アイリーンはシェリーの代わりに炎魔法を召喚し、シェリーはグラウンドの方向へと飛び去った。




「ジェイク!」


 アルフレートが叫び声を上げてジェイク近付く。


「こ、来ないでくれ!」


 腹部を手甲鉤で貫かれながらも、ジェイクは近寄ろうとするアルフレートや軍人、教師たちを制止する。


 ジェイクの口から溢れ出た血液がアリサにかかる。


「だ、大丈夫だ。こんな傷、いつでも治せる。なあ、アリサ?」

「――じ、ジェイク……君?」

「っ! へ、へへ……嬉しいな。やっと思い出してくれたのか?」

「う……あ……うあぁあぁああぁああああああ!」


 アリサが耳をつんざく様な叫び声をあげると、地面から木魔法で巨大な植物を召喚する。


 植物はアリサの叫びに反応するように無差別に暴れ、アルフレートたちが対応にまわる。


「わ、私は……ジェイク君をっ! みんなを!」


 アリサがジェイクの腹部から手甲鉤を引き抜き、頭を抱えるようにして呻く。


「違う、違う違う違う! 私は、九条理沙! 九条重盛の娘だ!」

「た、戦って……いるのか? 身体の中で、二人が……」


 ジェイクは血が噴き出す腹部の痛みも構わずに、アリサを抱きしめた。


 弱った身体で、激痛に耐えながら、暴れる彼女を優しく包み込む。


「負けるな、アリサ! 俺がいる。お前が何をしたって俺はお前の味方だから。だから、九条理沙なんかに負けないでくれ! お前の名前はアリサ――俺の大好きな、アリサ・サクライだっ!」

「うっ……くぅ……あ、あああああああ!」


 力任せに暴れていたアリサが振り絞るような叫び声をあげた後、次第に大人しくなっていく。


 アルフレートたちを無差別に襲っていた木魔法も魔力を散らして消滅した。


 ジェイクは彼女の両肩を持つと、少しだけ離れて彼女と視線を合わせる。


「…………自分の名前を、言ってみてくれ」

「私は――アリサ。アリサ・サクライ」


 涙で顔をぐしゃぐしゃにしたアリサの言葉を聞いて、ジェイクは再び彼女を抱きしめた。


「ごめんね、ジェイク君……みんなも、ごめん……なさ――」


 アリサは意識を失い、ジェイクに全体重を預ける。


 ボロボロだったジェイクは受け止めきれずにアリサと共に地面に倒れこんだ。


 アルフレートたちが大慌てで駆け寄ってくる。


 ジェイクは薄れゆく意識の中で、自分の傷を必死に治してくれているシェリーに気が付く。


「……なんだ、シェリーちゃんも……来て、くれたのか?」

「黙ってて! 血を流し過ぎてる!」

「いいさ……アリサが帰って来てくれんだから、後悔はねえよ……」

「ふざけないで! 死なせるものですか、生きてアリサちゃんと一緒に私に叱られなさい!」


 その後も、シェリーやアルフレート、フローラなどが何かを言っていたが、ジェイクの耳には届かなかった。


 彼の意識はアリサが帰ってきたという満足感の中で沈んでいった。

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