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レティス王女の近衛7騎士  作者: 相馬あさ
明鏡止水編
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第十二話 ジェイクとマサムネ

 11月21日。エウニス学園正門。


 魔法軍によって厳重に警備された正門前に一台の車が停車した。


 運転手を確認した軍人たちは、姿勢を正して敬礼する。


「……俺は正規の軍人ではないのだから、敬礼は必要ないぞ」

「いえ、『黒風の太刀』殿は我々の憧れでもありますので」

「そうか……それは光栄だな」


 マサムネは面倒臭そうに後頭部をかくと、学園の駐車場まで車を移動させる。


 徒歩で再び正門側へ戻ると、校舎の前で待っていたシアメイに軽く手を上げて挨拶する。


「師匠、凄いね~。顔パスなんだ」

「近衛7騎士になってから、主に魔法軍で働いている影響だろう。今日はお前との約束もあったし早めに切り上げて来てしまったが」

「えへへ。ボクって愛されてるなぁ……。ねえ師匠、ここ寒いし早く中に入ろう?」

「ん? あ、ああ」


 シアメイは嬉しそうにマサムネの腕にすがり付くと、校舎の中へと彼を案内する。


「いや……何か違くないか?」

「違うって何が?」

「お前のその態度だ。本当にお前はシアメイなのか?」

「失礼だな~。可愛い弟子の顔を忘れたの?」


 誘拐事件の後辺りから、シアメイのマサムネに対する態度は急速に変化していた。


 マサムネも最初は懐かれただけだと思っていたのだが、最近は少し行き過ぎたものを感じて困惑するばかりだ。


 二人が校舎の東館へと足を踏み入れると、そこには退院したばかりのジェイクが待ち構えていた。


「待ってたぜ、マサムネさん!」

「ジェイクか。腕はもういいのか?」

「おかげさまでこの通りですよ」


 ジェイクは左腕をぐるぐると回して見せる。


「何よりだな。それで、俺に何の用だ?」

「……その前に、そいつはどうしたんすか?」


 ジェイクはマサムネの右腕にすがり付いているシアメイを指さす。


「俺が聞きたいぐらいだが……シアメイ、もう室内だし寒くはないだろう? 離れてくれ」

「……は~い」


 シアメイは渋々マサムネから離れると、ジェイクを恨めしそうに睨み付ける。


「マサムネさん……あんたまさかシアメイに手を出したりとか――」

「もう一度、その腕を失いたいのか?」

「すみませんでした」


 マサムネは妙な空気になってしまったのを察し、咳払いをしてから再び口を開く。


「それで? 俺に用があるんだろう?」

「あ、はい。実はマサムネさんに頼みたいことがあったんです。それで、シアメイが今日学園に来ると教えてくれたので、待たせてもらいました」

「俺に頼み? 言ってみろ」


 マサムネはどこか既視感を覚えながら続きを促す。


「この前の戦いで負けて、もっと強くなりたいって思ったんです。それで、強くなるには誰よりも強い人に教わるのが一番だと思って……」


ジェイクはマサムネに対して深く頭を下げる。


「俺、本気で強くなりたいんです。俺をあなたの弟子にしてください!」


 ジェイクの言葉を聞いて、マサムネはシアメイが弟子入りを申し出てきた時のことを思い出した。


「ちょっとジェイク君! 師匠はボクの師匠なんだけど!」

「シアメイ」

「――うっ! い、痛い、縮む!」


 あからさまに嫌そうな声を上げたシアメイをマサムネは右手でぐりぐりと頭を撫でることで黙らせる。


「顔を上げろ、ジェイク」


 マサムネはジェイクと目を合わせると、彼が生半可な気持ちでないことを理解した。


「『男子三日会わざれば刮目して見よ』というやつだな」

「な、何ですかそれ?」

「古いことわざだ。お前は負けを経験したことで、前よりずっと見所のある男になったようだ。シアメイ、シミュレーションルームまで案内してくれ」

「う、うん。こっちだよ、師匠」


 マサムネはシアメイに案内されて歩き出す。


「え、ちょっと……」


 状況が飲み込めずその場で立ち尽くしていたジェイクに、マサムネが振り返って声をかけた。


「どうした? お前も来い、ジェイク。俺の稽古は厳しいぞ、二番弟子!」

「――は、はいっ!」




 翌日。11月22日。エウニス学園、シミュレーションルーム。


 18日の襲撃事件の後、普通科の生徒たちは強制的に実家へと帰省させられたが、魔法科の生徒に限っては、魔法軍にも劣らない実力を評価され、学園に残ることが許されていた。


 それでも学園側としては生徒のほぼ全員が帰省するだろうと考えていたのだが、その予想に反して八割以上の魔法科生徒が学園に残ることを選択した。


 シアメイやジェイクも当然のように学園に残り、シミュレーションルームで訓練を繰り返している。


「遅くなってすまない」


 二人が訓練しているシミュレーションマシンの電脳空間に通信用のモニターが現れ、マサムネの顔が映し出される。


「あっ! 師匠、聞いてよ~! ジェイクがインチキするんだよ」

「インチキ? どういうことだ?」


 モニターに映ったマサムネが首をかしげる。


「おいこら、誰がインチキなんてするか」

「インチキだよ! この前まで一対一ならボクの足元にも及ばなかった癖に、どうやったたらそんなに強くなるんだよ!」


 シアメイが怒りに任せて殴りかかると、ジェイクはそれを最小限の動きで回避する。


「ああっ! くっそぉぉお!」


 続く連撃も次々と回避され、シアメイは苛立ちを募らせる。


「……埒が明かないな。メルヴィル先生、一度二人を戻してもらえますか?」

「そうですね。二人とも、休憩にするわよ!」


 マサムネは隣にいたシェリーに合図を送り、シミュレーションマシンを操作してもらう。


 すると、シアメイとジェイクの精神は電脳空間からマシンに横たわっている生身の身体へと帰還する。


 シアメイはすぐさま起き上がり、ジェイクへと詰め寄る。


「ちょうどいいや、今度は生身で勝負しようよ」

「生身だろうと、同じだろ?」

「同じなもんか。次は絶対ボクが勝つんだ!」

「二人とも、休憩にするって言ったでしょ。落ち着きなさい」


 シェリーが今にも掴み合いを始めそうな二人の間に割って入る。


「それに、マサムネさんから大事な話もあるみたいだから、場所を変えましょう」

「師匠から?」

「ああ。少し長い話になるかもしれない。応接室の使用許可をもらっているから、一緒に来てくれ」


 マサムネのいつになく真剣な表情を見て、シアメイとジェイクは黙って従った。

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