疾風迅雷
初投稿作品です。
この小説は『作中の人物が書いた小説』という形で書いているので、本編開始は次からになります。
アデライード王国。
千年以上の歴史を持つオーウェル王家が治める大国にして、世界で最も多くの魔道士が暮らしている国だと言われている。
その国でわたしが経験した多くの出来事をここに記そう。
まず初めに『彼』について。
あれは、まだわたしが亡き兄のまねごとをして少年のように振舞う少女だった頃。
魔法という力を求めて海を渡り、アデライード王国で一番の名門だとされている魔法学校に留学し、一ヵ月が過ぎた頃だ。
魔法学校が軍学校の役割を果たしていた時代だったこともあり、魔法戦技訓練の一環でトーナメント形式の試合をすることになったのだ。
わたしは順調に勝ち進み、準決勝まで駒を進めた。
そこで『彼』に出会うことになる。
同学年の生徒たちの噂で聞いたことがあったが、会うのはそれが初めてだった。
金髪碧眼。美しい少女のような顔つき。誰よりも魔法の才能に恵まれず、誰にも出来ない魔法の才能を持つ少年。
『落ちこぼれの魔術使い』アルフレート・クルーガー。
今から記すのは、彼の運命が動き出す、始まりの物語。
少年が騎士へと成長する最初の一歩。
かの有名な疾風迅雷の騎士、『ビーストマスター』の知られざる初陣の話をしよう。