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新・神臨物語  作者: 天義
第二幕 獅子身中の道化師
9/15

第一章 新たなる事実

いつもお疲れ様です、天義です。

今回から、主人公はダース●イダーになったので、ジーナさんが主人公になります。

てかもうこれ、主人公とか要らなくない? と書きながら内心思ってたりしました♪~(´ε` ;)

アルヴェスが小屋の戸を閉めると、まもなくしてジーナが目を覚ました。

「ここは...そうだ! ジョンは...、ジョンはどこなの!?」

アルヴェスにしたら、彼女のそれは当然にして、想定の範囲内の反応だと思った。しかし、どうしようもないと感じたアルヴェス。

「落ち着け。今、奴は正気の沙汰じゃない」

その言葉を聞いて、再びジーナは落胆し膝をついた。

「私のせいだ...。私があの時、レイト様に教わった唱文さえ唱えていたら...」

「後の後悔、先に立たずじゃ」

いつの間にというほどに気配を感じさせず、タクトさんが中に入っていた。

「黒剣士殿、いつの間に」

かのアルヴェスでさえ、驚きの表情を隠せない面持ちだった。

「デールよ、起きたらどうじゃ?」

すると、タクトはさも顔見知りかのようにデールの体を揺さぶった。

「すまん。ワシがカルチャナの真実を予め述べなかったばかりに、こんな事に...」

「どういうこと?」

すると、姿が見えなかった孫のアーシアが現れ

「それについては、後で私が話します...」

いかにも彼女が祖父の代弁をしたがっていたが、謝りたがっている気持ちが込みあげてくるのが目に見えてとれたので、タクトが割って入った。

「何も慌てることはないじゃろう。ジョンは今や国の敵と化した」

ジーナは少し耳が遠かったのか、はたまたタクトさんの大ボケだったのか、にしても冗談とは言いがたい緊迫した顔で話しているので、何分理解できなかった。

「だから、どういうことなの?」

「ジーナ、君には眠ってもらっていたので、コレを現実と捉えるのは一筋縄ではいかないと思うが、真実とは思わなくとも世界情勢の『事実』として受け止めてくれ」

もうジーナの頭には『意味不明』の四文字が浮かんでいた。そんな折、アーシアが事の次第を説明し出した。

「まず月日から説明しますね。あの日、ジョンさんが暴走した日から早三月、及び十日になります。その間、虚無神の紋章を持つ者にとって最大の脅威となり得る聖訂者のジーナさんには、向こうの動向が落ち着くまで一時的に存在を消すことが出来るタクトさんの黒剣術により、眠って頂いていました。ちなみに、こちらの世界では着実に月日が流れましたが、ジーナさんにとっては一瞬になるように...」

「――何よ、それ...」

ジーナは俯き、感情の波が狂い始めた。それもそのはず、ジョンが国の敵だの、最大の脅威がジーナ自身だの、一方的すぎる展開についていける程、ジーナの頭は緻密(ちみつ)にできていないからだ。

「ジーナ、落ち着け! 下手にお前が興奮したら聖訂者としての刻印がジョンの掌に...」

「だから何なのよ」

念押しにタクトは、半ば強制的に精神を落ち着かせる、()(しん)の構えをとった。

「目の前でジョンがどうしようもない苦しみに藻掻き苦しんでいたのに、呑気に眠らされていた? 国の敵という事実を知らされることもなく、ただ只管眠ってた?」

あまりの怒りに、震えが止まらなかったジーナ。

「タクト、頼む」

デールは見ていられなかったのか、打鎮法を促した。

すると、どういう作用かは知らないが見る見るうちに、ジーナから怒りの色が消えていった。

「あれ? 私...」

「気にするな」

と、何事もなかったかのように振る舞うアルヴェス。

「とにかく、そんな折にこの爺さん(デール)が黒剣士と竹馬の友だったらしく、タクト(師匠)が昔使っていた小屋を使わせていただいているというわけだ」

そしてついに、ジーナは知りたくない質問であるにも関わらず、いつまでも逃げていられないことを痛感して、アーシアに聞いた。

「なぜジョンはあんなにも牙をむくような人間に変貌したの?」

一同は揃って顔を合わせたが、アルヴェスが先陣を切って

「それには答えられない、否、直に本人に訊いたが、奴は――」

すると、ジョンが怒り狂い同じ質問に対して答えていたシーンを一同は回想したのである。

「――どうしても知りたきゃ、カルチャナに行け。総てを識り諭す、本当のカルチャナにな!」

「とだけ言い残し、その場を去った」

そして、その話の流れに続くかのように、デールが前に出て

「実はその『本当のカルチャナ』というものに心当たりがあってな。一昔前、丁度先の戦役の前になるかの、黒剣士が表社会に通じる名として世に出だした頃、ある事件が起こったのだ」

「ある事件?」

不意に気になったジーナは深く掘り下げようとした。それにデールが答えた。

「名を馳せるようになった黒剣士として初めて、ロバート=エルセウスの親衛隊として選ばれたタクトなのじゃが、ある晩餐でこいつが取ろうとした杯をエルセウスが注いでやろうとした、その時じゃ」

ジーナは息を呑んだ。

「手に無数の傷ができたのじゃ」

「傷?」

ジーナはこの時、知らぬべき何かが引っかかるような気がしたが、とりあえず話の続きを聞こうとした。

「タクトはその晩、護るべき者を傷つけた罪として三日三晩飲まず食わずで牢に入れられ...」

「もういい」

タクトはそれ以上、デールが語ろうとするのを止めた。

「しかし、話はこれからなのじゃが...」

「ちょっと待って」

デールが続きを語ろうとした瞬間だった。

「どうした?」

そして、この時漸くジーナの引っかかっていた何かが、紐が解けるようにして思い出した。

「アタシ見たわ! ジョンが教安会で顔に切り傷が出来てるの...」

すぐさまタクトも切り出した。

「確かワシがジョンに会ったのも、教安会の外の看板じゃったが...」

なるほどという顔を浮かべて、アルヴェスは微笑した。

「黒剣士と、虚無神の刻印...か」

三人が考えている最中、話の軸を戻そうとするデール。

「話を戻すようで悪いが、タクトが牢に入れられた時、丁度ワシはこの大陸の研究員の端っくれでな。その城の抜け道を教えてやろうとタクトの牢へ行き、逃がしてやろうと思ったんじゃ。すると道中、聞きなれない声が聞こえての。ワシの探求魂が(くすぐ)られたんじゃ」

後半はどうでもいい与太話だろうと察知し、アルヴェスは目を瞑り、ジーナは少し苦笑いを浮かべながらも聞き入っていた。

「するとそいつらが言ったんじゃ。『その昔、カルチャナは一つだったのを、お前知ってたか?』という、やりとりをな」

その言葉を聞いて、呆れ顔だった二人の顔は真剣そのものになった。

「どういう...こと...」

驚きつつも、ジーナは質問した。

「まぁまぁ、話はこれからじゃ。ワシが、カルチャナという存在に興味を抱き始めたのは、丁度その頃じゃった。しかし、国の研究員という立場上身動きが取れず、調べるにも調べられなかった所に、先の戦役で功績を上げたエルセウスに準じていた、旧知の友である黒剣士タクトに懇願して、最初は場所も時間も不定な勤務じゃったが、凡そ全てのカルチャナの資料を調べつくし、手がかりとなる三つの世界、そして三次元の環を見つけることが出来た。更に真理を探求すべく、場所をサードカルチャナに落ち着かせた、その時君たちがやってきたという訳だ」

アルヴェスは肝心なところが知りたかったのか、イライラしながらデールに

「それで、『一つだったカルチャナ』の情報は見つかったのかよ」

と、ひと声。

「アルヴェスともあろう、お主なら予想もしておったじゃろうが、それは今でも一つしかない存在であって、私たちには目に見えない施設なのじゃ。前までは資料ならあったが、この3か月の間にジョンの奴がすべて抹消しおった。」

アルヴェスは目を瞑り、ジーナは愕然し、デールは何とも言えない表情を浮かべた。

「そう落ち込むのは早い。その施設の素性は知らずとも、手掛かりの一つくらいは掴めとる。」

もちろん、アルヴェスとジーナはこれに食いついた。よもや、アーシアまで興味をそそられるとまでは予知できなんだが。

(げん)(せい)()(せん)、叉をオリジナル・カルチャナ。おそらく西方にある島、ヴェルン諸島にある。」

「そこにあるという確証はどこから来た? それに俺になら、とは言ったが、何のことだか皆目見当がつかん」

冷静に鋭く目をつけるアルヴェス。

「ならこういえば分かるか。アーシア、ヴェルン諸島は一部の者から何と呼ばれておる?」

「偏気圧諸島でしょうか?」

「アサシンのお前なら、これが何を意味するか分かるかな?」

その時、過去の自分の発言から思い起こして、ある言葉を思い出した瞬間にアルヴェスの鼓動が激しく波打ったのを感じた。

すべての共通点は『天候』だ

「わしら(黒剣士)の間ではその場所のことを更に、こうとも呼ぶ」

「三源諸島」

それまで落ち込み気味だったジーナは、その言葉を聞いて希望の欠片が見えたように思えた。

「私一人で行くから、みんなはついてこないで。そもそも、私がカルチャナで三つの世界の話なんて持ち出さなければ...」

そう言い残すと、部屋を抜け出そうとした。

「そうすれば、わしらがこの3か月お前を眠らせていた意味がなくなる」

もうジーナにとって鼻から行動に意味など持とうとはしていなかった。

ただ、ジョンの心を救えるのは私しかない! という、自分への過剰な自信や揺るぎない気持ちと、それに対する「どうせこんな私でも、出来ることがあるのなら!」という、ジーナにとっての究極の矛盾した心境からくる究極の葛藤であった。

「それでも行く気なら、お前の聖訂紋をレイトに返還してからにしろ」

!?

もちろん、本心ではそうするべきだと、ジーナ自身思っていた。ただ、そうすることで、物理的な自分の力は格段になくなるかもしれないし、神理的、即ち神に授けられた力を持っている自分としては自分独りの力で戦うことになるというのも、至極分かりきっている答えではあった。

それでもジーナ(わたし)にはアイツと面と向かって話さなきゃならないことがあるのよ! 

たとえ自己満足だとしてもね!

そう最初は言い張っていた気持ちではあった。しかし、実際問題、アルヴェスに言われて思った。本当にこんな非力な状態で、高々話し合いで解決する問題なのか?

そんな、考えなくてもわかるようで、考えなければわからないことが、ジーナの頭一杯に覆い尽くされ、今にも爆発しそうだった。でも、

アタシが天使なら、あんたは悪魔よ。

という、どこかでジョンを疑っていた自分を許せなかったジーナは苦渋の決断に苛まれ、揚句その場にひれ伏し泣きじゃくった。

泣きじゃくっている自分を客観的に見たジーナは、何も成長できていないことに気づき、更に泣きじゃくった。

「何のためにお前は聖訂の紋をレイト神から授かったんだ? 全てを事実として受け取るには、今はまだ早い。ゆっくり真実を見据えた上で行動しろ」

いつも淡々とした物言いしかできないアルヴェスが、今日はより一層頼もしく見えたジーナだった。


「皆様ここにおられましたか」

すると全身黒装束に身を包んだ、女性がやってきた。

「おぉ、鷹か。確かお主は」

鷹とは、黒剣士の内部における立ち位置の通称と言っておこう。

鷹は諜報、亀は工作と様々なジャンルがある。

「タクト様の読みどおり、昨夜明朝三源の一、ヴェル・ファールに()のものと(おぼ)しき人物が見受けられました。追跡したのち、瞬時に姿が消滅し、追おうとしましたが何か壁らしき物に阻まれてしまいました」

「よし」

その一声で、鷹の女性は目にもとまらぬスピードで去って行った。

「ちょっと外の空気、吸ってきてもいいかな?」

ジーナは少し冷静に一人になるべく、テント外の新鮮な高原の空気を吸おうとした。

「あまり目立つことはするなよ」

アルヴェスはそれを少なからず了承して、くれぐれも用心するよう促した。

御拝読有難うございました。

もう完全に別作品ですねw

作者自身そう思います苦笑

今後どうなっていくんでしょうねェ~(棒

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