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「先ほど私はあなたに、過去に戻りたくはないか、と問いましたね。」
確かに彼はそう言った。
「実は私、あなたがどうして引きこもりなんて真似をされているのか、知らないんですよね。」
先ほどと同じような笑顔で話しかけてくる。
・・・こんのやろう・・・こちとら好きでひきこもってるわけじゃねぇんだよ・・・。
「おっと、失礼いたしました。あいにく私にはそのような経験がありませんので。失礼しました。」
「あ、いえ。で、それが何か。」
「あなたにはこれから、タイムスリップをしていただきます。その際、どこからやり直したいのかは、私がわからないといけませんから・・・」
それを考えると、かなり迷う。というか、わからない。
そもそも、私は引きこもりをやめたいわけではない。それなりにこの生活が楽しい。
過去に戻って何がしたいか、というと、翼にぶつけてしまったひどい言葉をなかったことにしたいのだ。
だが、そんなことを言ってしまった原因はいじめ。いじめがなければ、いう必要もなかった。
そんないじめについての原因もわかっていない。
実際のところ、私は何もしていないのだ。何が原因であんないじめになってしまったのか。それがわからないことには、いじめは過去に戻ってもなくならないだろう。
このご時世、何をしたっていじめの対象にはなる。
可愛くても、勉強ができても、友達が多くていつもニコニコしていても。
私はどれにも当てはまらない。
よくセリフに出てくる、『私が何をしたというんだ』という感じだ。
正直誰とも深いかかわりはなかったし。
こうなれば、いじめが始まった二年前にさかのぼっても仕方がなさそうだ。
だったらいつから、おかしくなりはじめたんだ・・・?
「でしたら、とりあえず三年前にさかのぼってみてはどうでしょう。もう気づいているとは思いますが、タイムスリップにはタイムマシーン・たかだんを使います。」
そう言って彼は彼の隣に置いてあった機械に触れた。
だっさ。名前だっさ。
「失礼な!そんなことはないでしょう。それはさておき、これ、ただタイムスリップするだけじゃないんです。その空間を、ただの傍観者として、閲覧することができるんです。映画のような感じでね。」
「・・・あの、手助けしてくださるのは嬉しいんですけど、なんでこんな機械を?」
彼は目は細めたままの顔で、唇に指をあててうなり始めた。
正直きもいというかシュール。
「んー、まぁ、気が向いたら話しますよ。ではではさっそく・・・。」
タイムマシーンのドアを開けて、彼は私に手招きをした。
・・・本当に、見れちゃうんだ・・・。
実際思い出したくないことだらけだが、翼を傷つけないようにするためには必要なことだ。
このインチキくさい男のいうことをすべて受け入れられるほどの器ではないが、今回は頼ることにしよう。
・・・で、さっきスルーしたけど、勝手に人の心読むのやめようね?