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「はじめまして」
ディスプレイには二十代くらいの男性が微笑んでいた。しかもけっこうイケメン。
いやいやそういうことではなくて!そんな丁寧にあいさつされても、今どんな状況なのかまったくもって頭がついていけてないのですが・・・。
え、ウイルス?
「ウイルスなどではありません。私をそこら辺の軟なウイルスと一緒にしないでいただきたい。
私の方がたちが悪いですよ。なにせあなたの使っている最新型パソコンのウイルスバスターを
軽々と抜けてきたのですから。」
いやいやそんなこと誇られても困るんですけど・・・。
というか今の声に出てたの?
あまりにびっくりして何が何だか。
いつも自分としか話してないけどさすがにテンパりすぎていつもより多くしゃっべってます。
「まぁまぁそう慌てずに。私は意味もなくあなたのパソコンに入りこんでいるわけではないのでね。」
男性は微笑んだままさらに続ける。
「単刀直入にお聞きしますが、あなた、
過去に戻りたくは、ありませんか?」
その微笑んだ顔は、いまだ1mmも変わらず私のディスプレイに存在する。
なぜこの人は迷いもなく初対面の私にこんなことを聞いてくるのか。
語尾こそ疑問形になっているが、その言葉に迷いはない。
まるで彼の中にある公式を一つ教えられたような、あるいは与えられたような。
そんな不思議な感覚。
この数分の中でぐるぐると考えていたことは前置きに過ぎなかったことに気が付かされると同時に、彼の問いに対する答えは安易に見つかった。
その問いに対する答えはただ一つ。
YES
これしかありえなかった。