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いや、誰も助けてくれなかったわけではない。
助けようとはしてくれた。
日埜 翼___
私の幼馴染だ。家も近く親同士も仲が良かったから小さいころはよく遊んでいたし、仲もよかったのだ。
時は立ち、お互い思春期真っ只中の中学校三年生の夏。私へのいじめはヒートアップしていた。そのころすでに心はナイフの刺し跡が深すぎて個体として残っていないほど弱くなっていた。それでも学校には行っていたことをほめてほしい。
世間では『ガラスのハート』とかいうものがあるらしいが、それは嘘だ。強いて言うなれば、熟れすぎたトマト、といったところだろう。人は悲しいことを乗り越えることができなければ弱くなっていく。そして、弱くなりすぎたものにナイフを突き立てれば、あっけなく壊れてしまう。私はまさにそうだった。だから何をいわれてもやられても何も感じないくらいには壊れていたのだ。
そんなとき翼は話しかけてきた。中学に上がってからは疎遠になっていてほぼ話すこともなくなっていたから、話しかけられたときはかなりびっくりして声が出ないほどだった。まぁ実際まともな話なんかできなかったのだが。
翼は、「大丈夫か。困ってるならなんか言えよ。幼馴染だろ。」。そう言ってくれたのに、私が返した言葉といえば、「放っておいて。幼馴染面しないで。」だった。それを聞いた翼は当然黙ってどこかへ行ってしまった。周りにいた私をいじめている主格の女子たちは「翼君になに言っちゃってんのー?かわいそうな水埜さんのためにわざわざ声かけてくれたのにー」とクスクスと笑っていた。
どうしてあんなことをしてしまったのだろうと、今でも後悔している。
確かに周りはバカばっかりで嫌になるような環境だったけど、翼は違ったんだ。あのときわかったはずなのに。嫌な思いをさせてしまった。私は最低だ。
あぁ、翼に謝れたらなぁ。
そして、自分の受けたいじめもなくなれば、翼とまた笑いあえたかもしれない。
大切な人だったのに。いや、今も私の大切な人なのに。
まぁ、こんな思いも誰にも届かない。
毎日パソコンのディスプレイを眺める日々だ。今の友達がこのパソコンといえてしまうまである。
説明する相手なんて、いないけれど。
もしも、過去に戻れたなら・・・。
・・・あれ、急にパソコンが止まった・・。
何か不具合でも、と思ったがすぐに画面が切り替わり、動き始めた。良かった・・・。
・・・さて、今私がどんな顔をしているか、誰にも想像できないだろうが、考えてみてほしい。
いきなりパソコンが止まったと思ったら、またいきなり動き出して、
画面に人の顔が映し出されたら。
「やぁ、こんにちは」