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レイ・ライダー  作者: 真中太陽
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エピローグ


 そして、いよいよ、俺たちの別れの時がやってくる。


『世話になったな、シンイチ。そしてハヤトよ』


「こちらこそ、ありがとう、レイ」


「レイ王様をはじめ、みなさん、短い間でしたが、ありがとうございました!」


 俺たちは城の前にいた。

 レイをはじめ、レジーナ、ケイア、カロ、総隊長さんに……鬼ゴリラ、じゃなくてオーニーや多くの人とケモノたちが集まってくれた。そこには、マルフォウスの姿もあった。


「ふむ。レイ王様の契約者ではあるが……まあ、自分の世界のこともありますからねぇ。今回はしょうがないですか」


「総隊長さん、ありがとうございます。あとは、お願いします。それと……」


 俺はちらっとオーニーを見る。


『……』


 ……大丈夫だよな? もう襲ってこないよな? 操られていないもんな?


 睨みつけるようなするどい眼光から、急に水が溢れ出してきて――。


『……う、うおおおおおおおん! 本当に、本当にごめんだったんだなあああああ!』


「……え?」


 突然、オーニーが子供のように泣き出した。


「……はは、びっくりしただろ、シン。オレも、最初あったときはかなりびびったけど、実際話してみると、すげーいい奴っていうか、気が弱いというか、戦っていた時とはまるで別人みたいでさ」


「おお、よしよし。すいませんねえ、わしの契約者なんだが、契約してもこいつの泣き虫な性格は治んなくてねぇ。ほら、そんな泣くな」


『うぅ、でも、でも~』


 呆気にとられていたが、改めて俺は彼に声をかける。


「……あの、気にしてないですから。そりゃちょっとは、いやだいぶ、かなり怖かったけど、操られていたんだから、あなたは悪くないですよ」


 俺はなるべく笑顔で彼に優しく語りかける。……顔、ひきつっていないよね?


『そ、そんな……ひどいことしてしまったオラに、そんな優しい言葉……うおおおおおおおん、ありがとうございますぅ~!』


 泣き崩れるオーニーをよそに、皆にも挨拶をかわしていく。


「私はここに残るから。少しでも、罪滅ぼしをしないとね。では、シンイチくん、ハヤト、元気でな。……ありがとう」


「ティスト博士、お礼いうのは、こっちの方っすよ。ありがとうございました」


「たった二日とは思えないわね。なんだかずいぶん長いこといたような気がするわ。寂しくなっちゃうわね、レジーナ?」


「わ、私に振るな!」


 レジーナに問いかけたケイアが「?」という顔をしている。その後ろでは、ニヤニヤとしている人たちがチラホラ。


『アンっ!』


「……カロも、元気でな」


『アウンッ!』


 皆との別れを済まし、頃合いを見てレイが告げる。


『では、よいか皆の者。これより、”送還”を行う。レジーナ、マルフォウス、頼んだぞ』


「はい」


『ああ……』


 レジーナとマルフォウスが前に出てきて、言葉をそろえて唱える。


『「執行――”次元移行ディメンションワープ”!」』


 それはレジーナたちの契約技。ケイアが話していた送り返すとはこのことだったのか。

 俺と隼人は、淡い虹色の光に包まれる。それと同時に、空の空間に亀裂が入り、口を開ける。俺たちを包んだ光はふわりと舞い上がり、吸い込まれるようにその亀裂に向かっていった。

 俺たちは聞こえるかどうかはわからないが、最後に大きな声であいさつをする。


「それじゃあ、みんな! ありがとう!」


「みなさん、お元気で! がんばってください!」


 大きく手を振りながら、俺たちは空間に吸い込まれていく中、レイの言葉が届いた。


『さらばだ、我が契約者よ……またな』


 俺たちは、亀裂に飲み込まれるように、たった二日しかいなかった異世界をから、自分たちの世界へと戻っていった。






 元の世界へと戻った俺たちは、気づけば夕日に照らされた堤防の河原沿いで二人して寝ていた。ポケットからスマホを取り出す。日付は、俺たちが行ったその日のまんまだった。

 俺と隼人は同時に起き上がり、お互いの顔を見る。

 しばらく見つめたあと、俺たちはまた同時に、笑いだした。

 河原で学生二人が笑い転げている様は、さぞ通行人たちには変に思われただろう。

 でも、俺たちは笑わずにいられなかった。ひとしきり笑ったあとで、隼人が言った。


「……よく生きて帰ってこれたよな、オレたち」


「ああ……ホントにな」


 心から安堵していた。俺たちは夕日が完全に沈むまで、ただただ見ていた。この世界のすばらしさを。平和のありがたさを、かみしめながら。

 どちらからともなく立ち上がり、俺たちは帰路につく。その日は家に帰ると同時に、二人ともすぐに眠りについた。


 翌朝。

 時刻は六時。

 俺は起きて道着に着替え、ほんの少し前まで日課だった素振り千本を行う。

 終わって、心地よい汗を拭きとり、俺は真剣に持ちかえる。

 キンッという高く心に響く音を立てて抜きさられる、鋼の刃。


「お、今日も精が出るな。けっこうけっこう」


「親父……」


「……ん? 晋一……おまえ、なんかあったのか?」


「え……」


 一瞬、異世界に行ったことがバレたのかと焦ったが、そんなはずはないと振り払う。


「……気のせいだよ。別になんにもないよ」


「そうか……?」


 俺は鞘を置き、刀を持ったまま、目を閉じて自然体に構える。


「……!」


 親父が息をのんだのが分かった。

 いや、親父のことだけじゃない。庭に生える草木、流れる風、降り注ぐ太陽の光、すべてが感じられる。こんなにも、世界は広かったんだ。

 俺は目を開く。目の前にあるのは、木に貼り付けらえた一枚の半紙と葉。


(笑ってる……?)


 俺は自然と微笑んでいるようだった。そして、俺は振り上げた刀を無造作に振り下ろす。


「なっ……!」


 手ごたえは、ない。いや、正確には、いらなかった。


「晋一……おまえ……」


 俺は刀を鞘にしまうと、縁側から家の中に入り、親父に刀を手渡す。


「今日からだっけ、出張。頑張ってね」


「あ、ああ……」


 親父は呆気にとられたように俺を見送る。

 庭の木にある半紙と葉。その葉っぱの半分がずり落ちるようにしてひらひらと落ちていく。半紙は――一ミリも切れていなかった。


「……昨日の間に、晋一に一体何が……まさか! 息子はついに大人の階段を!? ダメだ晋一、お前はまだ未成年……!」


「なわけあるかぁ!」


 あまりのバカさ加減に、思わず突っ込まずにはいられなかった。



 その後は前と変わらず、二人で朝食を食べ終え、親父の出張を見送り、母さんとシロに挨拶をして、隼人が迎えに来たところで戸締りをして家を出る。

 いつもの時間帯をいつもの通学路で向かう。たったそれだけのなんて幸せなことか。

 ただ一つ、となりでくっちゃくっちゃバナナを食ってるやつがいなければ。


「おい、今オレのこと邪魔に思わなかったか?」


「いや、思ったよ」


「そうか……ってなんで思ってんだよ! ひどいなお前! 親友だろ? もっと喜べよ!」


「そのバナナをゴリラみたいに食べるのをやめたら喜んであげてもいいよ?」


「なぜに上から目線!? 別にゴリラみたいに食べてないだろ、ウホッ」


「ごめん、マジやめて。今ゴリラがトラウマになりそうだから」


「奇遇だな。オレもやってから、危うく今日の朝飯が盛大にリバースするとこだったぜ」


「じゃあ、バナナ食べるのやめろよ」


「これしか朝飯なかったんだよ」


 こんなつまらない会話も、日常に戻ってきたと思うと愛おしく感じる。


「……俺たち、戻ってきたんだな」


「ああ……」


「なんか、すげえ長く感じたな」


「そうだな……」


「記憶を消して、って話だったけど、俺たちはなかったな」


「まあ、大いに関わったわけだし、ね。真相はわからないけど」


「そっか……みんな、どうしてるかな」


「なんだよシン。もう会いたくなったのか? どっちだ? レジーナさんか? ケイアさんか?」


「なんでその二人限定なんだよ」


「いやいや、お前が前に言ってた強い女性というとその二人かと」


「なんでそっちにすぐ結びつけるんだよ。……そりゃ確かに二人とも強いし綺麗だしかわいいとは思うけど」


「ほんと? 嬉しいな」


「いや、ほんとだって……え?」


 俺と隼人が慌てて後ろを振り返る。その姿を見て、隼人は持っていたバナナを落とした。


「こんにちは。ん? 今だとおはよう、だっけ?」


「……」


「な、け、ケイア!? それにレジーナまで!?」


 そこには、見間違うはずはない、向こうの世界にいるはずのケイアとレジーナが立っていた。


『よっと……俺も忘れんなよ?』


「マルフォウス!?」


『アンッ!』


「カロまで!」


 二人の背後の空間に亀裂が生じ、そこからカロと、子犬サイズになったマルフォウスが出てきた。


「な、みんな、どうして……」


「ん? シンイチくんに会いたくなっちゃって」


「えぇ!?」


 ケイアの表情を見て、冗談とわかりつつもやっぱり嬉しくなってしまう俺は単純かな。


『おいおい、会いたかったのはうちのレジーナも一緒だぜ? なあ?』


「え!?」


「マ、マルフォウス! ……!」


 え、な、なに? 何が起きてるの?


「……シン、あとで、一緒にトイレか校舎裏に行こう。な?」


 隼人が肩をポンと叩いてさわやかな声で誘ってくる。絶対に行かないからな!


『まあ、半分冗談はさておき、だ。ボウズ、おまえ何か大事なもん、忘れてねえか?』


「え?」


 大事なもの? 向こうには別に何も置いては……。


「あ」


 そこで隼人が気づく。


「シン、お前の体の中から、秘宝って……」


「……あ」


 そうだった。レイたちの秘宝”世界のワールドロウ”を取り出すのをすっかり忘れてた! ……ていうかどうやって取り出すの、これ。


『そんなこったろうと思ったぜ。まあ、こっちもバタバタしてたし、レイ王も皆がいる前で言うのはちっとばかし憚られるものがあったからな。ある意味、俺たちは密命で来たってことだ』


「あ、なるほどね……」


 そっか、そりゃそうだよね。別に会いにきてくれたわけじゃないよね。

 なんとなく、内心がっくりしつつも、マルフォウスの言葉を促す。


「それで、どうやって取り出すのさ?」


『ああ、それなんだが、暴走して城を壊したおかげで新たな隠し部屋が見つかってな。そこに少しだが秘宝に関する資料が見つかって、まあ、取り出し方もわかったっつうか、とりあえず試してみることになった』


「え……」


 何その曖昧さ。まるで人体実験みたいなんですけど!?


『まあ、その前にだ。ほれ、レジーナ。おまえ、ボウズに言いたいことあるんだろ? ちゃんと言っちまえよ。その方が、すっきりするぜ。なあ、ボウズ?』


 あの時のことを言ってるんだろうか? まあ、経験者は語るじゃないが、確かに、もやもや抱えているよりはいいだろうけど……でも、言いたいことって……。


「あ、あの……シンイチ」


 レジーナが頬を染めながら、恥ずかしそうにしている。


 え、ちょっと、これってまさか、こ、告白!?

 っていやいや、そんなはずないって。……ないよね? でも、あれ、名前、初めて呼んでもらったような……やばい、どうしよう。かなり嬉しいかも……。


「……」


「……」


 思わず、俺も緊張してしまう。言いたいことって何だろう。ああもう、おさまれ、”世界のワールド・ロウ”!


 二人ともが、固まって動けない。


 そんな時にいらぬ助け舟を出す天才のバカが一人。


(シン……オレたちは親友だ……お前が先にイくのは悔しいが、ここは友として応援してやるぜ!)


「あ、足がすべった」


 なんだその棒読み!

 隼人は俺の背中を押す。が、俺は耐える。それを感じた隼人はさらに力をこめる。

 さすがに力負けして、俺は前に一歩踏み出す。が、先ほど隼人が落としたバナナを踏んでしまい、一歩踏み出した足はつるりとすべり、俺は態勢を崩す。そのまま前のめりに倒れるようにレジーナの胸へ――。


「え……」


 ポヨンと弾力ある胸が俺を優しく押し返す。


「あ……」


「あらま……」


『あ~あ……』


『アンっ!』


 みんながため息をつく中、俺は慌ててレジーナから離れる。


「ち、違うんだレジーナ! 今のは隼人が押して、それでバナナにすべって――」


「シン……言い訳は見苦しいぞ……」


「てめえ、親友こらぁ!」


「……り……」


「……え?」


 レジーナの肩が震えている。うん、大丈夫。これは俺にもわかる。間違いなく――。


「やっぱり、貴様は成敗してやる!」


「うわああああああぁぁあぁあぁ!」


『アンッ!』


 カロは走り出した俺を見て、嬉しそうに一緒に走り出す。


「い、いや、カロ、これは違う――」


 そういって振り返った先には、般若の形相のレジーナが追いかけてきていた。


「待てええええぇぇ!」


「だ~! とにかく逃げるぞ、カロ!」


『アンッ!』


 俺とカロは全力で走り出す。


『……まったく。あいつら、秘宝のことなんてすっかり忘れてんじゃないだろな?』


「うふふ、そうかもしれませんね。とりあえず……」


「はい。オレたちも、追いかけますか」


 後ろの三人も加わり、全員でマラソン大会が始まる。


『「「「待て~!」」」』


「なんで追いかける方が四人に増えてるんだよぉ!?」


『アンっ!』


 くそっ! なんで、こんな状況なのに俺は――なんか、楽しいなんて思ってしまってる。


《ワンっ!》


 シロ!?

 あたりを見回すが、どこにもいない。でも、その声はどこか、嬉しそうだった。

 ……そうだよな、シロ。今を精いっぱい生きて、楽しまなきゃな。

 時間は戻らない。過去は直せない。でも、未来を変えることはできる。そのために、今を一生懸命にやろう。亡くなったみんなも、きっとそう思ってくれているはずだから。

 道端にタンポポが一輪咲いている。

 でも、よく見ると、その奥には、タンポポ畑が広がっていた。


《一人じゃない》


 そのタンポポも、一人じゃなかった。

 それがなんだか無性に嬉しくて、涙が出て、でもそれは風に飛ばされて、そして俺はしっかりと前を見る。


 ここからだ。いや……どこからだっていい。どこからでも、始めていいんだ!


 空を見て思う。

 シロ、俺、頑張るからさ。これからの人生、お前の分まで……俺のこと心配して化けて出なくてもいいように、俺、頑張るからさ。見守っててくれよな。


 ありがとな、シロ!


「さあ、行くぞ!」


 朝の光に照らされた堤防を走る。その先に、明るい未来があると信じて。





Fin


まず謝辞を。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

自分の書いた小説がこうして少しでも人の目に留まり、読んでくださることに気恥ずかしさとともに感動を覚えつつ、読者となってくださった方に多大な感謝を送ります。


楽しんでいただけましたでしょうか?

自分でも自覚はしてはおりますが、まだまだ甘い部分はあるなと思いつつ、それでも自分にできることを精一杯こめて書き上げさせていただきました。

この作品はまだまだ続きがございますが、ひとまず、しばらくはこれで置いておこうと思います。

本とかになれば別ですがw


次はまた別の作品に今取り掛かっているところでございます。

日々勉強、上達を目指し、より多くの方に楽しんでいただけるよう、これからも精進してまいりますので、またよろしければお目通しいただければ幸いです。

本当にありがとうございました。

次も今の全力を込めて書き上げさせていただきます。

がんばります!

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