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レイ・ライダー  作者: 真中太陽
14/31

作戦実行!


「マルフォウスさんが敵をひきつけてくれている今しかチャンスはありません。ですが、中にも間違いなくいるはずです。それを――俺とティスト博士がさらにひきつけます。皆さんは、敵が出て行ったあと、中に忍びこんでください」


 ティスト博士が、ズボンのポケットからきれいな石を取り出す。


「……”爆石”だ。ハヤトたちには手榴弾といえばわかりやすいかな。着火石で素早く二回叩けば、三秒後に爆発する。ハヤト、君にも着火石と一緒に渡しておこう。くれぐれも、使い方を誤るなよ」


「ありがとうございます。……じゃあ、シン。あとは頼んだぞ」


「ああ。お前も、気をつけろよ」


 隼人はニッと笑ってうなずいた。

 そして、ティスト博士が四角い着火石と呼ばれるもので、きれいな色をした爆石を素早く二回コンコンと叩く。

 それをすぐに門の前に投げる。


「伏せろ!」


 全員が頭を下げる。

 三秒後、けたたましい轟音と共に大爆発が起きた。

 門は吹き飛び、瓦礫とその破片があたりに飛び散り、黒い煙が消えるころには、城の入口まで一直線の道が見えた。


「……ま、まじかよ」


 驚きの声をあげたのは隼人の方だった。

 それもそうだ。小石程度の大きさの平べったい石に、巨大な門を吹き飛ばすほどの威力があるなんて誰が想像できる?


「……今のは運よく威力が大きかったというべきか。たまにあるんだよね。普通はもっと爆発は小さいから安心していい」


 安心って……これはマジで扱いを間違えるとこっちが危険に巻き込まれちまう。


『よし、行くぞ!』


 レイが先陣をきって飛んでいく。


「二人とも! 呆けてないで行くぞ!」


 爆発の大きさに呆然としていた俺たちは、レジーナに叱咤され、顔を見合わせて急いで後に続く。

 あの爆発が起きても、周りからケモノたちが来る気配はない。本当は全員出払ってるんじゃないか? なんて甘い考えを打ち消すように、城門の奥にあったこれまた巨大な扉が上に開いていく。

 そこから現れた姿を見て、俺はぎょっとする。

 黒くでかい図体に、二本の黒い角。カロを追いかけ、俺たちを捕まえたあの鬼ゴリラたちだった。


「ちっ、オーニーが残っていたとは!」


 レジーナが毒づく。

 見ると、その後ろにはちゃんと兎や鹿っぽい奴もいた。そして、さらにその後ろにもぞろぞろといるのがわかった。


『くっ。まだこれほど残っていたとは!』


 レイもさすがに予想よりも多い兵力に焦りが感じられる。

 門が開ききる。

 オーニーが構える。腕を前に下ろし、握った拳を地面につけ、突進の準備が整った瞬間、奴はこちらに向かって走り出した。後続もぞくぞくとやってくる。

 今すぐ引き返して帰りたい衝動にかられる。それを奥歯で噛み殺し、正面に見据える。


 ここまで来てしまったものはもうどうしようもない。やるしかない!


「ではみなさん、作戦通りに!」


 隼人が叫ぶと同時に、先ほどティスト博士からもらった着火石を使って爆石を二回コンコンと叩く。

 隼人はそれを突進してくる鬼ゴリラたちの前に落ちるようにコントロールして投げる。


『!』


 飛来してくる何かを察知したケモノたちは急ブレーキをかけ、オーニーの前に鹿のやつが飛び出る。

 と、角を俺たちの方に向け、まるで盾のように広げる。角は巨大化し、まるで植物の蔦のように伸びて絡み合い、隙間なく埋まった時、爆石が弾け、爆発が起こる。

 今度のは城門を破壊したものよりは規模は小さかったが、それでも耳をつんざくような轟音は相変わらず、爆風にも一瞬動きを止めてしまうが、すぐに再び走りだす。


「ここから二手に!」


 爆発の煙が消える前に、俺たちは右と左に分かれる。

 分かれる瞬間、煙の隙間から焼け焦げた角が縮んでいくのが見えた。しかし、ケモノたちには傷一つついていないように見える。……どんだけ頑丈なんだ、あの角は。

 左に逃げた隼人とティスト博士は、建物の陰に入る直前、わざと敵に見つかるようにゆっくり走る。

 右に逃げた残りの俺たちは、すぐさま敵に見つからないように物陰に隠れる。

 敵は当然、後姿が見えた隼人たちの方を追いかけた。


『……よし、我らは先に中に侵入するぞ』


 敵が追いかけて行ったのを確認して、俺たちはもぬけの殻となった正面から城の中に入った。

 



「ようこそ、皆さま~」


「なっ!」


 侵入した正面の大階段――人用の階段と、ケモノ用の幅広の坂道が二階に伸びたその先に、まるで大切な友人が来るのを今か今かと待ちわびていたと言わんばかりの様子で、ケビンが満面の歪んだ笑みを浮かべて立っていた。


「おや~? 我が弟のティストはいないのですか~? せっかく案内役にと思っていたのですが、まったくもってあのグズには心底呆れる次第ですね~。かわってお詫びいたしますよぉ?」


 ケビンは大げさなアクションをとりながら、深々と俺たちに頭を垂れた。


『そう思うなら、我らが同胞をさっさと開放してもらおう。さすれば、今なら国外追放で許してやらなくもないが、どうする?』


 一歩前に出たレイがどうどうと宣言する。

 その言葉を聞いたケビンは体を震わせるほど――嗤っていた。


「……クック、ア~ヒャッヒャッヒャッヒャ! それはそれはお優しいことで! 何を言い出すかと思いきや、そんな下らぬことをま~だ言ってるあたり、甘い! 甘すぎる! 愚かでなりませんな~」


 当然、聞く耳持たずといったところか。

 顔を上げた奴は、今度は俺を見てニヤァと嗤う。


「……また来てくれると思っていましたよ、”世界の法”の器に選ばれた少年。クックック。あなたのおかげで、皆さんのアジトを知ることができました。感謝していますよ~?」


 そのセリフを聞いた瞬間、一気に頭に血が上るのを感じた。


「この……!」


『こらえよ!』


 レイの一喝でどうにか思いとどまる。


「クックック。ど~してこんな愚かな少年に秘宝が宿ってしまったのでしょうね~? 私にはさっぱり理解不能ですが……まあ、わざわざ私のために持ってきてくださったのですから、ありがたくお受けして――その蘇った体もろとも、たっぷり実験させてもらいましょうかねぇ」


 笑みの中の俺を見る目に、狂気の科学者としての怪しい光が灯るのを感じた。

 ゾクっとする。

 悪寒が止まらない。冷汗が全身から吹き出て、頭が警報を大音量で鳴らし続ける。

 捕まったら、今度こそ終わりだ。

 見えない恐怖が襲い掛かってくるのを、左手につかんだ刀を握りしめて必死に耐える。

 すると、ケビンが左手を上げた。


「みなさんが欲しいのはこれでしょう? 私の左手――ケモノ共を操っているコレ。ええ、そうですとも、確かにこの左手に埋め込んでいますよ。私の神経とつなぎ、思い通りに動かすことができます。指を一本一本、関節を曲げるがごとく、一匹一匹自由にさせることができますから。すごいでしょう? 画期的でしょう? 天才の私だからできたことですよおおぉぉぉ! ア~ッヒャッヒャッヒャッヒャ!」


「貴様の言葉など、簡単に私たちが信じるとでも思っているのか?」


 気持ちの悪い高笑いをしているケビンをレジーナの鋭い眼光が射貫く。剣に右手を添え、今にも斬りかかりそうな勢いだった。

 その様子を見ても、余裕の態度を崩さないケビン。やれやれと、両手を広げ、首を振りながら言葉を紡ぐ。


「私はただお返しをしただけですよ? わざわざ”世界の法”をもってきていただいたのに、何も返さないのでは礼儀に反するでしょう? あなたたちの誰が考えたのか、下らぬ作戦も失敗に終わり、このままではあまりに不憫すぎると思う、私の慈悲ですよ? 別に嘘などつきはしませんよ」


 その蔑んだ言葉に俺は再び憤る。

 あいつ、隼人のこともバカにしやがって!


「ふざけんな! 勝手に失敗って決めつけてんじゃねえよ! てめえこそ、一人のくせに俺たちに勝てると思ってんのか!」


 声を荒げる俺に、冷ややかな視線を浴びせ、心底呆れたと言わんばかりの表情で告げた。


「……本当に、クズですね。感情に任せ、後先考えず愚かな行動に出る。クズの中でも、あなたのようなクズは見たことない。救いようがない」


 そう言って、ケビンは左手を軽く振った。

 すると、ケビンの奥にある大きな扉が開き、そこからぞろぞろとケモノたちが出てくる。


「……うそだろ」


 まだ、こんなにいたのかよ。

 二階をずらりと獣たちが埋める。


「さあ! さあさあさあさあ! 私は一人ですよ! ええ、一人ですとも! それでも勝てると思っていますよ! 負けるわけがない! せいぜい楽しませてくださいよ! 簡単に全滅なんてされたら興ざめもいいとこです」


 ケモノたちが狙いを俺たちに定める。


「さあ、ショータイムの始まりです」


 高らかに宣言するその言葉が、開戦の合図となった。





「だああああああぁぁぁああぁ!」


 オレ、池上隼人は思わず全力で叫んでいた。

 隣で一緒に逃げるティスト博士がいるのもお構いなく、恥も外聞もなく無様に雄叫びを上げる。

 ああ、くそっ。本当に想像通りで腹が立つ。

 せまってくる動物たち。

 動物? いやいや、そんな生易しいもんじゃない。

 猛獣――いや、もはや新種の怪物じゃないか!? 

 感覚的にはジュラシックでパークの中にいる恐竜に追いかけられているといった方がよほどしっくりくる。

 とにかく何が言いたいかというと、さすがのオレさまも選択を誤ったんじゃないかということで。

 こんなやつらと対峙してたってのか、シンは? ホントによく生きてたもんだな!


「はあ、はあ、ティスト博士! そろそろ中に入ってもいいんでは!?」


 ケビンは間違いなく中で待ち伏せをしている。

 していてもらわなければ困る。じゃないと、せっかく派手に宣戦布告して囮になった意味がない。

 奴はシンたちを殺さない。殺せない。なんせ”世界のワールド・ロウ”はシンが持っているんだから。

 おそらく、飛んで火にいる夏の虫のごとく、余裕をもって迎え、俺たちを捕まえるつもりだろう。が! それこそ俺たちにとっても都合がいい。

 油断している今だからこそ、俺たちが敵を討つ最大のチャンスだ。


「ってそれはいいとして! ティスト博士! まだっすか?」


 彼は体力に自信はあると言っていたが、やはり肉体の老化は否めない。オレよりも明らかに呼吸は荒く、疲弊してきているのがわかる。


「はぁ、はぁ、も、もう少しだ。あと、少しの、ところで、中に、は、入れる、から」


 息も絶え絶えに話すその姿は見ていて痛々しいほどだ。

 しかし、ここが俺たちには踏ん張りどころだ。

 オレたちにミスは許されない。シンたちが捕まっても、オレたちが捕まっても、この計画はパアになっちまう。


「くっ! あと少しって……」


 ちらっと後ろを見る。

 恐竜――とはいかないが、オレたちのいた地球の動物たちとは似て非なるその様は、まさしく巨大なモンスターの大群に追いかけまわされている。

 しかも速い! けっこう距離はあったはずなのに、こっちだって全力で走っているはずなのに、みるみる距離は縮まる一方なわけで。


「くそっ! 出し惜しみしてる場合じゃないか!」


 オレはポケットにつっこんであった残り二つの爆石の一つを取り出し、二回コンコンと叩いて後ろに向かって放り投げる。

 すぐさま鹿のような奴が角を盾にして爆発の衝撃を受け止める。

 くそ、なんて硬い角なんだ。変形もして便利だな、それ! うらやましいぞ、コンチクショウ!

 でも、さすがに二回もまともに防いだ角はボロボロになっていた。ほんの少しの足止めはできたが、それでも十分とは言えない。敵は再び追走を開始する。


「ちくしょう! ティスト博士、まだっすか!?」


 円を描くように建つ城と城壁の間を走り続け、そろそろ城の真後ろあたりにさしかかるかと思った時、大きく開けた場所にでた。

 裏庭のような、というにはかなり大きな広場が広がっており、そのことで城は円形だが、城壁は楕円形のようになっていたことを知る。


「そ、そこだ、ハヤト。小さな木の扉が見えるだろう? そこから中に入るんだ!」


「よしきた!」


 本当に城のちょうど真後ろに当たる部分の場所に人が出入りするくらいの小さな木の扉が見えた。


「うおおお! うなれ、オレの強肩!」


 俺は爆石を叩いて、その扉に向かって投げた。うし、コントロールばっちし!

 同時に、敵もすぐ後ろに現れる。


「走れ! ハヤト!」


 察知したティスト博士が叫ぶ。言われなくてもそのつもりです!

 爆発が起きようがお構いなし、爆風が襲ってこようとも、それでも壊れた木の扉に向かって走り続ける。

 気配で、敵の先頭を走っていた鬼のようなゴリラ――レジーナさんが”オーニー”と呼んでいたと思われるやつが、手を振り上げるのがわかった。


「まずい! 跳べ!」


 瞬間的にオレは叫び、俺とティスト博士は目の前の壊れた入り口に向かってダイブする。


「ダアアアアアアア!」


 雄叫びと共に跳んだオレたちのいた場所を、黒い剛腕がブンッと空振りするのが聞こえた。

 間一髪、セーフ!

 すぐさま起き上がり、あたりを見回す。中は倉庫のようで、若干の埃っぽさが鼻についたが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


「博士、次はどこに……」


 ティスト博士の方を振り返ったその時、彼は苦悶の表情を浮かべていた。


「ぐうう、す、すまない、ハヤト」


 見ると、片方の足が変な方向に曲がっていた。

 おそらく、オーニーの腕がかすっていたのだ。

 ぞっとする。かすっただけで、この威力。直撃なんてしたら、ひとたまりもないだろう。


「ティスト博士! しっかりしてください!」


 俺はすぐさま駆け寄り、彼の腕をとって何とか起こす。


「ハヤト……私のことは置いていって――」


「何バカなこと言ってんすか! うおっ!」


 瞬間、ドシンという衝撃が後ろから聞こえた。ケモノたちが、入口を壊そうとしているようだった。


「……城は周りの城壁よりもさらに強固にできている。そう簡単に壊れはしないが……あまり持ちそうにないな」


 確かに、爆発して壊れたのは木の扉だけ。奴らには小さすぎる入口の周りを、体当たりでもしているのか、地震のように響かせながら攻撃している。


「……とにかく、置いてくとか見捨てるとか、そんなことはしないんで」


 俺は彼をおぶさり、どこか身を隠せる場所を探す。


「すまない、ハヤト」


「気にしないでください。さ、行きますよ」


 オレたちも何とか城の中に入れた。ここからは、慎重にいかなければ。


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