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レイ・ライダー  作者: 真中太陽
13/31

反撃開始!


「……第一回・ケビンをやっつけてみんなでハッピーになっちゃおう作戦会議~!」


「……」


『……』


 すいません、こいつのネーミングセンスだけは許してやってください。


『……して、内容は?』


 スルーをしてくれるレイ。お、大人だ……。


「……ごほん。要するに、ケビンを倒すためには何をしなければならないか、ですよね?」

『問題の核はそこだな』


 皆がうなずく。


「では逆に、ケビンを倒すという目的のために、障害になっているものはなんでしょう?」


「……ケモノたち、か?」


 隼人が俺に対して大きく丸を出す。


「シン、正解! では次に、そのケモノたちはどうしてケビンを守っているんでしょう?」


「……それは、奴に操られているからではないのか?」


「レジーナさん、正解! つまり、ケモノたちはただ操られているから、仕方なくケビンに従っているという状況なだけで、本来は敵ではありませんよね」


『……うむ』


「じゃあ、どうすればいいでしょうか?」


 久しぶりの”策あり”のせいか、な~んかもったいぶってるな、隼人。


「……だからその元凶であるケビンを倒せないから困って――」


「ぶっぶー。……言い方が悪かったか? つまり、その操られているケモノたちは、誰の命令に従っている?」


「ケビンだろ?」


「そう。じゃあ……ケビンは、どうやってケモノたちを操っているんでしょうか?」


「!」


 そうか、操っているなら、その操るためのモノがあるはずだ。


「シンも気づいたようだな。そう、その操っているものを壊せば、ケモノたちは敵じゃなくなる。むしろ、こっちの味方になってくれるかもしれないぜ? そうなったら、戦力は一気に大逆転! 敵は一人、こっちは百以上になって勝ったも同然!」


「おお!」


 さすが隼人、一気に希望の光が見えてきた気がする。


『……だが、それには重大な欠点がある』


「え?」


 あ、気がしただけでしたか。


「……やつは、いったい何で操っているんだ?」


 レジーナがつぶやくように問いかける。


「あ……」


 そっか。肝心の操っているモノがわからないのか……。


「……そうなんですよね~。そこが問題なんですよね~。まあ、ほかにもあるんだけど」


「まだ問題があるのか……」


 あれ? 光がどんどん遠のいて、真っ暗になっていくよ?


「とりあえず、なんか手掛かりない? ティスト博士」


 ここで隼人がティスト博士に話をふる。


「手掛かり……は、ある……」


「おお、まじっすか!」


 隼人は嬉しそうに博士を見る。


「ああ。兄はこっちに来たとき、大戦で左手を失った。正確には、左手首より先を、だがね。その時、この世界で見つけたレアメタルを使って左手を造ったんだ。もし、発信装置を組み込むとしたら、きっと左手に違いない!」


「ナイスです、博士!」


 隼人も嬉しそうにパチンと指をならす。


「てことは、狙いはケビンの左手ってことか?」


「ああ、そうだ。左手を壊す、もしくは切り離すだけでもいいかもしれない。きっとそれで、ケモノたちは開放されるはずだ」


「なら、私の出番だな」


 レジーナが腰にある剣を握りなおす。


「手だけでなく、そのまま奴をたたき斬ってやる!」


 恨めし気に言い放つ。


「レ、レジーナ、何もそんな……」


 俺はちらっとティスト博士を見る。


「……いや、それだけ兄はひどいことをしてしまったのだから。この世界の皆さんには、償っても償いきれないことをしでかしてしまった……」


 まるで自分の罪のことのように独白する博士。


「……もう、あの優しかった兄は、戻ってこないのだろうな……」


 小さな、寂しげにつぶやいた一言が、俺の耳には届いていた。


『……目的は決まったが、問題はそのための方法だ。我は、それを聞きたい』


 レイが、隼人を見る。


「……もちろんあります。ただ……この策は、俺たちを信用してもらえなくては、できません」


 隼人もレイを見つめ返す。


 視線はレイにあるが、その言葉は、レジーナやケイア、きっとマルフォウスも含めたこの世界の人たちに訴えているのだろう。


『……聞こう』


 はっきりとした返事はもらえなかったが、それでも一応の肯定と受け取った隼人は作戦を話す。


「……まず、二手に分かれます。一つは、言わずもがな、ケビンを――その左手を狙うチーム。

そしてもう一つが――囮役です」


「え!?」


 隼人の口から思わぬ答えが出る。


「ちょ……そんなことしたら、囮役の人は――」


「ああ……死ぬかもしれないな」


「っ」


 またさらっと、他人事のように話す隼人に、俺は腹が立つ。

 なぜなら、こいつはきっと言うに決まってる。そんな一番危険な役をやるのは、いつだって責任感強い――。


「――オレがやります」


「ばっ――」


 かやろう、と言おうとして、奥歯を強くかみしめる。

 怒鳴ったところで変わるわけがない。こいつも誰に似たんだか、自分の意志は決して曲げないやつだ。


「……俺が」


「いや、シン。お前はダメだ」


「ならせめて一緒」


「もダメ」


 俺の言葉は簡単に却下される。

 思わず立ち上がり、俺は隼人を睨みつけてしまう。握った拳は、ぶるぶると震え、爪が肉に食い込もうが関係ない。

 頭で理解していても、大事な友人をみすみす死地に向かわせられるほど、俺は大人じゃない。


「……シン、ありがとな」


 やめろ、しゃべるな。


 そんな死亡フラグみたいなことを言うんじゃねえ。

 お前は昔からそうだ。俺のことをなんでも分かったような気でいやがって……そしてそれが当たっているから、当たっているのがわかっているから、俺も何も言えない。


「……は、やと。お前……!」


「シン。お前が囮役をダメなのは、俺の大事な友であり、そして――今、この世界にとっても大事な存在になってるからだ」


「……秘宝、か」


 俺の中にあるという秘宝・”世界のワールド・ロウ”。

 といっても、俺にはそんな実感もないし、扱えるわけでもない。俺自身、特に変わったところもない。

 それでも、奴は――ケビンはきっと俺を、俺の中の秘宝を狙ってくる。


「そうだ。俺たちの狙いが奴であるように、奴の狙いは――シン、お前に切り替わっちまった」


「だったら、なおさら俺の方が……!」


 適役。そう言おうとして、隼人が手を突き出し、優しく首を振って制止する。


「それは、レイ王様たちが許しちゃくれねえよ」


 俺はレイの方を見る。


『……ハヤト殿の言うとおりだ。理解が深く助かる』


「っ!」


 その言葉に俺は得も言われぬ怒りを覚える。

 まだわずかに残る自制心がギリギリのところでレイに殴り掛かるのを必死に押さえている。

 他の皆も何も言わない。それは否定ではなく、肯定としている空気であることがわかってしまう。

 どうして……どうして皆、そんな平然と――。


「そんな……そんな……」


 俺の体は怒りで震えていた。


『……王宮より逃げたあと、取り出せぬかいろいろ試してみたが、一向に出てくる気配はない。もはや、我の呼びかけにも反応すら示さぬ。完全におぬしと同化してしまったのだろう。……ある意味では、その秘宝のおかげで、おぬしは生きていられるとも言えるかもしれんが』


 レイの言葉が、せめてもの謝罪のように響く。

 でも俺には、努力したけどやっぱり無理でした、ぐらいにしか聞こえない。

 そんな言い訳なんて、聞きたくない。


「……俺は、いい友を持ったな~」


「……は?」


 隼人は嬉しそうにつぶやいた。


「なん、で……」


「いやいや、こうして友が俺のために怒ってくれるのは素直に嬉しいもんさ。あとさ、シン。お前何か勘違いしているようだけど、囮役も、死ぬ確率が高いってだけで……」


 隼人は立ち上がり、俺の肩にポンと手を置いて


「――俺は死なねえよ」


 にっと笑って言い放つ。

「隼人……」


「……私も行こう」


「ティスト博士?」


 彼が一歩、名乗り出る。


「私も、ハヤトくんと共に、囮役になるさ」


 俺たちを見て、にこりと微笑む。


「若い子たちだけに辛い役を押し付けるわけにはいかないからね。それに、石の扱いを、君たちは知らないだろう?」


 そう言って、ズボンのポケットからいつくかのきれいな石を取り出した。


『それは……なるほど。確かに、派手にいけるかもしれんな』


 レイがその石を見て、ニヤリと笑う。


「一人より二人の方が、生存確率は上がる。それに……死なせはせんよ」


 こういう時、大人の人の発言は、どこか頼もしく思ってしまう。


「ありがとうございます!」


 思わず、俺はティスト博士にお礼を言う。


「ありがとうございます。では、時間もありませんし、いっちょやりますか!」






「まず、全員で城の前まで移動します。見つからないよう、かつ迅速に」


 俺たちは森の中を、レジーナを先頭にして城へと向かう。

 木の根を飛び越え、繁みに身を隠しつつ、音を立てないよう、周りに細心の注意を払いつつ、小走りに駆け抜けていく。

 上を見れば、木の枝や葉にすべて覆われ、遠いのに今にも落ちてきそうな抑圧された暗い天井が重くのしかかってくる。仮に空が見えたところで、厚い雲に覆われたどんよりとした夜空が見えるだけだろうから、それほど変わりはしないだろうけど。

 対する地面の方は、明かりの無い闇の中を進むようにもっと暗いかと思ったが、所々、地面がほんのり光を帯びているおかげでそれほど苦にならない。

 敵がいてもすぐに見つけられそうだが、逆を言えば、それは敵からも俺たちを見つけやすいということ。

 俺は腰に差した刀が当たらないよう、左手で押さえて調整しつつ駆け抜けていく。

 レジーナは慣れているのか、剣を押えなくてもひょいひょいすり抜けるようにして走り抜けていく。……俺も見習おう。

 ティスト博士のこともやはり心配になるが、まだ余裕はありそうだ。これだけ跳んだりかがんだりしているが、マラソン好きのおかげで体力はしっかりあるようだ。

 ケイアも弓を背負いつつ、レジーナに負けじとすり抜けるように走っていく。むしろ、森の中の移動では彼女の方が速いんじゃないか? 


『アンっ!』


 そして、なぜかついてきてしまっているカロ。俺のすぐ横を元気に走っている。子供たちは危険だし、置いていこうと決めたのに。


「ふふっ。よっぽどシンイチくんの側にいたいのね」


 ケイアが俺たちの様子を見て、微笑んでいる。

 う~ん、すごく懐かれているのは素直に嬉しいんだけど、正直、何かあった時にお前を守ってやれる自信なんてないぞ、俺。


『アンっ!』


 そんな俺の不安を知るよしもなく、ちらっと見た俺と目が合えば、嬉しそうに吠えるカロ。

 ……ま、なるようにしかならないな。


『もうすぐ城の前に出る。皆、用心するように』


 上の方で警戒していたレイが降りてきて告げる。

 くそ、いいな、空飛んでるの。俺も空を飛んでみたいもんだ。

 そんな呑気なことを思いつつも、レイの言葉にしっかりと気合を入れなおす。

 先頭のレジーナが手で合図する。

 皆がスピードを落とし、彼女に続いて繁みに身を隠し、様子をうかがう。目を細めると、うっすらとだが、少し離れたところに城門が見えた。

 遠目からでもわかる、シンボルともいえる巨大な城。大きいと感じてはいたが、目の前にくると、その大きさは予想以上だ。


 城門のはるか上の方にある窓から光がこぼれている。敵はあそこか?


 あの時――捕まって連れて来られたときは気絶していて何もわからなかったが、よくよく考えれば王の間と思われるあの場所で体育館並みの大きさがあるのだから十分に理解できる。

 高さは十メートル、幅も七メートルくらいありそうな門の前には、誰もいなかった。

 隼人の言ったように、ほとんどは俺たちを捕まえるために出ていってるはずだ。


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