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レイ・ライダー  作者: 真中太陽
11/31

俺を支えるみんなの力

『……どういうことだ?』


 隼人のつぶやきに、レイも反応する。


「ああ、すいません。ただ、なんとなくそう思っただけで……」


『……話してくれるか?』


「はい……いやただの推測というか、偶然かもしれませんけど……なんとなく、シロは知ってたんじゃないかと……」


 隼人は自信なさげに話す。


「……先ほどから出てくる”シロ”というのは?」


「あ、シロっていうのは、昔シン――晋一が飼っていた子犬です。子供のころに亡くなりましたけど……」


「……」


「……シロちゃんは知っていた? ”歪”が出る場所……開くタイミング……それを、あなたに教えようと……?」


 ケイアの発言のあと、皆の視線が俺に集まる。


「え……い、いやいや、ちょっと待ってよ。そんなわけ……仮にそうだったとしても、なんで俺が?」


『それは我らもわからん……だが、現におぬしはここにいる』


「っ!」


 レイの一言が、ズドンと胸をうったような衝撃を与える。


「……」


 俺は、シロに導かれて?

 なんのために……?


「……でも、役には、立ててないです。みんながこんなに困っているのに……もっと救世主っぽい人なら良かったんでしょうけど……俺は、迷惑をかけているだけで……」


「そんなことないわ!」


 うなだれていく俺の顔を上げさせたのは、ケイアの否定の一言だった。


「あなたはカロを救ってくれた! レジーナの命も救ったの! 今みんながこうしていられるのは、あなたのおかげよ」


「ケイアさん……」


 優しく微笑むケイア。

 どうして、この人はこんなに優しいんだろう。

 冷たい強風が心を吹きすさんでいくのを、あたたかい何かで包んでくれる。

 目頭が熱くなるのを感じる。


「あなたがいなければ、私はカロちゃんまで失うところだったから……」


「……そう言ってくれて、ありがとう……」


 俺はまともに顔を見ることができず、うつむきながら、お礼を言った。


『……まあ、運がよかっただけということもあるが』


「もう! レイ王様ったら! そんなこと言わなくてもいいでしょ!」


『……小言までシヴァに似てきおったな』


 俺はそっと、目からあふれる物をぬぐう。


『……カロとレジーナを助けた。結果だけ見ればそうだろう。そして、もう一つ――』


「?」


『……”世界のワールド・ロウ”』


 レイが単語を口にした。

 その瞬間、俺の胸がズグンと跳ね上がる。


「ぐっ!」


 思わず胸を押さえる。


「シン!?」


 隼人が心配そうに俺を見る。


「だ、大丈夫だ……」


 すぐに胸の鼓動はおさまった。


『……やはりそこか……』


 レイがやれやれといった感じでため息をつく。

 俺の胸に、何が?


『……ここにいる皆には話したことだが……シンイチ、おぬしの中には、”世界のワールド・ロウ”と呼ばれるこの世界最高の秘宝が入っているのだ』


「はあ!?」


 秘宝が、俺の中に!?


「な、なんで……」


『さあな……”世界のワールド・ロウ”は代々、王のみに継がれ守られてきたものだ。その存在も、我と一部の隊長たちしか知らぬ極秘情報として扱われてきた。……ケビンやティストも含め、外界のおぬしたちには本来なら決して話すべきではないのだが……現状ではやむをえまい』


 ……そんなに渋るほどの物なのか。まあ、”秘宝”だから当然か。


『……正直、我もこれに関してはよくわかっておらん。すべてを聞く前に、先代の王は戦いで亡くなられてしまった。極秘裏に調査もさせたが、口伝のみのために資料などは残っておらん。ゆえに、どういう扱いかも詳しくない』


 レイも困ったように語る。


『……だが、ケビンはなぜか秘宝のことを知っていた。最重要機密事項だ。ほかの者が知りえることはあり得ん。……あり得んはずなのだが……』


「……」


 レイが深刻そうに考える。そして再び、俺を見る。


『……シンイチ。おぬしは――』


 レイが何かを言いだそうとしたとき、外から慌てた様子でマルフォウスがやってきた。


『王よ、逃げろ! 敵がやってきた!』


『なに!?』


 それは突然の急襲の報せだった。


「バカな! この場所がバレたというのか!?」


 レジーナが叫ぶ。


『みたいだな。まだ遠いが、確実にこっちに向かってきてやがる』


「そんな……ここは、ケビンも知らないはずなのに……」


「つけられた……いや、マルフォウス殿に限ってそんなことは……誰か、兄に触られたか?」


 ティスト博士がレイやレジーナを見る。


「……私が知る限り、私と王はないはずだ。縛ったのもケモノたちだったからな。だが……」


 レジーナが俺を見る。

 そういえば……あぁ、また、俺か。


「……確か肩のあたりを……」


「ちょっと失礼……」


 近づき、俺の肩から背中、襟の裏側まで調べる。


「……やはりか……」


 嫌な予感がする……予感というか確信する。

 ティストは、俺の背中についていた米粒程度の小さな黒い石を発見した。


「発信石だ。兄は、王やレジーナ隊長にはバレると踏んで、シンイチくんに保険をかけておいたんだろう……」


『迂闊であった……』


 レイが悔し気につぶやく。

 また、俺のせいで――。


「ダメ!」


 突然ケイアが叫ぶ。


「シンイチくん。ダメよ、自分を責めちゃ。あなたのせいじゃないわ」


「……でも、俺のせいでみんなに――」


 また迷惑をかけてしまった――。


「……違うわ。敵が少し上回ってしまっただけ。あなたは何も悪くない」


「でも……」


 心を、暗い何かに包み込まれ、そのまま押しつぶされそうになる。


『おい! 後悔してる場合じゃねえんだよ! ここにいたら、みんな捕まって今度こそ終わっちまうぞ! オレが敵をひきつけてる間に早く逃げろ!』


 マルフォウスの一喝に俺を除く全員が行動に移る。


『……やむを得ん。話は後だ。今は逃げるぞ!』


「マルフォウス! 私も一緒に――」


 レジーナもマルフォウスと共に囮役になることを志願するが、却下される。


『お前は王の護衛を頼む。まともに戦えるのは、お前とケイアぐらいしかいないだろうからな。ただ、本気でやばかったら、呼べよ。』


「……わかった」


 レジーナが信頼の眼差しでうなずく。


『……それと、おいボウズ!』


「っ!」


 強い怒りの声が俺のことを呼んだと気づいて、体がビクッと反応する。

 皆への信頼と優しさを含んだ眼差しから一転して、マルフォウスの鋭い眼光が俺を捉える。


『いつまでうじうじしているつもりだ! もたもたしてると、てめえのせいで本当に俺たちまで捕まっちまうんだよ! ……ケイアも言っただろうが。おまえだけのせいじゃねえ。とっとと気持ち切り替えて、おまえのやるべきことをやれ!』


 言い捨てるようにして、マルフォウスは再び外へと走っていった。


「シン……」


 隼人が声をかけようか迷っているのがわかる。


『クゥン……』


 カロもやってきて、心配そうに俺を見上げる。

 うつむいたままの俺は、軽く息をすい、そして――自分の両頬を思いっきり叩いた。

 パチィンッと良い音が響く。鼓膜を震わせ、頬からジンジンとした痛みが広がってくる。

 俺は、顔を上げる。


「シン! ……よし、とりあえず今は逃げるぞ!」


「……ああ!」


『アンっ!』


 俺の様子を見て、隼人もカロも大丈夫と悟ったのだろう。

 正直、辛くて、悔しくて、情けなくて……泣きたい気持ちでいっぱいだ。

 でも、マルフォウスの言ったように、今はそれどころじゃない。


 せめて……これ以上迷惑をかけないよう、今はみんなと行動をとろう。

 どうでもいい、すべてを投げ出したい――そんな気持ちを必死に抑え込む。


 視線の先――マルフォウスが向かった外への道とは反対の方に、みんなが集結していた。

 俺と隼人とカロも、そこに走り寄る。

 数ある扉の中の一つ、そこを開けると、食料などの備蓄がされている保管場所のようだった。その狭い中へ、全員が入り、扉をしめて鍵もかける。

 レジーナが奥の方から隠してあった武器を取り出す。弓、剣、防具、刀……。


「刀!? この世界にも、日本刀みたいな刀が存在するのか……」


「……それは大戦の時に、おまえたちと同じ異世界の男が置いていったものだ」


「ふぅん……」


 俺は刀を手に取る。初めて握るにも関わらず、それはしっくりと手になじんだ。


『――』


 全員に武器が行き渡った頃合いを見て、レイが呪文を唱える。すると一部の地面が四角く切り取られたように線が入る。そして少し沈んだかと思うと、スライドドアのように開いて地下への階段が現れた。


『抜け道だ。ここを通って外に出る。中は迷路のようになっているから、はぐれないようにしろ』


「……はい!」


 俺たちはレイの後に続いて、階段を降りていく。

 入口はすぐに閉まり、真っ暗で何も見えなくなるが、ここもあの光るコケみたいなのがあるのか、ぼんやりと光だし、すぐに洞窟の全貌をさらけ出す。

 レイにレジーナ、ティスト博士にケイアとケイアが匿っていたケモノの子供たち、そして隼人と俺とカロ。


『行くぞ』


 レイの合図とともに、全員が駆け足で小さな洞窟を抜けていく。


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