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犬と魔王と異世界と。  作者: 櫻紫
第Ⅰ章「兄は異世界で目を開く」
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1‐4「弟は兄に魔法を教える」



ああ、アリユリ君達のキャラ崩壊が始まった……。


さて、Shimuと申す者です。早くも第4話。


ペースは早い気がしますが、一日1話を厳守として頑張りますので、よろしくお願いします。





 翌日。俺はいつの間にか眠っていたらしく、目が覚めると、ユリスに抱きしめられていた状態だった。うん、これセーフ、なのかな。俺が人間の姿だったらアウトな行為だよね。ハグとか寝起きハグとか完全なるアウトだよね!


「んう、兄さぁん? ぉはよー」

「おう、おはよう」


 そして寝起きハグ。やっぱりアウトだよ! 精神的に男同士もアウトだよ! あ、でも兄弟ならセーフ? 前に友達が読んでいた本、表紙は双子(両方男)がハグしてたよな? うーむ、混乱してきた。兄弟はあり? 男同士はなし? あれ、あれ?


「どうしたの、兄さん。難しい顔してるよ?」


 ユリスは俺を自分の顔の前まで持ってくると、きょとんとした顔で俺を見た。


「犬の表情も読めるのか、弟よ!」


 なんか俺の弟ハイスペックになってないか? 気の所為ならいいんだけど。俺は身をよじるとユリスの腕から逃れ、ベッドに着地した。ユリスはショックを受けている顔だったが、許してくれ!


「ユリス。今日からその、魔法を?」

「うぅんぐっ! うん!」


 泣くほどではないと思うが。なんてのは本人には秘密だ。もっと傷つきかねん。腫れ物に触るみたいでなんか……。まあいいや。


 魔法という言葉に心踊るのは現代人のサガだと思う。いいよね、魔法! こう、空とか飛べたりしてさ! ーー犬だけど。火を出したりしてさ。ーー犬だけど。でも……。


「肉球の上で小さな炎を出すのも、なかなかに可愛いと思うよ?」

「お前はエスパーかっ!」

「やだなぁ兄さん。魔法もある世界だよ? 今更こんなことで驚かないでよ」


 否定しろよ! その曖昧とした返事は逆に怖い。さて、それはともかく。魔法の練習な訳だが。その前に。

 お腹空きました。



     ◆



 朝食も昨日と同じ、美味しいご飯を食べた俺達は昨日、俺が起きたあの路地裏(仮)に来ていた。ここに結界を張れば、邪魔されることも、魔力を探知されることもないらしい。なんて万能な。


 ユリスがまず初めに俺に言ったのは、体内に巡る魔力を感知しろ、というものだった。ユリスは簡単にできるらしいが、いかんせんこちらは寝起きの身。ヤッホー異世界! 状態なのだ。早々簡単に感知できるわけもなく。


「こう、にゅるーっとした感じだよ、兄さん。それで、こう手から引っ張り出す感じ」

「そんなことを言われても……」


 俺は魔力の魔の字も感知できないでいた。俺って才能ないのかな。少し傷つく。あの時の小説の主人公はすぐに出来ていたのに。


「ん、兄さん、僕と手を繋いでみて。あ、というよりはい、お手」


 犬のサガなのか、俺は無意識にユリスの手に前足を乗せてしまっていた。まさか弟にこれをする日が来るなんて。


 でも、ユリスと手を繋いだからなのか、体を巡る何かを感覚が捉えていた。確かに、ユリスの言う通り、にゅるーっとした何かだ。少々気持ち悪い。


「兄さん、それが魔力だよ。これは僕の魔力だから、はい。次は自分の魔力を感じてみて」


 そう言われて手を離す。先程のように感覚は掴めないけど、確かに、何かの端切れのようなものを捉えることができていた。これが魔力。


「できた? 次はそれを引っ張るんだ。自分の中へ自分の中へ。ゆっくりとね」

「ゆっくり、ゆっくり……」


 神経を集中して端切れを引っ張っていく。イメージは心臓あたりで巻き込むような感じで。ぐるぐるとぐるぐると。ああ、なんか出来ているみたいだ。ユリスと同じにゅるーっとしたモノが俺の中心で巻かれていく。


「ユリス」

「そう。それが魔力だよ、兄さん。すごいね、上達が早い。さすがは兄さん!」


 そう言われるとやっぱり嬉しい。でもそれ、犬の中では、なんてオチはないよな。いかんいかん、自意識過剰になってきている。危ない危ない。


「次はそれを小指くらい、僕の小指くらいに千切るんだ」

「待て、ユリス。このにゅるにゅる、終わりがわからないんだけど。どうすればいい?」

「兄さん! もしかしてまだ引っ張ってるの!?」


 ユリスは驚いたような顔をして、俺を抱き上げた。ってうわわっ。そんな急に持ち上げられたらにゅるにゅるが戻っちゃうって!


「うわぁ、兄さんはやっぱり凄いね。僕以上の魔力を持ってるなんて。やっぱり僕の兄さんだ!」

「待て待て、わからない。俺は凄い、のか?」

「凄いよ! 僕も一応魔王だから、国民の誰よりも魔力は強いんだけど。っていうか世界最強かな? そんな僕に魔力で勝っちゃうなんて!」


 そう聞かされれば凄いんだと思う。自覚はないけど。それより、ユリスが世界最強のところに驚いた。兄として誇らしい。


「兄さん、こうなりゃ、全部引っ張ってみよう? どれくらいあるのか僕も気になるもの」

「わ、わかったから、降ろしてくれ……」


 地面に降ろされた俺はユリスが止めるまでずっとにゅるにゅるを引っ張り続けていた。俺のどこにそんな力が入っているのやら。まったく底が見えない。


 俺の心臓あたりもそろそろ爆発しそうなところだった。止めてくれたユリスに謝々。


「兄さん、兄さんはやっぱり凄い人だった。でも、僕以外の前ではその力、使わないでね?」


 なんて言われたけど、魔力だけじゃ使えないんじゃ? 魔力がいくら多くても、魔法を使えなければ意味が無いと思うしね。なんて俺は考えていた。



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