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成り上がる?戦記  作者: 今野常春
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第二十二話(幕間二話)

 ドマニステルと言えば、と尋ねれば間違いなくオアシスと口を揃えて言うだろう。此処のオアシスは通常とは異なり確りと整備が施されている。複数ある水の供給場へと送る為である。ただ整備するだけでは芸が無いと、時の為政者は景観を考えての造りを指示したのだそうだ。

 オアシスとは砂漠にあるものだ水源は山などから集まる水が地下へと溜まり、それが地表へと染みだしている。


 観光スポットとして非常に有名なオアシスは、恋人同士で行う願掛けでも知られる。

「さあ、ブラッド私の手を握っていてね」

 クラウディアとブラッドはオアシスに背を向けると握りあった手で硬貨一枚を投げ入れる。これが中央にある黄金で出来た皿に乗ればその二人は永遠に結ばれると言う話である。


 クラウディアは金属同士が当たる音が聴こえ、祈る思いで振り返った。

「あっ、入ってる、入ってるわブラッド!」

 彼女は大喜びである。彼も満更ではなく、異国の地で楽しむように今を受け入れている。


「くっ、悔しいですわ!第一婦人のわたくしがどうして失敗など…」

「あり得ないわ…あり得ない」

 此方は失敗組である。イリエナは力む余りにオアシス中央にある皿を大きく越えてしまった。ローラはと言えば、それを見て修正したのはいいが、運悪く鳥に咥えられて持っていかれてしまった。

 此には酷く落ち込んだが、宿泊している場所の使用人ハチが言うには、子は子宝と呼び、硬化を鳥が持ち去ると、子供を授かると言う意味があり大層喜んだ。


 エルミナはと言うと、中央の皿には更に孔があり、二人が投げた硬貨はそこに吸い込まれたのだ。その時は喜んでいた、だがこちらも聞いてみれば、破局を暗示していると言われて落ち込んでしまった…

 奈落の底とでも言うのであろうか…


 そうやって観光を楽しんでいる五人は街中をブラついている。異国の地は何れもが目新しく興味をそそらせる。残念なのは手持ちの資金が少ないことだ。両国は先日国交を結んだばかりである。為替レート何てものは存在しない。

 後日、専門家を含めた調査によって価格を決めるのだ。今現在は王太子側から渡されたこの国の貨幣が全てである。


「さて、次は何処にしようか。時間的にも次が最後だな…うわっ!」

 ブラッドは依然として四人のだれかとd腕を組んでいる。今は左にローラ、右にイリエナである。彼が目を切った瞬間、横道から来た人とぶつかった。


「キャッ…」

「おっと!?」

 飛び出してきたのは彼らよりも年上の女性であった。それに、見覚えのある服装である。幸いぶつかったのがブラッドであるため、両者ともに怪我がなかった。

「大丈夫ですか?」

 ブラッドは飛び込んで来た女性を受け止める形で話をしている。

「ええ、大丈夫です。そなたこそお怪我は?」

「俺は大丈夫ですよ」


「失礼ですがセント王国のかたでしょうか?」

 そう尋ねたのはエルミナであった。当然ローラも同じ疑問を抱いたが、此処は彼女に任せるべきと考えている。

「ッ!い、いかにもそ…そうです。私はこの度セント王国、アームスト王太子殿下の供として参りました。貴女方は詰まる所コーンステッド家の方たちですね?」

 王太子の随伴者であれば知っていても不思議ではないと考えたエルミナは身分を明かす。


「いかにも。我々はコーンステッド侯爵家、私設騎士団所属の者です」

 ローラを含めて話していいのか、と言わんばかりであった。しかし、此処はエルミナに任せた以上何にも言えなかった。

「それはよかった。申し訳ありませんが、本日夕刻まで私を…案内してください」

 突然のその言葉に驚きを隠せない一同である。私設騎士団とは言え身分は貴族である。王太子の供であればそれなりの身分であろう。しかし、そこまで言えるほどの権限はない。さらには夕刻と時間を区切ったのであれば今日の事が分かっている筈である。


「しかし、我々は昼までは自由行動を許可されておりますが、それ以降は宿泊場にて準備を行わなければなりません」

 エルミナは幾ら王太子の従者とはいえ無碍には扱えぬと考えて、やんわりと断りを入れる。何か失礼があれば、思わぬところでコーンステッド家に泥塗ることに為るかもしれないからだ。

「構いません。その時に私を仮迎賓館へとお連れしてくだされば。王太子殿下も私に暫くは自由にせよと仰っておりましたから…ですのでお願いします」


 こう言われては困ってしまうエルミナである。王太子から許可を戴いている。即ち時刻までは自由にせよ、それを理由にエルミナ達に案内してくれと頼む。それを断ると言いがかりを付ける格好の餌と為る。

 彼女はちらりとイリエナを見る。この中では彼女がトップである。その彼女は小さく頷いた。

「承知いたしました。それではご案内いたしましょう。しかしです、我等とて昨日此処へ到着したばかりです。何も知らない上に時間もそれほどありません」

「構いません。自由に動ける事が出来ればそれで、皆さま暫くの間宜しくお願いします」

 そう言って彼女は頭を下げて暫く、行動を共にするのであった。



 


 彼女を含めた一行は自然と街中をぶらぶらするようになっている。ドマニステルは広いとても一日で観光名所を見て回れるほどではない。ハチも幾つかピックアップしていたが、その彼も良くて三つ位と言っていた。

 今は一つ目のオアシスを見学した。此処はドマニステルへ来たならば必ず立ち寄りたい観光スポット第一位である。一行は古代遺跡を見ることになった。

「へー昔は決闘場なんて在ったのか…」

 ブラッドは渡されたパンフレットの様なものを見てそう言った。セント王国とアレントル帝国は似通った言語を使用する。訛り程度の誤差であり、彼等も問題作意思疎通が出来る。加えて文字の読み書きも問題はない。彼等は一人当たり三枚の銅貨を渡した。占めて十八枚である。それがセント王国の価値でどれほどかは定かではないが、手持ちが殆んど無くなっていたのだ。


「それにしても大きいわね…それに此の高さ。一体どうやって石をあの高さまで持ち上げたのかしら?」

 クラウディアは見通しの良い場所まで出るとそうやって驚いていた。この中ではブラッドに次いで興奮して見学していた。

「そうだよな…昔にこんな技術があるのにどうして出来ないのかな」

 ブラッドは彼女と興奮しっぱなしで闘技場を見ている。自然と会話も弾む。


「なんじゃ、お前さんたち観光者かい」

 声がする方を見やればお爺さんが此方へ向かいながら話しかけてきた。

「そうです、初めて見ましたが凄い造りですね!」

 クラウディアは興奮したように言葉を返す。その言葉にはそのお爺さんは嬉しそうに反応する。

「ほう、お嬢ちゃんも分かるかねこの造形美が!」


「失礼ですがお爺さんは此処の方ですか?」

 ローラが彼にそう尋ねる。彼女にはどこか含む所があるらしい。

「おおそうじゃったな。ワシはレイーデル闘技場の管理人をしておるコルレアルと言う者じゃ。そちらのお嬢さんたちが妙に此処に熱視線を送っていたのでな。それに同族の匂いがしたもんで、つい気に為っての」

 コルレアルが同族と言ってローラは耳を見る。それは間違いなくエルフ族の物であった…

「エルフ族の方ですか?」

「そうじゃ、やはり知っておるか。ワシ等は長寿の故に数が少ないからのう。村を出れば早々同族には出会えんのじゃ。前は此処にやってきた者で…四十年前にもなるのぅ」

 コルレアルはそう言って懐かしがるように話す。皆も彼の話しに興味があるのか、観光客が座れる席へと移動する。そこは飲食が可能である。


「此処はワシの奢りじゃ。好きなだけ食べなさい」

 コルレアルはそう言うと好々爺然として話す。世話好きなご老人であった。ブラッドたちはコロコト・ドローセンで対応は理解している。エルフ族はこうやって振舞うときは遠慮してはいけないのだ。それを知るのはブラッド、ローラにクラウディアである。付き合いが浅いイリエナとエルミナはまだ知らないことである。


「それじゃあ、遠慮なく注文させて頂きます!」

 クラウディアはメニューを持つと店員を呼んで色々注文を始める。それに驚くのはイリエナ達である。途中で加わったセレナと言う女性も同様だ。今まで見たことが無い彼女の行動に吃驚している。対してブラッドとローラは彼女を止める様な事はしない。


「やはり知っておったか…」

 コルレアルは同族の匂いを感じていたが、それだけではまだだと感じて彼等に振舞うことにしたのだ。

「詳しくは話せませんが以前それでこっ酷く怒られまして…」

 ブラッドはその時の事を思い出しながら話す。ブラッドたちがウォータルへと来て四カ月が経過しようと言う頃、家も借りられこれからさらに頑張るぞと言うときである。コロコトが激励をかねて大衆食堂へで今回の様に奢る場面があった。普段は気風の良い頼れるオヤジである彼が珍しく本気でキレた。その時の事を教訓にしているのだ。


「ほうそうじゃったか、それは知らんとはいえ運が悪かったのぅ。しかし、それだけそのエルフはお主らを気に言っていると言うことじゃな」

 つまりはコルレアルもかと言うとそうではない。彼はそう思える以上に、久方ぶりに出会えた同族に近しい物と言う認識であった。要は嬉しかったのである。

 クラウディアが注文した料理が次々に運ばれる。そして宿舎での昼食は無理であると悟った瞬間であった。ハチは彼等が返ってきたことでブンブンと嬉しそうに尻尾を振っていたが、用意していた料理が無駄となり随分と落ち込むのである。


 七名は思い思いに料理を口にする。どれもが大衆料理で大雑把な味付けなのだが、それがどうにも美味しいのである。コルレアルは嬉しそうに彼等を見ながら頷いては料理を食べ居ていた。

「此処はのぅ嘗て大帝国を築いた成れの果てなのじゃ。大フロツーレンデン帝国を知っておるかな?」

「今から五千年、六千年ほど前に栄えていた国ですよね」

 ローラがそう答える。この国自体は何処でも知られる歴史である。特に貴族やお金のある平民が行く学校では必ず習うものである。特にセント王国では国教のメルストン教の唯一神誕生の国でもある。ローラは敬虔な信徒でもある為に忘れもしない国名である。


「大帝国はの、この闘技場で奴隷どもを戦わせていたのよ。これはと思う人物を連れて来ては戦わせるというな」

 帝国の本国はそれほど広大な領土を誇っては居ない。侵略に次ぐ侵略で領土を拡大していたのだ。此処、ドマニステルは嘗ては緑豊かな大地でありフロツーレンデンでは第二の都市とまで呼ばれた場所であった。結局は天変地異によって呆気なく国は崩壊し、この場所も見る影もない砂漠地帯へと変えられてしまったのだ。


「国としては狂っていたのかもしれん。ワシはもちろん知らぬが言い伝えではそう聞いておる」

 ただ悪い事ばかりでは無い。帝国は敢えて国民に対して格差を造り出した。国民等級である。本国に暮らす国民を一等級として最上位に付ける。戦う前に降伏し国民等は二等級など状況に応じて差別した。特に徹底的に抵抗した国は一番下の等級を与えられたのだ。一度その様な統治機構へ慣れれば帝国内で上に行きたいと思うように為る。

 

 これこそがその国の思惑だったのだ。支配するのは簡単である。強大な武力で抑えつければ良い、搾取を行い抵抗する力を与えなければいい。しかし、それでは国が富む事が無い。富ませるためには支配地域も共に成長しなければならない。そう時の皇帝は考えたのだ。そしてその統治機構を大臣らが考えて支配した地域へ種を蒔く。それは見事に支配地域に根付いた。帝国と言う枠の中での優越感を変えらに与えたのだ。一等国はその他の地域では王さまの様な扱い、行動をしても咎められなかった。二等国は三等国以下を、そうやって国民感情をコントロールすることに成功したのだ。


 当然下の者は上を目指す。皇帝はそこにもメスを入れる。闘技場である。年に一度そこで優勝する者が居ればその出身地の等級を一つ上げると言う物である。これは麻薬であった。時の皇帝の一言で闘技場と言う名の狂演が幕を開けるのである。

 各地域は挙って強者を送り込む。時代が進めば地方予選よろしく各地域でも小さな闘技場が造られ代表者を決める催しが為されるまでになる。そして奴隷である。奴隷商人もこれに加わり皇帝や大臣、地方の領主に売り込みを掛ける。領主はその地域の元支配者である。等級を上げられれば儲けものである。彼等は多少高くとも購入して送り込んだ。

 こうやって国民等級と闘技場は国家運営、統治機構に上手く溶け込んでいったのだ。


 コルレアルは長々と説明する。皆もそれを聞き逃すまいと集中して話しを聞いていた。それほど言葉巧みな話術であった。流石は此の闘技場の者である。

「ん、おお、済まんな随分と長々と話しこんでしまったようじゃな」

 コルレアルはそう気が付くと笑いながら謝る。しかし、彼の話しには聞くべき話しが多かったのは事実である。特にローラはもっと話しを聞いていたいと考えるほどである。


「なんじゃもっと聞きたいのか…しかし、良いのこかのぅお主らそれほど此処に長いして。観光客じゃろ。何時までも此処に居ては他の場所も見れまい。ワシはずーっと此処に居る。気が向いたらまた来なさい…」

 コルレアルの言葉で本来の使命を思い出す。時間を尋ねれば昼を過ぎた辺りであった。

「しまった。約束の時刻に遅れてしまう!」

 エルミナは慌てるように席を立つ。それ吊られて皆も立った。


「どうやら此処までの様じゃな…それでは諸君何時か再び会おう。此の度は良い出会いであったぞ…」

 コルレアルがそう言うとブラッドたちも思い思いに感謝の言葉を述べる。そして彼が指さす方へと歩いていった。




「あの匂いはコロコト坊主のものだな…とするとセント王国か。成程あいつが好みそうな性格をしておる。それにあの目が気に入ったのぅ…」

「あ、あのーお客様…そろそろ代金を戴きたいのですが……」

 コルレアルにそう話しかけるのはそこの店員であった。ブラッドたちが店のエリアから出て行くのを見た店員は、食い逃げされたら堪らんとコルレアルの元へとやって来たのだ。


「おお、そうじゃったな。済まん、済まんほれこれで良いかのぅ。釣りはいらんぞ…」

 コルレアルはそう言って一枚の金貨を渡す。受け取った店員はそんな額ではと言おうと思いふとその金貨を見る。

「こ、ここここれは旧大帝国金貨!!えっちょっとお客さ…ま?」

 今の価値ではお釣りどころかこの店舗の売上十年分の価値を出す物であった。驚きのあまり金貨へと集中していて、ハッとなりコルレアルに声を掛けたところそこには姿形が無かった。


「か、館長ー」

 店員は闘技場のトップを呼ぶ。

「どうしたのかねサーニャくん?またお店の品でも壊したのかね?」

 神経質そうな男がサーニャの声で現れる。

「ち、違いますよ。今日はまだ壊していませんよぅ。それよりもこれを見てください!」

「何だと言うのかねって!こここここれは!…旧大帝国金貨っ!」

 彼女が男に渡すと彼女と同じような反応を示した。


「先程此方で食事をなさった方からのお支払で頂戴した所、釣りはいらないとこれを渡されまして…」

 彼女が男にそう話すも男は驚きの余り立ったまま失神していた…


 そもそも、レイーデル闘技場という名前の観光名称は存在していない。此処は単に闘技場と言う名が付けられているだけである。古代遺跡からは此の闘技場の名前が消えていたからである。加えて言うならば此処は博物館的な役割の観光場所であり、此処の統括者は館長と呼ばれ管理者とは呼ばないのである。




 嘗て大フロツーレンデン帝国には凄腕のエルフ戦士がいた。その者は剣一本で次々と対戦相手を斬り倒し、見事優勝を果たす。エルフ族の中では有名な話しであり、彼こそが今のエルフ族の原点を築き上げた者である。

 そのエルフにとり大英雄の名をコルレアル・フロンケット・バーリャン・スクロウドという……

 最後までお読み頂き有難う御座いました。

 申し訳ありません!今回のお話しは殆んどローマ帝国時代の設定を盛り込んで書いております!まんまだとかの御批判派お許しください!!


 ふと浮かんだ話しでは在りますが、これ以降の話しで必要な人物も入れております。


 ご感想等お待ちしております。

 誤字脱字等々御座いましたら御一報いただければ幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう。

               今野常春。

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