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成り上がる?戦記  作者: 今野常春
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第十九話

 今回確認なしで投稿してみました。ドキドキです…

 ギルドマスターコロコト・ドローセンより緊急依頼で集まった翌日の朝、再度地下の会議室へ集合した。冒険者ギルドは朝早くから仕事を始める。城塞都市ウォータルで暮らす冒険者が、城門が開くのと同時に外へとでられるようにと考えられているからだ。彼等も開始時刻と共にギルド内へと入り、此処へと向かった。


「遅くなったな」

 そう言って職員専用の入り口から現れたのはコロコトともう一人軽装の鎧を纏った騎士であった。まず間違いなく今回の依頼主であるコーンステッド家の関係者である。コロコトは冒険者等が座る前に立つ、騎士はその後ろに立った。

「おはようみんな…朝早くから遅刻せずに集まってくれたことに感謝する」

 まるで学校か、と思わせるようにコロコトは教壇に立つ教師の様であった。


「早速だが紹介しよう。俺の後ろに居るのはコーンステッド家第九隊隊長の…」

 そこで止めて騎士に名乗らせる。

「アレクレシア・アッシール・ロンデアロです。本日は皆さんの隊長として此の場に参りました!」

 そう、騎士は女性であった。軽装な鎧は彼女が動きやすいように造られているからである。しかし、その彼女は凛とした雰囲気を纏わせ、いかにも貴族と言ったものである。エルミナに少し似てはいるが、アレクレシアは彼女よりも経験が上であるとブラッド等は感じている。


「だ、そうだ。皆宜しく頼むぞ」

 コロコトはそう言うと、何かを話そうと一瞬間を開けた時である。一人の男が噛みついた。

「ちょっと待ってくれよ、コロコトさん。隊長が女なんて聞いてないぜ!」

 そう言ったのはエッジである。現代社会で言えば総スカンを食らう事であろう。しかし、この世界では男尊女卑が当たり前である。女性が男性の上司とは受け入れられないのが世の常である。同僚であれば問題はない。しかし、冒険者でも男性がいればパーティーで女性がリーダーと成る事が出来ないのである。

 だから、ブラッドたちも基本的に代表者はブラッドなのである。


 エッジにそう言われても動じる事のないのがアレクレシアであった。貴族社会では男性と女性はそれぞれ役割が異なる。故に男尊女卑が明確に現れる訳ではないが、騎士となれば話は別である。各家に常設される騎士団は飽くまでも私兵集団である。これには王家が認めたものしか騎士団を設置出来ないからである。唯一許可を得ているのがメルストン教の聖光騎士団である。

 名前の付け方が違うのだ。正式に許可されれば数字の後は軍を付けられる。それに対し、私兵では隊という明確な違いがある。


 とは言え私設騎士団ともなればそこに居るのは全員が貴族である。主に三男以降の男子がこの騎士団に入る。さらには陪臣貴族の者である為に忠誠心は殊更である。門戸は女性にも拡大されてはいるのだが、殆んどいないと言うのが実情である。アレクレシアはそんな中でも稀有な存在であった。実力も兵を率いる能力も他の男性騎士よりも優れていたのだ。


 そうなれば彼女は攻撃の対象である。女より下なんてと、思う貴族の息子たちは事あるごとに彼女を攻撃する。口もあれば手も出す。社会がそうだから仕方が無い、と言えばそれまでだ。しかし、ここはコーンステッドである。それを許さぬ者がいた。それがイリエナである。


 


 イリエナが興味を抱いていた騎士団の訓練を視察している時である。彼女とエルミナ、さらにはコーンステッド家の陪臣とは言え、有力な貴族が彼女の視察に同行していた。まさに騎士団員にとっては千載一遇にチャンスである。覚え目出度く、もしかしたらと思わずにはいられない。だが現実とは非常なものである。今回は一騎駆けなるものが選ばれたのである。

 距離にして二キロを単騎で道中にある障害物や的を倒しながら駆け抜けると言うものである。イリエナが観戦していると言うこともあり、各隊から選抜して選ばれた者が行うことになっていた。流石各隊の選抜者と言う技量を彼女に見せる。彼等が素晴らしい動きをするたびにイリエナは喝采を挙げ、拍手を送る。ここウォータルでは彼女はお姫様である。彼等にしてみれば雲の上の人物である。そんな彼女が自分たちに拍手を送る。それだけでも彼らには名誉であった。


 順番は第一隊から始まる。次々に一騎駆けが行われ、遂に彼女、アレクレシアの番となった。エルミナが彼女の事を話す。今回選ばれた中での唯一の女性騎士であるからだ。本来、どんなに技量が優れていようともアレクレシアは選ばれる予定では無かった。これは単にイリエナが影響していたのだ。彼女が来る、ならば一番技量のある女性騎士を一人でも入れておこう。上層部の意図は明白で、彼女へのおべっかであった。


 だが彼女の実力は上層部の想像を超えていた。人馬一体、他の騎士でも無得ない動きを彼女は行っていた。騎兵の装備は全身甲冑と軽量化された槍がこの世界では主流であった。馬に乗りながら、重い鎧を着て槍を振るう。並大抵のことでは無得ない事を彼女は行っている。これにはイリエナだけではなく、エルミナや他の陪臣貴族も喝采を上げる。彼らには女性だから、と言う認識はない。実際に他の騎士よりも素晴らしいから褒め称えているのだ。


 だが、それを知らない騎士たちは悪態をつく。今までの訓練などで積もった不満が、イリエナや他の者が喝采を彼女に浴びせたことで一気に爆発したのだ。訓練終了後全員馬を休ませるべく厩舎へと移動させる。今回選ばれなかった騎士や、不甲斐ない結果となった騎士が彼女に詰め寄ったのだ。そこには彼女を罵倒する者や馬鹿にする者また、口には出さない様な事を一様に話しかけた。

 アレクレシアはじっと耐えていた。此の社会が女性にとって厳しいものであると知っているからである。どんな事をされても笑って、辛い顔を見せなかった。しかし、彼女は今回ばかりはキレた。何といってもイリエナの事にまで悪態をつきだしたからだ。


『お止めなさい!』

 彼女が耳に残る最も高貴な女性の声である。全員がその声で動きを止める。そこにはイリエナのみならず他の陪臣貴族等が勢揃いしていたのだ。完全に聞かれていた者たちは顔面蒼白である。自分たちの犯した事が、どれほどのものかを今更ながらに考え始めたのだ。彼らだけの処罰であればましである。事は実家にまで影響しかねないのである。彼等はそれを恐れていた。


 彼等は即日騎士団から解任されただけで済んだ。イリエナは個人を処罰はしても家までは、と言って上層部を宥める。実際に騎士団上層部はその態度に憤慨した。まさか栄光ある騎士団でその様な事が起ころうと、思いもしなかったのだ。だがそれも仕方が無い、アレクレシアと言う稀有な女性騎士が誕生してしまったからに他ならないからだ。つまり前例がなく、彼等にもどう対処して良いのかも分からなかったのである。

 しかし、前例は創られた。以後このような失態が無いように制度を改め、性別による差別は許さないと言う体制が整えられるのであった。此の恩恵にあずかったのがエルミナである。その当時イリエナ十一歳、エルミナ十三歳という年齢であった。エルミナが騎士団へと入ったのは翌年の事である。




 その様な過去がある、アレクレシアは目の前でギャアギャア喚く男など眼中になかった。彼女は一心に一番奥に座るイリエナとエルミナを見ていたからである。


 


 彼女にはある思いがある。三日前のことである。彼女は第一隊の副隊長にまで上り詰めていた。僅か数年で此処まで来ることは異例であり、それだけ彼女が実力で認められている証左であった。

「お呼びと聞き参りました!」

 彼女は総隊長であるドレース・レイシュガー男爵の部屋を訪れた。目の前には歴戦のつわものと言った雰囲気を醸し出している男が座っていた。立派な体に戦傷が至る所にあるその人物はコーンステッド家にとり無くてはならぬ男である。

「うむ、アレクレシア、今この時より第一隊副長を解任する!」

 彼女にとっては青天の霹靂である。彼女が第九隊に居た時ならばいざ知らず、今その様な事があろうとは思いもしなかった。


「なっ、一体どういう…」

 珍しく彼女は動揺した。

「そう急くな。今から言うことをしっかりと聞け。…只今よりアレクレシア・アッシール・ロンデアロ準男爵を第九隊の隊長に任命する」

 ドレースはそう言うと羊皮紙を彼女の前で読み上げると手渡した。軍隊生活の長い彼女は反射で動きを戻してしっかりと拝命する動作を行う。

「はっ、謹んで拝命いたします!」

 そう言って彼女は彼に敬礼する。答礼したドレースはそう言うと雰囲気を変える。


「さて形式ばった物は此処までにしよう。アレクレシアそこに掛けなさい」

 そう言って椅子を指して彼女を座らせる。タイミング良くドレースの従者が飲み物を二人へ用意する。

「さてこの度の理由だが。君には余り良い思い出の無い隊の隊長を任せてしまう事、申し訳なく思う」

「気に為さらないでください。命令とあれば、どの様な事でも受け入れるのが私たちです。閣下が謝られることなどありません」

 彼女は表情を崩さずに答える。これは軍装をしている時の彼女の態度である。こうやって気を引き締めているのだ。

「そうか…それで、だ。これから君には冒険者を率いて水上都市バブリャンコへ王宮よりの特使を迎えに行って貰う。君も知っての通り、今のコーンステッド騎士団には戦力が充実しているとは言えない。それでは特使に何かあれば当家の恥であるばかりか、お取り潰しさえ覚悟しなければならない。よって、ライストリ子爵様に相談申し上げた所、冒険者ギルドへ緊急依頼をお出しになられた。」

 ドレースは此処まで話してお茶に飲みのどを潤す。つられてアレクレシアも同じ行動を取る。

「選ばれた冒険者は皆精強だ。中にはロエト砦で賞金首を討った者までおる。その者は旦那様直々に褒美を戴いたそうだ。だから実力は心配しなくても良い…」

 ドレースはそこで気まずそうな顔をする。彼が言いたいことは重々承知している。


「閣下は私に隊として機能するよう仕上げろと仰りたいのですね?」

 正しく正鵠を射た答えであった。この言葉こそ彼女が有能である証拠である。だからこそ、ドレースも彼女には目を掛けている。

「その通りだ。冒険者とは言えども、軍と言う物がどの様なものかは知らんだろう。それに君にはまた嫌な思いをさせることになる」

「いえ、それこそ叩き潰してやります。コーンステッド騎士団は以前の組織とは違います。今ならば女性であろうと、上司にはしっかりとした態度が求められます。舐め腐った者がいれば叩きのめしてやりますよ」

 彼女はそう言って凶暴な表情を彼に見せた。僅か数年で組織は様変わりしていた。騎士団は完全に実力至上主義となったのだ。今では性別で不当に扱われることが無くなった。そしてもし不当に扱われ他ならば、救済機関も設立されている。そこに申し立てを行い、事態の処理を行えるようになっていた。


「はははっ、頼もしいな。是非そうしてやってくれ!でだ、もう一つ君には知らせなければならない事がある。実は冒険者の中にお嬢様がいらっしゃるのだ…」

 ドレースは忘れたくとも忘れられない苦い思い出である。そうイリエナの視察である。彼はその時からコーンステッド騎士団の総隊長を任されていた。そこで彼はその日、イリエナと共に行動していた一人である。此の一段では彼以外、騎士団に詳しい者はエルミナだけであった。しかし、詳細は彼しか知らない。だから同行していた。

 彼もアレクレシアの実力には舌を巻いていた一人である。報告では素晴らしい女性騎士がいることは知らされていた。だが目で見たことで報告以上である、とその時知ったのだ。この時点で、彼はその当時の隊長を呼びだすことにしていた。


 結果は先述したとおりである。イリエナが気まぐれで厩舎を見てみたいと言い。向かってみればあの出来事である。イリエナが止めなければ彼が殴ってでも止めていたであろう。一番家にまで責任を負わせようと主張していたのはドレースであった。当然その彼も責任を取る覚悟であったのだ。


「イリエナお嬢様ですか!?」

 彼女にしても印象深い人物であった。むしろ今の彼女があるのは単にイリエナのおかげなのである。

「そうだ。互いにお嬢様には助けられた身だ。今回はライストリ子爵様からの別命故に、冒険者として参加なされる」

 アレクレシアは現在の、ドレースはその当時の責任を、それぞれ彼女が居なければあり得なかったのだ。それ故に二人はコーンステッド家のみならず特別にイリエナにも忠誠を誓っているのだ。

「別命でありますか…」

「うむ。アレクレシアには今回非常にやり難いとは思う。だがこれは次期侯爵様からの御命令でもある。『娘に対しても同様に扱うように』とお言葉を戴いている。気張るのだアレクレシアお前の事はお嬢様も覚えていよう。故に今のお前を見て貰え、あの鬱屈した時を思い出せ。全てはお嬢様あってこそである…頼んだぞ!」

 ドレースは並々ならぬ言葉で彼女を炊き付ける。彼女は彼にとって代表であるのだ。思いを込められたアレクレシアは、その言葉一つをしっかりと胸に刻みつける。


『はっ、アレクレシア・アッシール・ロンデアロ。此の度の任必ずや成し遂げてご覧にいれます!』



 そうアレクレシアはイリエナを見て思い返していたのだった…

 最後までお読み頂き有難う御座いました。

 今回は前書きでも書きましたが確認作業をしておりません。私、今野常春がどこまで文章を書いていて成長したか確認したいと思い行いました。


 ご感想等お待ち申し上げております。

 誤字脱字等々御座いましたら御一報頂けると幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう。

              今野常春

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