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成り上がる?戦記  作者: 今野常春
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第十七話(幕間) そうだ家を造ろう…

 やっつけで幕間回を作成してみました。

「改築ですか?」

 ブラッドたちは二度目のアルノバの木伐採を終えて、暫くは冒険者業を行っていた。ウォータルには毎日のように依頼が飛び込んでくる。それこそ何かの討伐だ、何かの素材がこれだけ必要だ。そんなものから建築現場での人出不足の穴埋め、どこどこの清掃など言ってしまえばなんでも屋である。

 アルノバの依頼を受けて以後、イリエナは一気に四段階アップのDへと、エルミナも一段階上がりBとなった。そうなることで無事にパーティーランクもBとなりコロコト・ドローセンは安堵の表情となっていた。


 ブラッドを含めた五人は三日月亭を経営するスマットの家を訪れていた。彼等が住む家の大家でもあり、今では良き理解者として彼等の生活の面倒を見てもいる。

「ああそうだ。あの家は平屋だろ。今の人数では手狭だと思うんだ。それに大分傷んでも来ているからな…どうせならと思ってな」

 現在イリエナとエルミナの二人が増えて少々狭さを感じることが増えていた。特に水回りである。これに時間を取られることが増えて来ていた。加えて個室の減少である。今までは一人一部屋が原則であったが、今ではブラッドが居間で過ごすことになっている。四人の女性は何とか個室を確保できていたが問題は尽きなかった。


「確かに、スマットさんの仰るとおりですね。住環境は特に快適を求めますから」

 ローラは今の状態は好ましくないと思っている。何といってもブラッドだ。エルミナを除けば全員が彼に好意を寄せている。ふとした切っ掛けで部屋に連れ込むなんて事も無いとは言い切れない。抜け駆け禁止は既にイリエナにも教育を施してある。何れは此方側に引き込んで、仲間内以外から守ることを考えている彼女である。ともあれ、男が今で寝ている状況は避けたい。


「だろ、そこでだ……ブラッド、あの家を買わねえか?」

 スマットは突拍子もない言葉に驚きを禁じ得なかった。

「何言ってるんだよスマットさん。俺たちは冒険者だぜ!?」

 これには全員が驚く。そうでないのはスマットの娘と妻の二人である。他のスマットの家族は三日月亭で仕事中である。

「ああ、分かっている。これからもずーっとウォータルにいるとは限らないって話だろ。でも今日明日な訳が無い、一年後?二年後?そうなっているかも分からない。ならよこの家を買い取って、お前さんたちが好きなように家を建て直した方がいいと思ってな」


 ローラは確かにと考える。スマットの言うことには一理あり、もし彼が所有している場合は彼の意見で改築が進むだろう。幾らか此方の意見が通ってもである。それならば自分たちで空間を調整できた方が何倍もメリットが生まれるだろう。幸いお金には困っていない。使いどころは間違っていないと確信してブラッドに代わり話しを進める。

「待ってブラッド。よく考えてみましょう。私たちが此処を買い取ったことで生じるメリットは何?」

「そりゃ…家賃とか?」

 此処の家賃は在って無い様なものだ。相場から言うと格安物件である。しかも立地がいい、日当たり良好、どれをとってもその値段では赤字ですよ状態が今の家賃である。ブラッドは仕方なく家賃を挙げたのだ。


「違うわよ、今の家賃だってスマットさんには相当無理をさせているわ。そうじゃなくて、私たちの意見が反映された家が建てられる様になることよ」

 その言葉は五人には衝撃的な言葉であった…

「じゃ、じゃあ俺の部屋が復活するのか?」

「当然でしょ。人数分の部屋は確保するわよ」

「そ、それじゃあお風呂も広くなったり?」

「当然ね、全員で入れるくらいの大きさは欲しいものね」

 イルマはムッとした顔になったが今はその時ではない。

「屋上も広く出来るのかしら?」

「当然ね。私たちの家になるのだから」

 エルミナは意見を出しはしないが自身の家と思うと胸が一杯である。ローラはもう十分だと感じた。共通の認識は金はあるのだと言う考えである。後はどうしようかと言う考えに代わっていた。


「それではスマットさん…」

 ローラは意見の集約が終わったと判断して彼に目を向けた。

「おう決まったかね」

「はい、勿論…『買い取ります!』です。本当にありがとうございます」


 金額は土地代のみと言うことになった。王国大金貨四十枚である。日本円で四千万と言う金額をブラッドは現金でスマットに手渡した。さらにそれとは別に十枚を上乗せしている。

「おいおいこれは余分だぜ。これは受け取れねぇよ」

「いいんだよ。この家を借りて無けりゃ、俺たちは冒険者としてこう成っていたかなんて分からないんだ。だから俺たちの気持ちだ受け取ってくれよ」

 三カ月は宿屋で生活し、以降は格安でこの家を貸して貰えたからこそ今のブラッドたちがあるのだ。ローラとクラウディアはそう感じている。まさに彼等の始まりがこの家と言っても良いほどだ。だからこそ此の場を提供してくれたスマットに渡すのだった。


「分かったよ。だがこれは感謝のお金じゃねえ。これからも宜しくって意味で頂くとするぜ!」

 それからはあっと言う間に事が動く。先ずは暫く拠点を動かなくてはならない為に引越である。家具などは備え付けである為、荷物程度で住む。マジックポーチが活躍するのだ。

 この際の家は銀行が用意していた。何とどこかで嗅ぎつけたのか、超お得意様であるブラッドに無料で完成するまでの間貸し出しを申し出たのだ。

「当行のお得意さまでありますブラッド・レイフィールド様がお困りであると聞けば動かない訳には参りません」

 帰り際には今後とも御贔屓にと言って去って行った。


 その家に移り住んで、喧々諤々の話し合いの末に、間取りなどを考えるとイリエナの父、ライストリが専門家を寄越した。彼らの意見を彼が設計していくのだ。現代で言うところの一級建築士である。お金はライストリ持ちで、好きに使って構わないと言う言葉まであった。

 これにはイリエナが感動して泣きじゃくるほどである。エルミナも美しい家族愛ですと感動していた…


 同時進行で元の家は解体作業に入っていた。残すべき素材は残し、再利用を行う。この時の人出はコロコトである。早い所新たな拠点を手に入れて欲しいと言う思いからの行動である。建築スキル保持者に対して特別依頼を発したのだ。報酬は二倍と言う破格の為多くの人員が揃って作業を行っている。


 続いては資材調達である。丈夫で長持ちを考えるとアルノバの木が求められる。それはブラッドが提供するが、それ以外の資材はアブレット・ノートンが営む、ノートン商会が全面的に行っている。特に魔石を用いた風呂やキッチンなどは製作に時間が掛かる。彼の築き上げた販路により短期間で仕上げる努力がおこなれている。


 まさにブラッドたちがこの街で生きてきた成果であった。彼等に協力を惜しまない、そう思わせた彼等の努力が今ここでお金にならない価値を発揮していた。

 半年後、様々の人の思いが集約して新居が完成した。改築と言う言葉から、途中で『もう一から造ろうぜ』に話しが変わっていたことを触れておく。

 地下一階、地上三階建ての立派な家が完成したのだった。三階からイリエナとエルミナの個室、さらには空き部屋として三部屋ある。二階はブラッド、ローラ、クラウディアの部屋がブラッドの部屋が妙に広く設計されている為、この三部屋のみである。一階はダイニングキッチンと風呂、トイレなどが完備されている。さらには…


「ちょっと待って、どうしてイルマの部屋が一階にあるのよ?」

 設計時の一コマである。ちゃっかりと一階に彼女の部屋が備わっていたのだ。これにはクラウディアが噛みつく。幾ら中の良い彼女等でも、認識では外部である。思いを寄せる敵と言い換えてもいい。

「だって…ブラッドが将来貰ってやるって言ってくれたんだもの。此処がブラッドの!家になるのなら私が住むのが当然じゃないかしら?」

 あくまでも五人の共同住居である。しかし、建前としてはブラッドが家主である。それをいいことにイルマはブラッドの家と強調した。


「ちょっと、どう言うことなのよブラッド!イルマをお嫁さんにするって。私聞いてないわよ!」

 素早く噛みついたのがクラウディアである。彼女のフットワークの良さは此処でも健在である。

「い、いやぁ…俺にも何が何だか…記憶にございません」


「そんな使えない政治家の様な口調は止めてくれるかしらブラッド。私は真実を聞きたいのよ。貴方の口からね」

 目と雰囲気から絶対零度の矢を飛ばすのはローラである。彼女の口調が悪くなれば悪くなるほどに機嫌が悪くなる。


「わたくしは構いませんわ。正妻としての度量が求められますもの。妻の一人や二人、どうってことありませんわ!」

「わ、わ、私もそうなのでしょうかお嬢様!!」

 勘違いコンビと化した二人は他の者が聞こえていないのをいいことに発言を残して既成事実化を計っていた。


 結局のところブラッドは思い出せず。イルマは二人の一生の思い出だから言いたくないと、事態は平行線のまま設計通りに建設が始まるのであった。


 冒険者の間では密かにブラッド等の家をハーレム御殿とあだ名を付けていた。あの空き部屋はハーレム要因を住まわせる為だとか、空き部屋分はハーレムを増やす決意であるとか。ブラッドが知らない所で、噂が噂を呼んでどんどんと話が大きく為っている事を知らないのである。その中で、職員のマリーは密かにその候補に入りたいと闘志を燃やしていることも知ることは無かった…




 さて、お風呂である。ノートン商会肝入りで製作されたお風呂はと言うと…

「おお、すげー広さだ!」

 一階に造られている風呂は六人は足を延ばして余裕がある浴層が特徴的だ。さらにはシャワーも二つ備え付けられている。さらには画期的な技術が導入されている。魔石で魔力を送らなくとも温度が変えられると言うものである。根本は疑似魔法を発現させなければならない。しかし、二基ある貯水槽に水とお湯…但し高温…を入れておくだけで、調節できる仕組みを導入したのだ。これにはイルマが大喜びであった。これは流しのほうでも使用できるように造られている。

 水の発生以外はほぼ現代の仕組みに近い物となっていた。アブレットはそれを実際に行いながら説明する。そのたびに六人は歓声を上げていた。


「よかった、気に言って頂けたようだね」

 彼を含めた七人は居間へと移動してお茶を飲んでいる。皆一様に笑顔である。何といっても新築であり、自分たちの意見がほとんど通った家なのである。正しく彼らにはお城であった。

「はい、アブレットさん本当に有難う御座いました」

 ローラが代表してお礼を言う。この広さを挙げたのは彼女だったからである。本来は五人でと考えていたのだが、プラスワンを行うことで決着したのだ。


「本当に便利ですわね…ねえアブレットさんこの機能お父様にも勧めても宜しいかしら?」

 彼にはこれが狙い目なのであった。ブラッドは既に一部の貴族、冒険者の間では有名になっている。最新式の設備を導入すればこのように口伝手でも噂は広がる。言っては悪いが広告塔の役割をして貰っているのだ。それ故にアブレットは風呂施設一式を無償で提供していた。

「おお、それは誠にありがとうございますイリエナお嬢様」


 アブレットは去って行った。此処にはこの家の住人がいるだけである。食事はまだ先である。イルマ、クラウディアにエルミナと腕に覚えのある者がいればどの様な料理でも生み出せる。と、なれば最初に行動するのは…

「さあ先ずはお風呂に入りたいのですが…いかがかしら皆さん」

 イリエナはそう提案する。使い方を説明されただけで「待て」をさせられている状態である。この提案は誰もが賛成する。

「じゃあみんな先に入ってこいよ。俺は後でいいからさ……」

 ブラッドはそう言うと自室へと戻ろうとした。何か危険を察知したのかもしれない…


「何言ってるのよブラッド、あれは全員で入る為に設計してるのよ」

「そうよブラッド。せっかく皆で入れるのに、仲間はずれは行けないわね」

 クラウディアとローラが彼の両腕をがっちりと掴む。力では負けないブラッドだったがなぜか今の二人には敵わない。

「おい二人とも!?」

「ブラッドは私たちと一緒じゃイヤ?」

 イルマはそう尋ねる。彼とて年頃の男の子である。そこまで言われてはやるしかない!と心に決めたのであった。同じ釜の飯、裸の付き合い、これを行うことでチームワークが良くなる。そう言うことがあるがこの日からイルマが内側の人間と認識されるようになったのだ。



 最後までお読み頂き有難う御座いました。

 幕間回として十七話を書きましたが、ある意味重要な内様です。

 と、言いますのも冒険者が二人新たに加わった新パーティーが出来上がった訳です。そうなればこの街で苦楽を共にした家を変えてみよう。そうすることで新たな門出が、そう今野常春は考えてこの話しを入れました。


 ご感想等お待ちしております。

 誤字脱字等々御座いましたら御一報頂けると幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう。

               今野常春

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