王子 第七章(1)
罪負者 第七章(1)
俺は罪を犯した。それはとても大きな罪だ。それはただの人殺しじゃなくて、魔法国家グランフェリアの王を殺したという大罪だ。
グランフィリアは腐敗政治で有名な国で、きつい政治で人々をくりしめていた。けれど人間は法の中で生きるのが正しいものだから、何も言えず毎日を過ごしていた。
だけど俺は違った。我慢できなかった。たとえ人の道から背く事になろうとも、王を殺し、人々の生活を解放した。
思えば、俺はそういう生き方しかできなかったのかもしれあい。
「罪人のセルビアだな」
そう言ったのは俺の後ろにいつの間にか立っていた兵士。分かるぜ、俺を追って来たんだろう。
まったくここはグランフィリアから10kmも離れた山の村ロンロンだってのによ、お役目ご苦労様ってもんだ。
だけど俺は捕まる訳にはいかねぇんだ。まだ俺にはやらなくちゃいけない事がある。
それが何かって? 後でのお楽しみさ☆
「罪負者って呼んで貰おうか」
「ふざけるな! 国王殺しの重罪人め、今ここで成敗してくれる!」
あらら、せっかく練習した決め台詞だったんだけどな。お固い国の軍人さんはこういう頭が堅い所が嫌だね。
兵士がそう叫ぶと、山小屋の中に他の兵士がわっと押し寄せてきた。
バカな連中だ。こんな狭い所に大人数で入ったらうまく連携も取れないだろうに。
一方で俺は身軽な一人だ。兵士どもがお互いにぶつかったりしてもがいてる間に、軽く魔法で吹き飛ばしてやった。
俺の魔法は黒晶と呼ばれる黒い水晶を自在に召喚するもので、こいつは絶対に物理でも魔法でも絶対壊れない。ただし発生した瞬間から自己崩壊が始まっちまうから、長くは使えないけどな。
こんな馬鹿どもなら黒晶で作ったハンマーでコツンとしてやれば失神してしまうのさ。
「今更、善人気取りか。命を奪わないとは……」
びっくりしてお俺は振り向いた。
そこには長い黒髪の男が立っていた。この男、気配がない……!
そこらでのびてる兵士連中とは確が違うという事が、俺の経験から分かった。
「おたくも兵士かい? 御役目ご苦労様ってもんだ」
分かるぜ、それがあんたらの仕事なんだろう。でも俺はあんたらの仕事に付き合ってやるギリはないんだ。
しかし返ってきたのは予想外の言葉だった。
「俺はグランフィリアの王子、レアドマスだ」
マジで。王子って事はあのオッサンの息子だろ。
たしか凄腕の魔法使いって聞いたことがある。
なんでそんな王子みずからココに来たんだ?
俺は反射的に嫌な予感がして、窓から外へ飛び出た。
頭から雪につっこんで冷たかったが、直後に冷たさなんてふっとぶ熱さを感じた。
小屋が燃えていた。
「ちょこまかと小賢しい奴だ。次は外さん」
王子は俺に向かって、ミスリル・ロッドを向ける。っていうかこいつ、自国の兵士ごと燃やしてね?
「待てよ王子様、なんであんたがいちいち罪人を殺しに来るんだよ」
「それはお前が俺の父を殺したからだ!」
なるほど、うーん納得。
でも俺もだからって死んでやる訳にはいかないんだよね。
レア度ます王子の火炎魔法は達人級の術『冥焔』だ。
こんなもん食らったら一発でお陀仏。俺は必死に転げ廻り、勝機を伺った。
でも失敗した。雪道に足を取られて転んだ。
「終わりだ。死ね」
冥焔が迫る。
俺は必死に黒晶で照壁をつくる。バチン! バチン! ババッ、ババババリバリバリリンッ!!!!!
まずい。黒晶は焔を防いではいが、自己崩壊が始まっている。
レアドますは崩壊しきるまで焔を撃つつもりだ。
まずい、これ本当に死ぬんじゃ……?
やっぱり、人殺しはいけなかったのか。これは俺の罪、そして罰だ。
俺は力を抜いて全てを受け入れようとした。
でも待てよ? 俺が王を殺さなかったら、今頃どうなってた?
まだ腐敗政治で人々は搾取され、罪もない人が死んで、苦しんでいたんじゃねーのか?
俺は皆をすくいた買った。罪と罰からは逃げられないかもしれないが、その選択まで間違ってたとは思いたくない!!!
「クッ!? なんだこれは?」
レアドますの言葉だった。
何かが起こっている、総直感した俺は、目を開いた。
「黒晶……?」
黒晶が赤く輝いていた。
それは先ほどまで撃たれていた冥焔を飲み込み、己のちからにしたかのように。
「これは……そうだ、俺は間違ってない!」
赤い黒晶、紅蓮晶が覚醒した。
レアドますの冥焔を押し返し、そして破壊した。
「クッ…… くそっ、次は無いと思え!」
おや、案外あっさり引くんだな。分かるぜ、圧倒的な実力差が分かったんだろ。
そのままレアドますはいなくなった。
俺は旅を続ける事にした。
だが、またいつかレアドますは俺の命を狙いに来るだろう。
あいつも強い、そして俺が憎いだろう。正義はあいつにある。俺は罪を犯した、罪人だ。
だけど俺もまた負ける訳にはいかない。皆の為にだ。
第七章(2)へ続く
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おっと、最終回みたいになってしまいました(笑)
でもまだまだ続きますよ、次は回想編です。ちょっと長いけどついてきてねーー^^;