五話 王族
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「なるほど。つまりクロさんは今までずっと修業していたわけですね」
「まあそんなとこかな~。あ、これおいしいね~」
彼によって助けられた王女リーナの命令でキングリザードとの対話が行われた。理由は二つ。
一つ目にこちらを襲ってこないこと。
二つ目にこちらの敵だけを狙って攻撃していること。
以上の二点からリーナは彼が味方であると判断した。そしていざ対話を始めた途端彼の体が発光。むろん護衛達は警戒した。しかしその光の中から出てきたのは8歳ほどの男の子だった。
この男の子はもちろん彼である。これが人化という固有技能だと説明した彼だったが、一つ聞かれたのだ。
あなたの名前は?
んー?忘れた。
そんなこんなで名前を付けてもらい、昼食まで御馳走になっている。結構ちゃっかりしていた。というわけでこれから彼の名前はクロです。わーぱちぱち。
「苺ジャムうまうま」
「それは良かったですわ」
彼、クロの男の子状態の性格は「のんき」である。ちなみにキングリザードの時は「戦闘狂」、ぬいぐるみ(マスコットキャラ)の時は「マイペース」みんな違ってみんないい。
「で、お前なんなん?」
「私パトリア王国の第三王女のリーナ・エル・パトリアと申します」
「ふーん。あ、このはちみつサンドもおいしいねえ」
「でしょう?私の好物ですの」
かれこれ十数回目の自己紹介であったが、彼女は律義にそれに答えていた。
「そういえばさっきのすさまじい威力の手刀はなんだったんですか?」
「ん~?あれは《疾走》で速さ上げて~。《格闘術》《闇精霊術》《爪術》《気功術》《超筋力》を重ねがけしたんだよ~」
「?」
彼女は理解出てきていなかった。それはこの世界に技能という概念がないからである。技能やレベルをのぞけるのはクロだけの技能なのだ。他の人たちはどうやっても見ることはできない。なので技能の名前で言っても理解できないのだ。
「まあいいですわ。それよりもクロさん」
「うまうま…ん?」
両手にサンドイッチを持って頬を緩ませているクロに彼女は聞いた。
私の国に来ませんか?
いいよー。
返事は超適当であったが。
「ここが首都アルゴナです!!」
「ふーん」
あのあと昼食を終え、彼らは馬車に乗ってパトリア王国首都のアルゴナに到着した。リーナの目的はクロを王国に引き入れること。しかし彼女には誤算があった。クロは今「のんき」状態だ。勢いと詭弁で国に引きずりこめるように見えたかもしれない。しかしそれは誤解である。彼は性格こそ姿によって変わるが、頭の良さは変わっていない。つまり彼女の考えはほとんど読まれていた。
無論彼女も彼に重労働をさせる気は毛頭なかった。自分の直属の部隊に入れ、自由にさせるつもりだった。彼女の部隊「藍薔薇騎士団」は彼女が自分で選んだものしか入れない部隊である。全員が冒険者ならAランクになれるだろう強さを持っている。彼女はクロをそこに入団させるつもりだった。なにせ藍薔薇騎士団は六人しかいないので、比較的自由な行動を許されているからだ。
「それでは王に謁見しに行きましょう」
「おー」
しかしその舞台に入れるにしてもまずは王(父)に許可をもらわなければならない。彼女はクロを連れて謁見室へと向かった。
「ふむ。君が娘を助けてくれたのか。礼を言う」
「?どいたま」
謁見室で会った王は、見た目子供であるクロに対しても大人を相手にするように態度を変えなかった。
「それでその実力を見込んで藍薔薇騎士団に入ってもらいたいのだが。どうかね?」
「うんいいよ~」
相変わらず彼は適当だった。
「それではクロを藍薔薇騎士団の隊員に任命する!私の娘を頼んだぞ」
「はいは~い」
王との謁見はあっという間に終わった。もともと多忙な王がそこまで長い時間を割けなかったのはあたりまえだ。それでも王は自ら自分の娘を助けてくれたものに感謝をしたかったのだ。
「他の藍薔薇騎士団が帰ってくるまでは王都にいていただいてもよろしいですか?」
「うんいいよ~。あれ?でも藍薔薇騎士団っていつもは何してるの?」
王女様は自分の部屋に行ってしまったので、案内はメイドさんがやってくれる。
「藍薔薇騎士団はリーナ様の護衛の他に、騎士団の強さを伝える役目もあります。つまり王国内で冒険者をして名前を売るのです。他国への抑止力にもなります」
「なるほどー。すごいんだねー」
「ええ」
クロはふむふむとうなずきながらメイドさんに部屋まで案内してもらった。藍薔薇騎士団には彼女らだけのための建物がある。それはこの国の最大戦力である彼女らを逃さないためだ。
「すごいねー」
<心内チャット>
のんき:拠点ゲットなう!
狂人 :ふーん
雷光 :よかったですね
蜥蜴 :拠点か
小竜 :ぴゃ?
最後のチャットに出てきた五人はまだ気にしなくて大丈夫です。のんきは男の子状態のクロ。蜥蜴はキングリザード状態のクロです。