四話 産声
五年経ちました。
「お逃げください!!」
暗き闇の中で眠る彼はその声を聞き取った。何かあわてているような声。
「だめよ!!王族は民を見捨ててはいけないの!!」
「もうこれ以上は持ちません!!早くお逃げください」
うるさい。彼はそう思った。そしてその声を聞くのをやめようとした時だった。彼の怒りに触れる言葉をその人間は言ってしまった。
「あれはこの森最強のキングタイガスです!!S-ランクの災害なのですよ!?」
最強?違う。最強は俺だ!!!!
<リーナ・エル・パトリア視点>
私の名前はリーナ・エル・パトリア。パトリア王国の第三王女だ。今日はいつもの護衛たちではなく、黒の騎士団の方々が護衛をしてくれている。いつもの護衛たちには劣るが、この森の魔物はかなり弱い方なので大丈夫だ。………とたかをくくっていた。
「前方からオーク接近!」
「数は!?」
「二匹です!!」
オーク。危険度ランクはD。護衛一人で倒せるレベルの敵だ。二匹でも三人でかかればたいした怪我もなく勝てるだろう。しかし出てきた敵はそれだけではなかった。
「後ろからオーガも来てます!!」
「前後ろ共に三人行け。残りは姫様の警護だ」
今回護衛で付いてきた黒騎士団の人数は20人。残り14人いる。
「た、隊長!!大変です!!」
「なんだ?」
「キ、キングタイガスが!!キングタイガスが現れました!!」
「何だと!?」
慌てて黒の騎士団の隊長の元に走ってきた隊員。もたらされた報告は耳を疑うものだった。
キングタイガス。ランクS-の魔物。魔物のランクはSランクを超えたあたりからプラスマイナスが付くようになる。キングタイガスのランクはS-。小さな都市なら壊滅させてしまうレベルだ。
「お逃げください!!」
何かを決意したかのように声を張り上げる隊長。しかしここで逃げるなんてできない。
「だめよ!!王族は民を見捨ててはいけないの!!」
「もうこれ以上は持ちません!!早くお逃げください」
確かにそうこう言っている間にも騎士たちはキングタイガスの攻撃をうけ、戦闘不能になっていっている。
「あれはこの森最強のキングタイガスです!!S-ランクの災害なのですよ!?」
「それでもわt「グルアアアアーーーーーーー!!!!!」な、なにっ!?」
突然森の奥から聞こえてきた咆哮。それに続いて出てきたのは。
「ドラゴン?」
二本足で立つ黒き竜のような生物だった。
「ガアアアアーーーーー!!!」
また咆哮を上げ、すさまじい速さでキングタイガスに肉薄するドラゴン。そして、
「グルアッ!!!」
そのまま手刀であっさりとキングタイガスの首を斬りおとした。
「そんなバカな!?S-ランクだぞ!!」
隣で隊長がそう言っていたのが印象に残った。
sideout
彼らが口論をしていたのと時を同じくして、深き漆黒の闇より、一匹の生き物が現れた。
その生物は2m半はあるオーガを圧倒的に上回る体躯を持っていた。
身長約5m。体重約1,000㎏の超筋肉質な体を持つその生き物の姿は、竜だった。
しかしながらその生き物は竜ではなかった。
デコピン一発でゴブリンを粉砕するだけの力を持ちながら、
格闘術や斧術、精霊術、魔法まで扱う技術力の高さ。
その目に宿る知性の光。強い覚悟の炎。
竜を圧倒するだけの力を身につけてしまった世界最強の………蜥蜴。それこそが、
キングリザード超異常個体!!!
「グルアアアアーーーーーーー!!!!!」
のちの歴史に大きく名を残すことになる生き物が産声を上げた。
世界を震わせるように。
世界に響き渡るように。
世界に轟かせるように。
彼は咆哮した。
キングリザード 超異常個体
LV76
一般技能:???
固有技能:鑑定・言語理解・人化・小型化・進化論
称号:時空を超えるもの・闇の精霊王の寵愛・???
キングリザード
蜥蜴系魔物内最強種。普通は四足歩行だが、この個体は二足歩行。
これ以上の進化はしない予定です。ちなみに手刀の威力があんなにたかったのにはしっかりとした理由があります。技能はおいおい明かして置く予定。まあ固有スキルは変わりなしですが。