9 『羽心』 他 10編
●● 銀世界 ●●
モノクロの世界に
あなただけが鮮やか
モノクロの世界も
あなたがいるから幸せ
●● 春 ●●
寒さの残る
青空の一日
花も葉も顔をだし
穏やかな空気が流れる
別れも出会いも包み込み
降り注ぐ暖かい光
予感と希望が胸を衝く
はじまりの一日
●● きみとわたし ●●
君を嫌いな君がいて
私を嫌いな私がいる
少し似ている私たちは
出会い
惹かれあう
そして
君を好きな私がいて
私を好きな君がいる
私は自分のことはもういいみたい
君がいるだけでもういいみたい
君はまだ自分のことが嫌いなの
聞きたいけど聞けないでいる
君が自分のことを好きになったなら
きっときっと嬉しくて
私は笑ってしまうだろうね
●● 可能性 ●●
絶望したなら
笑えばいい
考えの逆をいくのもいいだろう
そうして得られることもあるだろう
疲れたなら
全力で走ればいい
結果を気にしていたら
得られぬものもあるだろう
哀しみに打たれたなら
歌えばいい
それがいつか
希望に変わることもあるだろう
●● 理解 ●●
私はものわかりのいいふりをしていて
それに誰も気づいていない
なんて思っていたら
みんなわかっていたんだよ
恰好悪いことだけど
何故だか少し
うれしかったよ
●● 右側 ●●
君が心を隠すから
私も心を隠した
ちょっとした
軽い仕返しのつもりだったのに
後戻りできなくなって
壊れてしまった
君と楽しく過ごすはずだった時間を
いま私は感傷的に過ごしている
身動きできず同じ場所で
ただじっと
ただ君を想いながら
ねえ とても馬鹿馬鹿しいでしょう
ばかだな
なんて笑ってくれる君は
もういない
●● 悪あがき ●●
走っても
あなたには追いつけなかった
叫んでも
あなたには届かなかった
笑っても
泣いても
あなたには響かなかった
●● 灯 ●●
あれから
少しだけ時が経った
私はぼんやり
部屋の照明を見つめる
あの日々を
いま
さっきまでのことのように
思い出すことも出来るし
頭から無理やり追い出して
時々寂しくなりながら
だんだん忘れていくことも出来る
今日私は笑った
なんで笑ったのかは思い出せない
こうやって時は経つのか
こうやって幸せになるのか
悪いことではない
でも嫌だ
まだしがみついていたいのに
気持ちが霧のように散らばって
消えていく
●● 言葉遊び ●●
積み木遊びのように
言葉を組んで重ね合わせる
私はこの遊戯にもうずっと夢中で
組み立てては崩し 崩しては組み立てる
そんなことを
呆れるほどに
繰り返す毎日
この言葉はきれい
この組み合わせは素敵
見たことのない言葉なんてなくて
同じような組み合わせばかりでも
楽しくて
きっとずっと私は繰り返すだろう
きっとずっと言葉は輝くだろう
いつまでも
いつまでも
●● 羽心 ●●
青い空を飛んでいく
白い雲を突き抜けて
世界中を駆け回る
心を縛る
こだわりなんか
とんでいけ