6 『良い子』 他 10編
●● 5時 ●●
ひっそりと
夜が明ける
皆の寝ている間に
星が消え
ニセモノの朝が来る
この憂鬱な世界が
動き出す
●● 願望 ●●
誰かが私を呼んだような気がしたが
それはただの空耳だった
誰かが私を望んだような気がしたが
それはただの空想で
やはり私は独りだった
●● 腐敗 ●●
どんなに腹を立てても
結局悪者になるだけだ
深呼吸する
苛立ちを
諦めに変えるために
●● 前進 ●●
どんな時も
もう手遅れのような気がしてしまうが
後になり
あの時ならまだ間に合ったと悔やむ
毎日がその連続で
何もせずに考え込んでばかりいた
今この瞬間がその時かもしれない
そう考えて
私はようやく一歩を踏み出す
●●ありがとう●●
一人じゃ何も出来なくて
誰かがいつも支えてくれた
時々ひどく感謝して
あっという間に忘れてしまう
本当に愚かな私
優しくしてくれた人
励ましてくれた人
見守ってくれた人
傍にいてくれた人
私を取り囲む全てのものに
ありったけの思いを伝えたい
ありがとう
ありがとう
●● 支え ●●
落ち込んでいたら
勢いのいい言葉で励ます
泣いていたら
タイミングをみてハンカチを差し出す
たまにほめられると恥ずかしく
軽口でごまかしてしまう
互いの知らないことが多くても
言葉をかわさなかったとしても
大切なことはわかっている
気軽に会える距離ではないけれど
心はいつも近くにいる
●● 方法 ●●
傷つけたほうが良かったのか
傷ついたほうが良かったのか
どちらも選べずここまで来たが
美しく残しておくより
潔く壊すべきだった
●● 呪縛 ●●
あなたのことを想いすぎて
あなたへの気持ちが大きすぎて
あなたにうまく伝わらない
きっとこの恋はうまくいかない
それなのに私は
ほんのわずかな可能性を信じてしまう
時折感じる『心が通い合っている』という
錯覚のせいで
●●始まりのない終わり●●
恋とか愛の実感がないまま
あなたに惹かれてしまった
さようならを
言わなくては
●● 良い子 ●●
何も言わず
何も聞かず
いうことをきいていたのに
どうして駄目になったんだろう
どうしてかな
ずっと考えてる