5 『ゼロ』 他 10編
●● 虹 ●●
いつの間にか雨が降っていた
この雨はいつか川になり 大きな海に流れるのだろうか
大地を潤し たくさんのものを生かすのだろうか
それとも何にもなれず 乾いて消えてなくなるのだろうか
まるで何もなかったかのように
でももし消えたとしても
空に虹を映してくれたなら
きれいなものが心に残る
一瞬の救いを待って私は空を見上げた
●● 向上 ●●
贅沢になってしまう心
あの頃描いていた
夢のような今があるのに
もっともっとと
今以上を求める心
●● 彼 ●●
遠く離れたこの場所で
空を見ては彼を想い
風に吹かれては彼を想った
きっと二度と会うことはないだろう
どうにもならないとわかっていても
今も私は彼を想う
●● 孤独 ●●
気がつけば孤独がすぐそばにいた
私は孤独と部屋でお茶を飲む
孤独は私からゆっくり力を奪い
私はいま立ち上がることも出来ない
私をいま満たすのは
悲しみと無気力
孤独は優しい
私以外の誰も傷つけない
だから私は
孤独を嫌いになることが出来ない
●● 存在、価値 ●●
どんなにたくさんの人と一緒にいても
寂しくなる
いま私がいなくても
きっと何も変わらない
同じ会話が交わされ
同じ場所に向かうだろう
もしかすると
私はここにいないのかもしれない
もしかすると本当は
私はどこにもいないのかもしれない
寂しくなる
不安になる
●● 不安 ●●
強いはずの気持ち
強いはずの決意
私が見ているのは夢じゃない
きっと
たぶん
おそらくは
●● 自分勝手 ●●
好きなのに
だとか
好きだから
だとか
人を好きになると
一番大切な人を
いつも困らせてしまう
●●はじまり●●
一週間眠れずに
なんだか熱っぽくて息が苦しかった
風邪だと思ったのに熱はなくて
ずっと彼のことばかり考えていた
●● 突風 ●●
あの枯れ葉のように
風に吹かれて遠くに行きたい
でもきっと
遠くに行っても何も変わることはないだろう
私が変わらなければ
きっとどこでも同じだろう
●● ゼロ ●●
1も100もない
私の手には何もない
だからここから全てを始めよう
あるのは気持ち
それだけだ