2 『月の夜』 他 10編
●● 無限の世界 ●●
誰もいない部屋で空想する
空が果てまで広がって
雲は一つもなく
そよ風が世界を揺らす
誰もいない部屋で空想する
気持ちがどこまでも広がって
私は私じゃないみたい
●● 循環 ●●
楽しい気持ちを
できるだけたくさん
みんなにわけたい
楽しい気持ちは
みんなが運んでくれた
ものだから
●● 私の成分 ●●
なんとなく硬くて 中は空っぽ
熱くも 冷たくもない
どこまでも曖昧
どこまでも中途半端
そんなものが積もり積もって
私になった
そんなもので出来ているけれど
私はどうにか生きています
●● 行き詰まり ●●
いいかげんに接していこう
いいかげんに相槌を打って
いいかげんな笑い声に
いいかげんな優しさで
遠ざけるより いいでしょう?
●● 強がり ●●
嵐が来ればいいのにと
ひとり立ち尽くし
空をにらんだ
嵐が来たら
泣くくせに
弱い雨でも
泣くくせに
●● あふれたもの ●●
感情をどう表現したらいいのかわからずに
少し泣いてしまった
本当は
嬉しいと伝えたかったんです
●● 目標 ●●
振り返ると際限なく
先を見ても暗闇で
足元を見て怯えながら
追われるように
走り続ける
●● マイナス ●●
美しいものなど見たくはなかった
感動なんかしなくて平気だった
一人で生きていきたかった
誰も必要としたくなかった
生意気な人間でいたかった
今は怖い
大切なものを手に入れて
どうしたら強くなれるのだろう
手に入れなければ
失うことを怖れずにすんだのに
●● 空 ●●
俯くくせを直した私は
空を見上げてしまう
極端な私を
君は笑うだろうか
今日は空気が澄んでいて
空がとてもきれい
君も見ていたらいいのにと
穏やかな気持ちになって
それからすぐに寂しくなった
●● 月の夜 ●●
空を見上げる
きれいな月が語りかける
そんなに悪いものではない、と
空を見上げる
星が広がる
吐く息の白さ
ああ
悪くない
確かにそう悪くはないのだ