10 『以心伝心』 他 10編
●● 毎日 ●●
楽しいことがいっぱいあって
嬉しいことがいっぱいあって
そういう毎日を送れたら
なんて
春の日の中に見る
つかの間の夢
すぐそこにある
素晴らしい日々
●● 会いたい ●●
真夜中に
流れ出して
形にならないまま
気持ちは
言葉は
朝
雪と一緒に溶けて
どこかに消えた
●● フィルター ●●
別れの言葉を伝えなければ
終わらせなければ
『言ってしまえばおしまいで
言わなければこのままでいられるのかもしれない』
そんなわけがないとわかっていながら
決定的なことを口に出さず先延ばしにして
逃げて
曖昧なまま
私たちは前に進む道をなくし
きっと一人で泣くのだろう
●● 春風 ●●
咲いたばかりの
花を摘んで
無邪気に笑う君
透明な風が
花を散らし遠くへ運ぶ
何か言いたくなるけれど
言葉が出ずに
二人は互いを見つめ
黙り込む
●● 快晴 ●●
おはよう
こんにちは
こんなただのあいさつで
うそみたいに
晴れる心
●● 希望 ●●
不要な哀しみ
そんなものがあるのなら
もしもそれがわかりやすのなら
こんなに複雑にはならなかったろう
楽しいことや幸せな感じ
それだけを求めているのなら
誰もが求めているのなら
●● もっと ●●
優しくしたい
優しくされたい
愛したい
愛されたい
いつだって望みは単純なのに
大きさや重さが気になって
手に入っても満足できない
だから私はもっともっと
単純になるべきだ
●● 愛情 ●●
彼のことが
大切で
大切で
どうしたらいいかわからない
●● 上昇気流 ●●
楽しい話しかしない
嬉しい話しかしない
きっとそれで幸せになれる
前しか見ない
上しか見ない
がむしゃらに
信じて進む
●● 以心伝心 ●●
うまく言葉にできなくて
絵を描いてみたのだけれど
ゆがんだ線とおかしな色の絵しか描けなくて
しょうがないから歌ってみたら
不安定な音程でメロディーはどこかにいったみたい
踊ってみたら足がもつれてこけてしまうし
料理にしたら変な味
なにをやってもうまくいかなかったけど
「最初からわかってたよ」
だなんて言って
君はいつものように
すました顔をする