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ガンテツ 滅亡のパラドクス  作者: ちみあくた


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第三章 19



 宮城県沖で態勢を整え、移動を開始した繭=コクーンベースは、太平洋を大きく迂回。東京を目指す『彼岸』艦隊へ迫った。


 対GANベクター戦と艦隊戦を切り離し、敵の合流を防いだ上、都市圏の戦火を極力拡大させないのが、遭遇ポイントを設定した笠井の狙いだ。






「出撃する機甲自衛隊の諸君、元幕僚長としてではなく、老いた君達の先輩として、伝えておきたい事がある」


 村正全機出撃に先立ち、笠井は一人一人の顔を見つめて言った。


「皆も知っての通り、我々自衛隊は、海外ではJSDFと呼ばれる。Japan Self-Defence Forces、国際法上は軍と見なされ、国内法上はそうではない、存在の曖昧さに戸惑いを抱いてきた諸君もいる事だろう」


 そこで笠井は、出撃前の緊張で顔を強張らせている森崎ら若手四名のチームへ目を留めた。


「オイオイ……そう堅くなるなよ。言ったろ、これは老いぼれのたわ言じゃ、と」


 柔和な笑顔で肩を叩かれ、森崎もぎこちなく笑う。


「まぁ、わし自身、色々思う所もあったが、名に『自衛』を冠し、他国の如何なる軍隊より、在るべき姿を厳しく己へ問うてきた過去を、今は誇りにしておる。

何時か、世界が軍事力を必要としなくなる日……幻かも知れない夢をもし君達が引き継いでくれるなら、それまでは何としてでも……」


 又、笠井はポンと森崎の肩を叩いた。


「生きろ、ですか?」


「わしなりに、極力死なない算段はしたでな。世界の運命やら、何やら、余計な重荷は背負わんで良い。その代り、又、その生意気そうな面を、ここで見せてくれんか?」


「はいっ!」


 力強い足取りで自機へ乗り込んでいく若者達の背を愛おし気に眺め、笠井も又、全軍の指揮を執るべく、歩き出した。


 自衛官としての、これが最期の務めと、彼は心に決めていた。






 一方、ガンテツは海上での戦いに参加せず、天頂ドームを開いた繭から瞬間移動で一気に東京へ飛ぶ。

 

 瀬戸際ギリギリで重力波制御の調整が間に合った大蛇も、次元間をジャンプ。黒岩製作所が誇る主力二機は東京タワー上空へ無事到着するが……


「オイ、何だ、ありゃ!?」


 素っ頓狂な声を出し、美貴が見下ろす鉄塔は、緊迫した状況にそぐわぬ輝きで包まれていた。

 

 GANベクター=ベクラが触手によるハッキングを行い、タワーの制御系機器に干渉、ライトアップしている様だ。

 

 他の明りは見当たらない。

 

 ベクラの出現から間があった為、一時は混乱の極みにあった人々も、どうにか避難を終えたのだろう。ゴーストタウンを思わせる闇と静けさが辺りを包み、観光客用のイルミネーションのみ虹色に瞬いて、ビルの隙間へ歪な影を落とす。

 

 ささやかな歓迎の印、とでも言うように白銀の巨人が笑った。

 

 その挑発が戦いの口火となる。


「オラッ、撃ちまくんゾ、三佐!」


 大蛇は草薙と合体したまま、内蔵する八基のレールガンを全て稼動。操縦は阪田、射撃は美貴が担当して、加速破砕粒子の緻密な連射を行う。


 同時にガンテツはベクラへ突進、黒鋼の拳を叩き付けた。

 

 瞬間移動を会得した敵に、遠距離からの狙撃と肉弾戦を同時に仕掛け、連携の妙で戦場へ釘付けにする策である。






「あ、良い感じ! 意外と息あってますね、ガンテツさんと美貴ちゃん」


「当然でしょ? 元々、姉弟の中で、あの子が一番、お父さんと似てるもの」


「……それ、本人に言ったらヘコみます」


 伝のツッコミを受け、黒岩光代は、やつれた頬に苦笑を浮かべた。


 この時、彼女の個室に設置されたテレビ兼用のスクリーンには、海上を飛ぶ繭周辺の情勢、東京タワー付近の模様が、2画面分同時に映し出されている。


 繭の戦況も、見た所、順調だった。


 敵艦隊との戦力差だけを考慮するなら、劣勢は火を見るより明らかなのだが、それなりに対処法はあり、笠井の言う『算段』が功を奏している。


 何も真っ向から潰しあう必要は無いのだ。


 そもそも『彼岸』艦隊の足を止め、釘付けにして東京へ行かさない事だけが最優先課題なのである。


 したがって、残存する村正、ニコニコ号等、戦闘可能な機体は全て出撃しているが、まともにやりあっていない。

 

 躱して、スカして、行く手を阻む。ひたすら、それに徹するのみ。


 コクーン・ベースが備える強靭無比な防御力を最大限に使い、逐一飛ばす笠井の指示通りに敵の砲火が交錯する空域をわざと移動。長距離砲撃、ミサイルを引き付けている事もあり、負傷者も、撃墜された機体も今の所、ゼロだ。


「この分だと、皆、無事に帰ってきそうですね、奥様」


「伝さん、油断は禁物よ。かって知ったる他人の家、って言うでしょ」


「……それ、勝って兜の尾を締めよ、の間違いでは?」


 黒岩真希は、極めて真剣な顔で呑気な会話を繰り返す母と家政婦を余所に、戦況のメモを取っていた。


 Jガイア攻略の時は手伝える事を探して奔走したのだが、結局、アカネさん達の足手まといになっただけ。大いに反省し、今回は母の病室へ詰めているのだ。


 用事を済ませたらすぐ来ると言っていた七海が、現れないのは気になるけれど……

 

「あ、何よ、アレ!?」


 急に伝が大声を上げた。


 モニターを見ると、派手に拳を振り回していたガンテツの動きが止まっている。

 

 ベクラが何時の間にか、右腕を太古の虎……サーベルタイガーの頭部そっくりに変形させ、その長い牙を黒鋼の装甲へ突き立てていたのだ。


読んで頂き、ありがとうございます。

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