表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンテツ 滅亡のパラドクス  作者: ちみあくた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/66

第三章 17



「もう……ホ~ント、大丈夫だから、あんまり大袈裟にしないで」


 家族総出で見舞うと、黒岩亜紀はいつものノリで強がって見せた。

 

 頭の傷は相当に深く、髪を切って包帯をグルグル巻きにした姿は痛々しいが、本人はやる気満々だ。

 

「ンでもって、GANベクターとのガチンコ……当然、私も出るンで、ヨロシク」


「あ~、ソレ、流石に無茶だわ、姉貴」


「これ以上、奥様に心配掛けたら、一子相伝のデコピンが飛びますヨ!」


 光代の名前が出ると、亜紀も弱い。美貴と伝にとがめられ、轍冶に睨まれて、取り敢えず出撃の話は引っ込める。


 代わりにチョ、チョイと美貴を手招きした。


 何じゃい、という感じの徹治を横目に妹の耳へ口を寄せ、


「え~、アレってホラ、ん~……今……ナニかしらネ?」


 囁く亜紀の顔が少し紅い。


 その意味に気付かず、小さ過ぎる声を聞き損じた美貴は「ナニ?」と普通に問い返す。


「バカッ! 声出して、ど~すんの、アンタ?」


「だから、ナニって何?」


「いや……だから、ん~……わかれ、察しろ……ニブいゾ、お主!」


 目を白黒している美貴へ、真希が耳打ちした。


「亜紀姉、柘植さんの事が気になってンじゃね~かな」


「あぁ、だからオヤジに聞かれないよう、ヒソヒソと」


 そう言う美貴の声は特に小声じゃないから、亜紀は恐る恐る父親を見たが、膨れっ面のまま、そっぽを向いている。一応、徹治なりに気を使い、聞こえない振りをしているらしい。


 状況を鑑み、美貴は台詞を選んだ。


「え~……ナニはホラ、アレだよ。押すとアン出る、みたいな」


「はぁ?」


「中身がはみ出たマンジュウ状態、っつ~か」


「はぁあ!?」


 恋人の隣で、阪田はやるせなく天井を仰ぐ。


 彼自身の呼び名「赤飯のオコゲ」と言い、「潰れマンジュウ」の柘植統也と言い、どうしてこう彼女は人を「食いモン」に例えたがるのだろう?


 とは言え、言葉のニュアンスは姉へ伝わった様で、


「つまり……あいつも入院中なのね」


「うん、辛うじて潰れちゃいないが、腰骨は相当酷い有様だし、肋骨も七割方イッてるそうだよ。ナナの言う事にゃ、一本も内臓を傷つけてないのは奇跡だって」


「ほぉ、奇跡! ん~、コレって愛の為せる業かしら?」


「あのなぁ、反省しろよ。亜紀姉がやった事はさぁ。『成し遂げた』と言うより『やらかした』レベルだぜ」


「あ、生意気! 真希も彼女ができて、言うようになったじゃん」


「……え?」


「姉貴、コイツさぁ、大人の階段、登っちゃったんだよ」


「ほ~、だったら発言にはそれなりの覚悟を持ってもらわないと、ね」


「ね~!」


「……ご、ゴメンナサイ。調子にノリました。カンベンして下さい」


 こういう時だけ息が合う姉妹の一睨みで、真紀はあっさり白旗を揚げ、その勢いのまま亜紀は開き直った。


 最早、父の眼も気にしない天下御免のボケまくりは洗脳前の彼女そのもので、暗い表情だった七海も口元をほころばせている。


 ほっとして真希も微笑み、束の間、戻ってきた黒岩家の、いつものノリを噛み締めていると、


「……ねぇ、考えてみたら、こうやって家族が揃うの、久しぶりじゃない?」


 ふと、思いついたように光代が言う。


「だって、いつも誰か欠けるでしょ。6月の時は、亜紀が来れなかったし」


「……そうね。何ンか凄く前に思えるけど、たった半年なんだよね、あれから」


「黒岩家の一番長い6か月ってトコ?」


 亜紀と美貴のやり取りに、阪田も頷く。


「一丁、記念写真、撮ろっか?」


「え~っ、この部屋で?」


「ウン、良いかも、良いかも! ナナさんや工場の人を呼んで、一緒に撮ろうよ」


 真希と光代のゴリ押しで、ナナ、笠井、それにアカネさん、ツネタさんら黒岩製作所・従業員、機甲自衛隊の森崎達にまで声をかけ、急遽、記念撮影をする事になった。


 狭い病室はあっという間に超満員。


 ホログラム状態で現れたナナと七海は少しだけ距離を取り、互いに堅い面持ちを崩さなかったが、全体のムードは和やかで、焦りや絶望に苛まれていた先程までと随分違う。

 

 カメラの前で笑顔を作り、部屋にいる誰もが思った。ここにいる仲間を誰一人失いたくない、と。


 そして撮影終了直後、亜紀が妹の耳元で囁く。


 先程の内緒話とは違い、確実に両親の耳へは届かない距離とタイミングを見計らった上で、


「美貴、Jガイアで私と戦った時、ず~っとお腹、かばってたよね」


 柄にも無く、真顔で問う。


「……姉貴、覚えてンだ?」


「一応、うっすらと」


「……そう」


「あなた、もしかして?」


「……わからない。でも、ちゃんと調べる。この戦いが終ったら」


「阪田さんは知ってるの?」


「それも、これも……何ンもかも、生き残ってからの話だろ?」


 潜めた声の節々に、歓びより遥かに大きな不安と戸惑いが感じられる。


 阪田の療養中、自然に求めあった結果らしいが、それ以上、深く考えるのを美貴は恐れている。如何なる過酷な戦場でも恐れを知らなかった狂犬娘が、今、すっかり途方に暮れている。

 

 亜紀は、それとなく妹の下腹を見やった。


 まだ妊娠の兆候は見えない。

 

 それに、そもそも、異能に目覚めた亜紀と美貴が身籠る事は無い筈なのに……轍冶に知られたら、一体どんな顔をするのやら?


読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どんな顔をするのでしょうね。 でも先ずは生き残らないと(*^^)v
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ