第5話 対決! 相棒星繋式戦闘vs星廻軍人式戦闘
「きゃーっ! 生レイラ様をこんな近くで……感無量だぁ!」
笑実が一人でテンションを上げている。その横で、歩夢たちに気づいたレイラが鋭い視線を向けた。
「逃げずに来たのね。あまりにも遅いから、逃げたのかと思ったわ」
「お前こそ、恥をかく前に逃げても良かったんだぞ」
歩夢も淡々と返す。
「……生意気なお口ですこと。まあ、素直に来たことだけは褒めてあげますけれど。って――クリアさん? どうしてここにいらっしゃるの?」
「レイラさん、こんにちは。透導君に頼まれて来ました」
「記憶が戻るまでは安静にしていた方が良いのではなくて? それにこんな男の言うことなんて聞く必要はありませんわ。負けた腹いせにクリアさんに変なことをする気ですのよ」
「そうです! レイラ様の言う通りです!」
レイラの隣で声を上げたのは、相棒のアルマ・フェルム――ラスターユ島に代々仕える守り人の血筋。
淡い桃色のショートボブがふわりと揺れ、愛らしい瞳が輝いている。一見可憐だが、レイラと同じく筋金入りの男嫌いで有名だ。
「変なことって、なんだ?」
「そ、それは――」
歩夢の真顔にレイラがたじろぐのを、アルマが畳み掛ける。
「そりゃあ、服を脱げとか、言うことを聞けとか、あんなことやこんなことまで決まってるでしょっ! ね、レイラ様!」
「そ、そうね……」
無垢な笑顔に押され、レイラは咳払いして気を取り直した。
「さあ、あなたが来るまでに、こんなにギャラリーが集まってくれたわ。放送部と新聞部にも動いてもらったの。アルマ、準備を」
「はい、レイラ様。こんな男、さっさと潰して差し上げましょう」
「透導君、無理しないでね? 限界だと思ったら棄権してね」
「あぁ。いいウォーミングアップになればいいな」
そして両者はフィールド中央へ歩み出た。
レイラは右手を高く掲げる。歩夢もつられて同じ動作をした。
「いや、あなたはしなくていいのよ」
「そうか」
そのやり取りの直後、放送が響く。
『今回のフィールドは、バージョン1にて対戦を開始します。バトルフィールド──展開』
合図とともに戦闘館全体が変形を始める。
床がせり上がり、光を帯びた巨大な円形フィールドが姿を現した。中央には学園紋章が燃えるように輝き、外周には赤と青の境界ライン。観客の息づかいに呼応するように、フィールドが微かに震える。
外周にはセイヴィアが配置され、円形の戦場にはアセイラントだけが足を踏み入れる。
そして、中央にカウントダウンが浮かび上がった。
5・4
「来なさい!」
レイラの声と共に、何もない空間から武器が顕現する。
3
「すごいな。素直に驚いた」
2・1――0
レイラが地を蹴り、白い光が尾を引く高速移動。武器に星導力が集まり、彼女は叫ぶ。
「『ホワイト・シューティング・レイ』!」
「『黒星の瘴気』」
瞬間、白い無数のレーザーが歩夢を包んだ。
直撃。
爆ぜる光。
――だが。
歩夢は微動だにしなかった。
「三位の実力はこんなものなのか? 正直がっかりだ」
「い、今のはただのウォーミングアップですわ!」
「そうか。それなら良かった」
苛立つレイラは、武器を変形させる。
杖と槍が融合したような優美な武器――《幾星槍ースターロード》。
三本の槍先が生き物のようにしなり、中心の刃には輝く魔力が収束している。
「消えなさい!」
白のエネルギー弾が次々と発射される。しかし歩夢は避ける素振りすら見せなかった。
「その程度か? それとも、それが全力なのか?」
「う、うるさいわね! 武器を持たない相手って、戦いにくいのよ!」
歩夢は背中の剣を掴もうとするが――空を切った。
「……そうか。武器は学園長のところか。じゃあ、試してみるか」
左手に星導力を集中させる。黒い稲妻が走った。
「星紋模倣能力――『武器生成』、解放」
空間が裂け、柄が形を成す。歩夢は掴み、引きずり出す。
現れたのは一本の剣。
白い刀身に走る一本の黒線――無駄のない、静謐な美。
「お前の名は……雪白だ」
「武器生成? ありきたりですわね」
「これで本気を出せるか?」
「えぇ。本気で行かせてもらいますわ!」
レイラは空へ跳ぶ。
白金の軌跡を描きながら浮遊し、槍先に星導力を集中させる。
広がった白光の円が、八つの光弾へと姿を変えた。
「そのふざけた態度……改めなさい!!」
レイラが槍を突き出し、叫ぶ。
「逃げ場はないわよ! 『スターダスト・アセイラント』!」
光弾がビームへと変わり、歩夢を囲う檻となる。
逃げ場ゼロ。
その中心に、光に包まれたレイラが突っ込む――
轟音。
閃光。
観客が思わず目を覆うほどの爆発。
しかし――
吹き飛ばされたのは、レイラの方だった。
「くっ――あっ!」
地面を転がり、槍が跳ねる。
「今の技は面白かった」
歩夢は淡々とレイラに近づく。
「レ、レイラ様! 回復送ります!『スターライト・ヒーリング』!」
アルマとレイラの指輪が光の糸で繋がる。
星の粒子がレイラを包み、傷が塞がっていく。
「……ありがとう、アルマ」
「ほう。もう立てるのか」
「当たり前でしょう! これが私たちの誇り――『相棒星繋式戦闘』ですわ! 二人の絆が勝利をもたらすのよ!」
「それだとありがたいんだがな」
「今から見せますわ。あなたも驚く“本当の力”をね」
歩夢は初めて、わずかに剣を構えた。
「星の加護よ、我が名に応えて――『星紋覚醒』!』」
レイラの足元から白金の光柱が噴き上がる。
肌に星紋が浮かび、光が羽のように広がる。
舞い散る星屑は雪のように美しい。
白の風が渦を巻き、光が弾けた。
その中に現れた彼女は、まさに神話の戦乙女だった。
透き通る白の装甲。
星光を宿した槍。
背に展開する光翼。
レイラは静かに宣言する。
「――『純白の戦乙姫』。これが、私の星紋覚醒能力ですわ」
白い光が場の空気を支配し、誰もが息を呑んだ。
二重星紋=2色の星紋を持つ人のこと。色が増えると得意なことも増える٩( 'ω' )و
星紋覚醒=二重星紋を持つ者のみが行える覚醒状態(^_^)




