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防衛学園の相棒契約《エンゲージメント》  作者: 夢達磨
第1章 謎の転入生と白き戦乙姫

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第5話 対決! 相棒星繋式戦闘vs星廻軍人式戦闘


「きゃーっ! 生レイラ様をこんな近くで……感無量だぁ!」


 笑実が一人でテンションを上げている。その横で、歩夢たちに気づいたレイラが鋭い視線を向けた。


「逃げずに来たのね。あまりにも遅いから、逃げたのかと思ったわ」


「お前こそ、恥をかく前に逃げても良かったんだぞ」


 歩夢も淡々と返す。


「……生意気なお口ですこと。まあ、素直に来たことだけは褒めてあげますけれど。って――クリアさん? どうしてここにいらっしゃるの?」


「レイラさん、こんにちは。透導君に頼まれて来ました」


「記憶が戻るまでは安静にしていた方が良いのではなくて? それにこんな男の言うことなんて聞く必要はありませんわ。負けた腹いせにクリアさんに変なことをする気ですのよ」


「そうです! レイラ様の言う通りです!」


 レイラの隣で声を上げたのは、相棒のアルマ・フェルム――ラスターユ島に代々仕える守り人の血筋。


 淡い桃色のショートボブがふわりと揺れ、愛らしい瞳が輝いている。一見可憐だが、レイラと同じく筋金入りの男嫌いで有名だ。


「変なことって、なんだ?」


「そ、それは――」


 歩夢の真顔にレイラがたじろぐのを、アルマが畳み掛ける。


「そりゃあ、服を脱げとか、言うことを聞けとか、あんなことやこんなことまで決まってるでしょっ! ね、レイラ様!」


「そ、そうね……」


 無垢な笑顔に押され、レイラは咳払いして気を取り直した。


「さあ、あなたが来るまでに、こんなにギャラリーが集まってくれたわ。放送部と新聞部にも動いてもらったの。アルマ、準備を」


「はい、レイラ様。こんな男、さっさと潰して差し上げましょう」


「透導君、無理しないでね? 限界だと思ったら棄権してね」


「あぁ。いいウォーミングアップになればいいな」


 そして両者はフィールド中央へ歩み出た。


 レイラは右手を高く掲げる。歩夢もつられて同じ動作をした。


「いや、あなたはしなくていいのよ」


「そうか」


 そのやり取りの直後、放送が響く。


『今回のフィールドは、バージョン1にて対戦を開始します。バトルフィールド──展開』


 合図とともに戦闘館全体が変形を始める。


 床がせり上がり、光を帯びた巨大な円形フィールドが姿を現した。中央には学園紋章が燃えるように輝き、外周には赤と青の境界ライン。観客の息づかいに呼応するように、フィールドが微かに震える。


 外周にはセイヴィアが配置され、円形の戦場にはアセイラントだけが足を踏み入れる。


 そして、中央にカウントダウンが浮かび上がった。


5・4


「来なさい!」


 レイラの声と共に、何もない空間から武器が顕現する。



「すごいな。素直に驚いた」


2・1――0


 レイラが地を蹴り、白い光が尾を引く高速移動。武器に星導力が集まり、彼女は叫ぶ。


「『ホワイト・シューティング・レイ』!」


「『黒星の瘴気』」


 瞬間、白い無数のレーザーが歩夢を包んだ。

 直撃。

 爆ぜる光。


 ――だが。


 歩夢は微動だにしなかった。


「三位の実力はこんなものなのか? 正直がっかりだ」


「い、今のはただのウォーミングアップですわ!」


「そうか。それなら良かった」


 苛立つレイラは、武器を変形させる。


 杖と槍が融合したような優美な武器――《幾星槍いくせいそうースターロード》。


 三本の槍先が生き物のようにしなり、中心の刃には輝く魔力が収束している。


「消えなさい!」


 白のエネルギー弾が次々と発射される。しかし歩夢は避ける素振りすら見せなかった。


「その程度か? それとも、それが全力なのか?」


「う、うるさいわね! 武器を持たない相手って、戦いにくいのよ!」


 歩夢は背中の剣を掴もうとするが――空を切った。


「……そうか。武器は学園長のところか。じゃあ、試してみるか」


 左手に星導力を集中させる。黒い稲妻が走った。


「星紋模倣能力――『武器生成』、解放」


 空間が裂け、柄が形を成す。歩夢は掴み、引きずり出す。


 現れたのは一本の剣。

 白い刀身に走る一本の黒線――無駄のない、静謐な美。


「お前の名は……雪白せっぱくだ」


「武器生成? ありきたりですわね」


「これで本気を出せるか?」


「えぇ。本気で行かせてもらいますわ!」


 レイラは空へ跳ぶ。

 白金の軌跡を描きながら浮遊し、槍先に星導力を集中させる。


 広がった白光の円が、八つの光弾へと姿を変えた。


「そのふざけた態度……改めなさい!!」


 レイラが槍を突き出し、叫ぶ。


「逃げ場はないわよ! 『スターダスト・アセイラント』!」


 光弾がビームへと変わり、歩夢を囲う檻となる。


 逃げ場ゼロ。


 その中心に、光に包まれたレイラが突っ込む――


 轟音。

 閃光。


 観客が思わず目を覆うほどの爆発。


 しかし――


 吹き飛ばされたのは、レイラの方だった。


「くっ――あっ!」


 地面を転がり、槍が跳ねる。


「今の技は面白かった」


 歩夢は淡々とレイラに近づく。


「レ、レイラ様! 回復送ります!『スターライト・ヒーリング』!」


 アルマとレイラの指輪が光の糸で繋がる。

 星の粒子がレイラを包み、傷が塞がっていく。


「……ありがとう、アルマ」


「ほう。もう立てるのか」


「当たり前でしょう! これが私たちの誇り――『相棒星繋式戦闘』ですわ! 二人の絆が勝利をもたらすのよ!」


「それだとありがたいんだがな」


「今から見せますわ。あなたも驚く“本当の力”をね」


 歩夢は初めて、わずかに剣を構えた。


「星の加護よ、我が名に応えて――『星紋覚醒アストラルアウェイク』!』」


 レイラの足元から白金の光柱が噴き上がる。

 肌に星紋が浮かび、光が羽のように広がる。

 舞い散る星屑は雪のように美しい。


 白の風が渦を巻き、光が弾けた。

 その中に現れた彼女は、まさに神話の戦乙女だった。


 透き通る白の装甲。

 星光を宿した槍。

 背に展開する光翼こうよく


 レイラは静かに宣言する。


「――『純白の戦乙姫ホワイトヴァルキリー』。これが、私の星紋覚醒能力ですわ」


 白い光が場の空気を支配し、誰もが息を呑んだ。

二重星紋デュアルスターマーク=2色の星紋スターマークを持つ人のこと。色が増えると得意なことも増える٩( 'ω' )و

星紋覚醒アストラルアウェイク=二重星紋を持つ者のみが行える覚醒状態(^_^)

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