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8人目のワンダーズ その名もフグ!! アンコバン サガサカナ

ワンダーズの事務所はいつも賑わっているが、実は…れな、れみ、ラオン、葵、ドクロ、テリー、粉砕男に続く八人目のワンダーズが存在している。


その名も…フグ。


そう、フグ。



「ドクロちゃーん、フグちゃんにご飯あげてー」

キッチンで食器洗いをしながら、葵がドクロに声を掛ける。ドクロはリビングに向かい、テーブルの上に置かれたどこか場違いな魚の餌を手に取る。

そして、部屋の隅に置かれた水槽へと足を運ぶ。


その水槽には、黄色い髪に黒く、大きな斑点模様の小さな少女が、楽しそうに泳いでいた。

彼女こそがワンダーズの八人目、フグ。

ある日、ワンダーズが釣りをしていたら偶然釣れた、ただのフグだ。

ドクロが水槽に、粉末状の魚の餌を垂らすと、フグは小さな手でそれを掴み、食べ始める。ドクロはぼんやりとそれを眺めていた。

フグの役割はただ一つ。癒し担当。

観賞魚として、日々戦うワンダーズの癒しとなっていた。

彼女は喋る事ができないが、その眼差しはいつでもワンダーズを慕っている。可愛い存在だった。



尚、フグは水から出て陸地を歩く事もできる、最先端を行くフグだ。

ドクロは水槽に手を入れ、フグを両手ですくい上げる。

「葵、フグちゃんとその辺歩いてくるね」

「うん。いってらっしゃい」


彼女は事務所を出て、気晴らしに海辺にでも行こうかと考えていた。

テクニカルシティには小規模ながらもビーチが存在するのだ。







しつこい暑さが地上を照りつけるなか、フグを頭に乗せたドクロはコンクリートの上を歩いていく。

ビーチへの道のりはそう険しくないが、人通りが多い。その日は土曜日、そしてこの暑さ。海水浴日和だろう。

近づきつつあるビーチ。潮風がビルの隙間から流れる中、ドクロはフグに声をかけた。

「フグちゃん、泳ぐのは浅瀬にだけにして、アタシから離れちゃダメよ」

頭上のフグは頷くと…突然ドクロの頭から飛び降りた。



そして…これはまた突然走り出し、どこかに向かって走り出した。

「え!?!?ちょ、離れるなと言ったばかりでしょおおおお!!!!」

ドクロは慌ててフグを拾い上げる。小さなフグの歩幅に追いつくなど余裕だ。

フグは手のひらの上、頭を下げてくる。

謝っているのだ。

「分かれば良いけど…何で急に走り出したのよ!?」

フグはしばらくドクロの目を見つめると…ある方向に指をさす。


それは…ビルに囲まれた、小さな通路。路地裏ではない。何気ない狭い通路だった。

あるのは誰かが作業で使っているであろう木箱や、申し訳程度の自販機、ゴミ箱のみ。

何も無い場所だった。

…何も無いからこそ、フグが突然ここに向かおうとのも理由があるのだろう。

「…何かがあるのね。よし、調べてからビーチに向かいましょう」

ドクロは再びフグを頭に乗せると、歩み始めた。



その通路は静かだった。

小鳥すら近づかない、寂しげな場所。

危険な物や怪しい気配がある訳でもない。

不吉な場所でもない。ただただ、寂しげな場所…。

こんな所に本当に何かがいるのか…?

「フグちゃん、あなた、具体的にはここのどこが気になるの?」

フグは、右手でドクロの髪を弄って遊びながら、左手である方向を指さす。

指の先には…何の特徴もないコンクリートの地面があった。

ドクロはそこへ向かおうとするが…。


「え?」

フグはまた頭から飛び降りた。

しかし今度はドクロの前に立ち塞がり、首を横に降って両手を広げる。まるであそこに行く事を止めているようだ。

ドクロが止まったのを見ると、フグは目的のその地点を睨みつけ…小さな足で地団駄を踏む。



すると…。



「…わっ!!」

地面が揺れた。


硬いコンクリートの地面を突き抜け、何かが地中から姿を現す!



「も、モンスター!?」

足を広げた滑稽な姿勢のまま、ドクロは見た。

地面から現れたモンスターを。


その姿は…大きな口を持ったアンコウのようだった。

が、勿論ただのアンコウではない。アンコウからそのまま足が生えたような異様な怪物。

そしてその口の中には…!


「た、助けてくれー!!!」

緑色の魚のモンスターが捕らわれていた。その魚モンスターは口を利き、ドクロに手を伸ばしている。

ドクロは半ば反射的に飛び込み、拳を振り上げてアンコウモンスターの腹部を殴りつける。アンコウモンスターは口の中の魚モンスターを勢いよく吐き出した。

飛び出したモンスターを抱きとめるドクロ。

「大丈夫?」

「あ、ありがとうございます!気を付けてください、そいつはアンコバン。私はそいつに捕まって、地中で生け捕りにされてたんです!」

アンコバンは咆哮を放ち、その短い足でヨタヨタと突進。魚モンスターは「ひえっ」と、冷え切った小さな悲鳴を口にした。

ドクロは魚モンスターを下ろし、アンコバンの額に飛び込み、殴りかかる。

その反動で彼女は飛び上がり、宙で右手に魔力を集め始めた。

手先に黒い光弾が生成され、それを勢いをつけて投げ落とす!

アンコバンの前で爆発する光弾。爆発に巻き込まれたアンコバンは吹き飛ばされ、後ろのビルに衝突した!

白い瓦礫が散る。その瓦礫に隠れ、ドクロは更に接近、蹴りを叩きこむ。

アンコバンは呻き声をあげ、舌を上下に動かした。これだけの攻撃、ダメージは大きいだろう。


が、ここらでアンコバンの番のようだ。

大きな口が開かれ、その喉奥から、何かが飛び出してくる!

それは…透明な水だった。水と言ってもその水圧はかなりのもの。

直撃したドクロは後ろへ吹き飛ばされ、地面に衝突。

「くっ…アタシとしたことが!」

彼女は急いで立ち上がろうとするが、アンコバンの水は連射可能らしい。大きくのけぞり、更に水を吐き出そうとしてくる…!


しかし…!


アンコバンが水を吐き出したまさにその時。アンコバンは突如バランスを崩し、頭上に水を吐き出した!

その水は近くのビルの壁面を破壊するも、誰にもぶつからない。虚しく宙で輝き、そして消える…。


ドクロがアンコバンの足元を見る。

「…流石フグちゃんね」


そう、フグのお手柄だった。

彼女はアンコバンの短い足に両手でしがみつき、体勢を崩させていたのだ。

おかげでアンコバンに大きな隙が生じ、ついでに水は二連発が限界なのか、次弾を吐き出せないようだった。

「よしっ!」

ドクロは、両手を広げる。

その手の平には…黄色い稲妻が走り出した。


「死神仲間から教わった技をお見舞いしてやるわ…その名も、リーパーボルトっ!!」

手を突き出す!

同時に放たれる、荒々しい電撃!それはアンコバンにぶつかってその体を痺れさせる。

じわじわとした痛み…その上動けなくなり、アンコバンは明らかに混乱の動きを見せている。

更に…周囲に迸る稲妻が空中で一つの形を成していくのを、アンコバンは目撃した。


それこそがこの技の本撃。リーパーボルト。


稲妻が…鎌の形に変形。その鎌はアンコバン目掛けて容赦なく振るわれる!!


鎌が直撃すると同時に大電撃が走り出す…!

真昼でも分かるほどの、あまりにハッキリとした閃光だった。

そんなものに直撃したアンコバンはひとたまりもない。稲妻に押し上げれるように上空へと吹き飛ばされ、ビルより高い位置で一回転。

そして…垂直に叩き落される。

その時には稲妻は止んでおり、代わりに瓦礫が広範囲に飛び散った。




…全身黒焦げになったアンコバン。

先程までの凶暴さはどこへやら、目の前のドクロに臆し、ヨタヨタと逃げていった。



「…フグちゃん、ありがとう」

得意げに胸を張るフグ。一丁前に、小さな身体を大きく見せている。


ドクロは振り返り、あの魚モンスターにも目を向ける。


「…え?あんた、その姿がデフォルトなの?」

その魚モンスターは…両ヒレを地面につき、下半身部を浮かせるような奇妙なポーズをとっていた。

人間で言えば、逆立ちにあたるポーズ。

突然何のアクションを見せつけてきたのかと困惑した。

魚モンスターはここでようやく自己紹介した。

「申し遅れましたね…私はサカサガナ!魚人であります」

魚人。その名の通り魚類から進化したモンスターで、普段は海中に生息しているはず。

それがなぜ…そう聞く前に、サガサカナは自ら教えてくれた。


「私はですね。海の仲間達に自慢したくてここまで来たんです。地上に上がって、逆立ちを極めれば…[やつら]をあっと言わせられる、とね」


情報量が多すぎた。ドクロはフグを頭に乗せたまま、手を細めて唸る…。

海で暮らしてるモンスターが地上に出た理由が逆立ち?そして、やつら?


「…な、何か訳ありみたいね」

半ば思考を放棄する形で、その一言を口にした。そして両の拳を突き合わせ、半ば勢いのまま言ってしまう。


「もし何か困ってるなら、その、やつらってのに会わせて?」


「本当ですか!?」

正義の味方としては正解だが、ビーチに遊びに行く予定だった身としては完全に失敗の発言だった。頭上のフグは人助けができる事を喜んでいるのか踊りだしているが、ドクロの顔は微妙なものだった…。



続く

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