悪鬼狩人と共に悪鬼をやっつけるどお〜
ワンダーズと悪鬼狩人二人は、昔から多くの戦闘を共にしてきた仲間だ。主に悪鬼との戦闘を始め、モンスターや闇姫との戦闘でも協力しあってきた。
そして今回も…両勢力は手を取り合う事になる。
ワンダーズの拠点である事務所のインターホンが鳴る。
「…」
鬼子、火竜。
質素な玄関前で、棒立ち気味に歓迎を待っていた。
「はーい、どちら様…」
出てきたのは、黄色のツインテールをピンクの丸い髪留めで留めた少女…れな。
目が合うなり、れなの動きが止まる。
鬼子は、手を上げて軽く振る。
「よっ」
「鬼子おおおおお!!そして火竜ううう!!!」
れなは鬼子の顔めがけて飛びかかり、熱烈なハグを仕掛け…そのまま押し倒した。
事務所のリビングにて。
集まっていたワンダーズメンバーに、二人は悪鬼の出現を説明していた。
近頃、また悪鬼が活性化し、人々に危害を加えている事、そして先程…実際口散鬼が現れ、何か闇姫も出てきた事。
リビングに漂う、紅茶の香り。そこに、粉砕男の「うーん」という唸り声が加わる。憩いの香り、そして重低音に近い音が無邪気に入り混じる。
「悪鬼がまた暴れだしたのか。もしこの街にまだいるとしたら厄介だな」
「あ、はいっ!はいっ!」
勢いよく片手をあげたのは、れみだった。短い手を必死に掲げる様は何かの意思表明のよう。そんな彼女と目線を合わせ、火竜が微笑む。
「どうしたんだ?れみ」
「悪鬼なんだけどね…最近その辺で見たよ」
は?
全員の頭に、その一文字が浮かぶ。
どういうこと、と火竜が口にするより前に、れみはあまりにも淡々と話しだした。
「この前、公園歩いてたら、青い骸骨みたいなやつが歩いてたんだよ。骨格が鋭く尖っててね。滑り台とか壊してたけど、早くお姉ちゃんとゲームしたかったから無視しちゃった」
「無視すんなよ!!!」
火竜が突っ込む横で、鬼子は顎に指を当てて考えこむ。
その悪鬼の特徴…思い当たる存在が頭によぎる。
「その悪鬼は…凶暴鬼じゃないかしら?」
凶暴鬼。
最早名前のまま、凶暴極まりない悪鬼。
悪鬼の中でも特に危険な個体の一種とされており、口散鬼とは比較にならない程だ。
だが、力を合わせれば…倒せない相手ではない。
「凶暴鬼か…厄介な相手だな」
火竜は腕を組み、周りを見渡す。
仲間達の顔が、そこに並んでいた。
「…すぐに倒しに行くぞ!皆、俺についてきてく…」
「うおおお行くぞおおおお!!!」
火竜の言葉が終わる前に、既にれな、ラオンが玄関扉を破壊して外へ飛び出していった。
続けてドクロ、テリー、れみも後に続いていく。
葵、粉砕男だけが、風通しが良くなりすぎた玄関を、ただ見つめる。
まともなのが二人いるだけで、まだマシ…かもしれない。
「相変わらずで安心したわ」
鬼子の笑顔は、曇り無いものだった。
…そして、残されたメンバーも後に続き、地面に遺された無数の足跡を辿り、れな達を追いかけた。普通なら凶暴鬼の痕跡を辿るところが、ワンダーズと付き合うと仲間の痕跡を辿る事になるのだ。
激しく踏み刻まれた足跡を辿り、街を駆け抜ける。日々騒がしい事件が起きるテクニカルシティにおいて、走り回る鬼子達を気に留める者は誰一人としていなかった。
そして、辿り着いた先は…公園だった。
「や、やっと追いついたわ…」
膝に手を当てて息を切らす鬼子の前に、れな達が並んで何かを睨んでる。
そこにいたのは…まさにれみの話にあった通りの姿。青い骸骨だった。
骨格が鋭く尖っており、手には鋭い爪を生やしている。空洞の目と口も、怒りに満ちたような歪み方をしており、常に周りを威嚇しているかのよう。
間違いない。凶暴鬼。
先導していた仲間達は、今にも戦闘を開始せんと凶暴鬼を睨みつけていた。辺りに人の姿は無し、ただ、風に揺れるブランコあり。
凶暴鬼は、これまでも多くの街を破壊してきた非常に危険な悪鬼。油断ならない相手だが、力さえ合わせれば…。
「よーし!アタシ一人でやったる!」
…力を、合わせれば。
遅かった。
れなが勝手に前に出ていってしまう。
(あー…マイペースぶりも相変わらずね)
額に手を当てる鬼子。ラオンとドクロは盛り上がりを見せて拳を掲げてれなを応援している。
凶暴鬼は地面に爪を刺しこみ、獣のような声をあげる。
それに対するは、どこまでも理性的な拳法の構え。
「よし、来い!」
凶暴鬼が飛びかかり、れなに爪を突き出してくる!
れなは屈んでそれを回避し、凶暴鬼の真下へと回り込み…拳を叩きつける。
その一撃でやつを上空へと吹き飛ばし、大気が渦を巻き、周囲の砂や落ち葉を舞い上げていく。
空中でも凶暴鬼の勢いは留まる事を知らない。彼(?)は足場もないまま一回転し、今度は空中から爪を突き出して地上のれなを攻撃しようとする!
相手の動きを常に見続けるれな、その攻撃にも即座に対応を見せる。彼女は地面を転がり、あえてオーバーな動きでそれを回避。
凶暴鬼の爪が地面に突き刺さると…。
『うわっ!!』
何人かのワンダーズが、両手で顔を覆う。
砂が舞い上がり、公園全体の地面そのものが吹き飛ばされるような衝撃。遊具が根こそぎ引っこ抜け、空中を舞う。
今まさに遊ぼうとしていた子供達が、柵の向こうからその大惨事を見守っている。
「わー、凄いよあの骸骨野郎!」
「あのお姉ちゃんも強そうだよ!二人とも頑張れー!」
無邪気な声援。その声援が、れなの背中を押してくれる。
更に一歩踏み込み、拳を叩きつけ、凶暴鬼のペースを潰すように攻め込み続ける。
れなは先頭時にだけは頭は回る。凶暴鬼の行く先々に回り込み、凶暴性故に粗が出る攻撃の隙を突いて反撃を仕掛けていく。
とうとう凶暴鬼の足取りがおぼつかなくなってきた。体力を削り続け、凶暴鬼最大の武器ともいえる激しい動きにも乱れが見え始めたのだ。
「こちとら長年戦ってるんだよ。よっしゃ…!アタシの、勝ちだー!!」
れなは全力で足を突き出し、背後の大気を吹き飛ばし、凶暴鬼へとまっすぐに向かっていく。
ここへ来て、これまでの凶暴鬼の単純で一直線上の攻撃をお返しにかかるのだ。
消耗していた凶暴鬼に、その動きに対抗する力は残されていなかった。
全力で助走をつけたれなの拳が、その骸骨面に叩きつけられる!
「ギャアアアアアア!!!」
凶暴鬼は街樹の上を猛速度で通り過ぎ、街の中でも特に高いビルへと衝突、風穴を開けて空へと飛んでいった。
これで、本日二体目の悪鬼が空へと飛んでいった。ここから離れた島で、口散鬼と仲良くやってくれる事だろう。
「れな一人で何とかなっちゃったな」
火竜は両手を後頭部で組む。
口で言わずとも分かる。自分達が来る意味無かった、と半ば不貞腐れたような様子だった。
れなは手を振りながら、大声で何かを叫びながら勝利を謳歌している。
…しかし、やはり世の中そう甘くないようで。
「大変だー!!何か変なやつが出てきて暴れてるぞー!!」
背後から聞こえたその声は、一般人のものだ。
見ると、何やら黒い影が人々を襲い、建物を倒壊させて暴れまわってる。
「…もう悪鬼が発生したの!?」
葵がハンドガン片手に慌てふためき、その横では火竜が呆れたようなため息をつく。
「…そうなんだ。悪鬼の発生速度は蛆虫レベル。あと二百体はこの街に潜んでるな。ちなみにあいつらは戦略家だから、一体ずつ現れるぞ」
「…めんどくさっ!」
もっと戦える、とはしゃぎまわるれなとラオンを除き、全身が声を上げた。
鬼子が鎌に手を添え、火竜は腰を深く落とす。
「仕方ないな…やっぱり俺達、この街に留まるべきだな!」
「行くわよ!」
悪鬼出る所に狩人有り、彼らはこのテクニカルシティにしばらく縛られる事になるだろう。




