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新たな仲間 ショウ

光が差し込める王国があった。

黄金にきらめく建物が幾つも立ち並び、眩しいくらいの光を放出している。

太陽が、この王国を贔屓(ひいき)するように、他よりも強く日光を突き刺してくる。

にも関わらず、気温は最適。そしてこれだけの光があるというのに、鬱陶しい眩しさも感じられない。神聖ながらも、どこか矛盾した空間…それがその国。


その名も…光王国。


あまりにそのままな名前ではあるが、地球でもはじめに光の文化を信仰した王国である。今尚光を強く信仰するその王国。名前は光王国で十分だろう、という事で改名もされてない。


そしてこの広大な国の中でも、特に立派な建造物がある。


城だ。




「皆様、本日はお越し下さり誠にありがとうございます」

謁見の間。

赤い絨毯に、壁に細かく張り巡らされたステンドグラス。天井からは黄金に輝くランタンが吊り下げられている。そして色とりどりのシャンデリアが、その人物の頭上で輝いていた。

その人物…輝く金髪を肩の下まで流した美しい女性。


光姫。

この王国の姫君。

本名はミツユというのだが、光王国では古来より姫殿下は光姫の名で呼ばれる。

彼女を名前で呼ぶ事が許されているのは…。


「本当に皆、ミツユと私の依頼を聞き入れてくれた事、心から感謝しているよ」

光姫の横に立つ、黄金の髭を垂らした大柄な初老の男性…。

彼は光星王。光姫の父であり、この国の最高指導者。

多くの住人から深く信頼され、長年この国の平和を守り続けてきた、非の打ち所のない指導者たち。


そんな二人が本日、頼ったのが…。



「王様!光姫!本当に久しぶりだねええ!!」

とても権力者を前にしているとは思えぬ呑気かつ無礼な声が、平然とこだます。


黄色のツインテールを振り乱しながら立ち上がったのは…れな。

そしてその後ろから飛びかかる紫の髪…ラオン。

「アホおお!!何度言えば分かるんだ!!いい加減お辞儀の一つくらい覚えろやああ!!」

そう言いながらも、ラオンもまた礼儀の欠片もない荒れ狂いぶり。

騒がしい二人を両手でなだめる光姫。

「まあまあラオンさん。私達、長いお付き合いではないですか。仲良くしましょう!」

そう。この光王国とワンダーズの付き合いは長いのだ。光姫と光星王の、相手の態度をさほど気にしない穏やかすぎる性分もあって、今では友人同士のような関係性。

大急ぎで土下座するれなに、光姫は優しく手を差し伸べてくれた。

「顔を上げてください。むしろ今回頭を下げるべきなのは私達なのですから」





れな、ラオンは椅子に座り、固すぎず、崩しすぎずの態度で光星王の声を聞いていく。

「君達に探してほしい人物がいる。それは…ミツユの弟、つまり私の息子だ」

「え?光姫って弟いたんですか?」

れなが身を乗り出す。付き合いは長いが、そんな話は聞いた事がなかった。

「そう。息子…ショウは、光王国の未来の為に、しばらくの間、修行に出ていたのだ。強くなった姿を私達に見せてくれるはずだったのだが、突然連絡が途絶えてな…」

光星王の声がだんだんと小さくなる。顔も俯き、厳格な顔つきが力強さを失っていく。




「そこで、私とミツユがショウを迎えに行こうと思っている。大変申し訳ないのだが、君達には私達が不在の間、王国を守っていてほしいのだ」

「あ。アタシらが探しに行くパターンではないんですね」

ラオンが呟く。正直拍子抜けしていた。


「…はずだったのだが」

光星王が声のトーンを落とす。

自身の腰に手を添える妙な動きを始めた。

「実は先日、魔術師の奇襲を受けてな。そいつに魔術をかけられて、このところ腰の調子が悪いのだ。更にその魔術師によれば…私は二十四時間以内、この城から出れば…全身の骨がバラバラになって死ぬと…」


『えっ』

二人が声を揃え、ミツユも俯く。

まるでショウを迎えに行かせないよう仕向けられたようなその魔術師…。そいつのせいで、光星王はその場から動けないらしい。

今度は光星王がこちらに頭を下げてきた。そして、泣きつくような…王とは思えぬ声で改めて懇願する。

「本当に、ほんっっとうに申し訳ない!!父親である私が動けないなど…一生の不覚!!君達ワンダーズ、そしてミツユの三人で、ショウを迎えに行ってほしい!!」





…という事で、れな、ラオン、ミツユこと光姫の三人で、現在岩山に来ている。光王国のすぐ隣に聳える場所だった。一応ショウはすぐ近くに来ていた訳だが、後少しのところで連絡が途絶えたのだという。


光姫は美しい黄金のドレスをなびかせ、乱れぬ気品を保ちながら前へ前へと進んでいく。登り坂が続くこの山…すぐ横を見れば、既に光王国の街並みが見えている。

(あー、結構進んだなー。ショウ大丈夫かなー。お腹減ってそうだったら、アタシの髪でも食わせてやるか)

適当に考えながら、れなは後へ続く形でラオンと光姫の後からついていく。


そして、広場のような場所に到着。

ここで三人は足を止めた。

光姫は辺りに立ち並ぶ岩石を一望。

ここへ来るまではこの岩山の高さなり光星王のゴルフの話なり、何気ない世間話を続けていたのだが、この広場に到着した瞬間、三人は沈黙した。


強い力を感じたのだ。

「何か、来ます。お気をつけて…!」

光姫の言葉で、れなとラオンは腰を落とし、身構える…。




突然、一際高い岩が砕けた!



目を向けると…そこから、滑るように二つの影が現れた。


一人は、黒いローブを纏った長身の魔術師。だが人間ではない…なぜなら、腕が…十二本も生えている!

右手、左手がそれぞれ六本ずつ。そしてその顔は、目も鼻も口もないのっぺらぼう…。

そしてもう一人。

金色に輝く髪の少年…それも、かなり幼い。

年端もいかぬ少年が、異形の魔術師と共に滑り出してきたのだ。エメラルド色のマントを羽織り、同じ色の貴族じみた服を着ている。

光姫が彼を見て叫ぶ。

「ショウ!!」


彼こそがショウ。想像以上に幼かった。

ショウは岩の地面の上に着地し、回転して姿勢を整えると、光姫の方に向き直る。

「お、お姉様!?何でここに!?」

光姫はそれに答えずにショウの横に立つ。

目の前の魔術師は無数の腕を構え、青い魔力光を灯していた。

「おや、小僧の姉貴が来やがったか。観念してその小僧を俺に渡しな!」

魔術師の手から放たれる光線!


が、れなとラオンが素早く前に出て、拳、そしてナイフで光線を弾き落とす。

「ん…俺の魔術を跳ね返すとは」

魔術師は面白そうに笑う。

光姫はショウの前に手を伸ばす。

「なぜ私の弟を狙うのですか…!」

「簡単だ。そのガキ、キラキラ光ってて綺麗なんだよ。だから捕まえるんだよ…。玄関に飾って毎日拝んでやる為にな…!」


(なんじゃそれ)

ラオンは内心で深く呆れた。

魔術師は手を振り下ろす。すると、今度は岩の地面が砕け、無数の瓦礫が飛んでくる!

全員が後ろに飛び跳ねて攻撃をかわす。鋭利な岩石が皮膚を掠めるが、この程度どうという事はない。

魔術師は三本の手から光線を放ち、二本の腕で光弾を発射してくる。腕同士が連携をしているような、手数攻めの嵐。岩が砕け、そこら中に破片が刺さる。時には深い地層の土すらも飛び出し、皮肉にも質素な岩山を鮮やかに彩っているようだ。

れなは一瞬の隙を見つける。その一瞬で、彼女は深く踏み込み、光線を避けられる軌道を見切る。

「…このタイミングなら!」

アンドロイド特有の判断力。彼女自身のIQはともかく、機械の体の本能に刻まれたその正確性は、魔術師の顔面に瞬時に狙いを定めた。

「くらえ!」

岩の地面を蹴り、急加速、魔術師の顔面に、拳を叩きつけた!!

その痛みは、魔術師にとって久々に感じる程の、強烈なものだった。魔術師の腕が真上に向かってピン、と伸び…ゆっくりと仰向けに倒れこむ。

それでも尚、彼は諦めなかった。

「く…うぐっ…」

一本の手で顔を押さえ、他の手に魔力を集める。青い魔力が集中し、その場の全員を狙い始めた。

ラオンがナイフを構え、トドメを決めようとしたが…。


「ボクに任せてください!!」

幼くも、気迫ある声が響く。


ラオンの横から飛び出したのは…ショウだった。

彼は、今まさに光線を放とうとしている魔術師にも怯える素振りを見せず、急速に距離を詰め…魔術師の顔面へ蹴りを打ち込んだ!

よろめく魔術師。すかさずショウは、目にも留まらぬ速さで動き始める。

魔術師の全身を打ち付ける、不可視のショウの拳。ローブが引き裂かれ、無数の腕同士を叩きつけられ、意外にも荒々しい攻撃の数々。

「こ、このガキ…案外やるじゃねえか…」

魔術師はユラリと、風に煽られるように揺らめき…倒れ込んだ。


気づけば、倒れた魔術師の前にショウが立っていた。


彼は一息つくと…体ごとこちらに振り返り、姿勢を正す。

「お姉様、そして皆さん。助けに来てくださったのですね!ボクの名はショウと申します。この度はお助けくださり、本当にありがとうございます!!」

九十度体を傾け、頭を下ろすショウ。




それからの下山はあっという間だった。帰りのほうが早く感じるとはよく言ったものである。

城へと帰り、光星王とショウを再会させた。


「ショウ…!」

謁見の間にて、やむを得ず城に引きこもっていた光星王は、ショウの無事の姿に胸をなで下ろし、同時に懺悔の念すら胸に抱いた。王としての責任感が、深く胸を抉る。

「本当に申し訳なかった…。私は…王という立場でありながら…」

「いえいえ、何を言ってるんですか王様!ショウ君も無事だったし、喜びましょうよおお!!」

れなが手を振る。彼女の呑気な面は、こういう場面では逆に場を和ませる効果もあるようだった。

光星王の表情が少し緩まる。

「…ショウが帰ってきてくれたおかげで、光王国はより強固かつ豊かになるだろう。彼はこの国の、輝ける王子なのだから」

ショウは、改めて頭を下ろす。


とんでもなく礼儀正しい、新たな仲間だった、




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