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深海体操部

ビーチ…そこには、既に多くの海水浴客が集い、賑わっていた。

まさしく海水浴日和。真夏の日差しが海面、砂浜、そして人々の肌を激しく照りつける。

暑さから逃れるように、人々は冷たい海水へ身を投じ、その冷たさに身を震わせつつ、それを楽しむ。


家族連れにカップル。多くの歓声が、この楽園を明るく彩る。


そんな中で、神妙な面持ちで現れた三人(?)の影。


ドクロ、フグ、サガサカナ。

サガサカナは相変わらずヒレで逆立ちした妙な姿勢のまま、海を見渡した。

「ここです。ここに、厄介なやつらが隠れてるのです」

ドクロは一通り辺りを見渡す。

楽しそうな人々が遊び回ってるばかりで、何もおかしなところは見られない。

ビーチボールが転がり、それを追いかける子供。浜辺にはカップルが水しぶきをかけ合う様子が見え、羨ましさすら感じさせる。

が、ドクロもワンダーズの一人。

知っているのだ。こんな平和な場所程、危険な存在は好んで身を隠すという事を。


頭上のフグが、ドクロの頭を軽く叩く。

「どうしたのフグちゃん?」

フグはドクロの手のひらに降り、ある方向を指さした。


その小さな指が必死に示す先。

沖合の方だった。

となると、予想していた通り…海のモンスターが隠れているのだ。ドクロがそこを睨むと…。

海面から、四つの柱が聳え上がる!

それぞれの柱は激しく水を撒き散らしていく。周囲の海水浴客達も、自分達が放った覚えのない水飛沫に意識をとられ、その方向へ目線をやり、たちまち逃げていく。


そして…飛沫が吹き立つにつれて柱は小さくなり、やがて中から何者かが姿を現した!


「や、やつらです…!」

サガサカナが怯えた声をあげた。


現れたのは…四人の魚人だった。

赤、青、黄、紫の鱗を持っており、全員が白い体操服を着ている。筋肉に恵まれた体型をしており、やたら唇が太い。



『我ら、深海体操部!!』


その見事なハモリ声は、周囲の波の音をたちまち消し飛ばす。彼らは海面に浮きながら、ポーズを決めた。

深海体操部。それがこの奇妙な四人組の名前のようだ。

予想外の面子の登場に反応が遅れてるドクロ。そんな中、赤い個体はサガサカナにヒレを向けた。

「君!!!見事な逆立ちじゃないか!!!そこまで見事なアクション!!!三十年前に見たオオメジロザメ以来だ!!!!」

サガサカナは一心乱れぬ逆立ちのまま近づいた。

「…ええ。あなたたちに負けない体操を目指して、私は日々特訓を繰り返してきたのです!」


どうやら、ドクロが思っていた程深刻でもないらしい。

サガサカナはこの体操部に、体操部門で打ち勝つ為に逆立ちをしていたのだ。



が、同時に。

深刻でないとはいえ、ただの魚が地上で逆立ちを極めるなど、並大抵の努力では足りないだろう。

…どうやってエラ呼吸を克服したのかは謎だが。



とにかく、サガサカナなりに努力して、あの奇妙な連中に打ち勝とうとしていたのだ。この勝負、見届けなくてはならない。

赤い個体は胸を張り、鱗の下から見える大胸筋をアピールした。

「なるほど!!!良い!!!我らの相手をするに相応しい!!!」

彼はヒレの先にある指のような部分を動かし、パチン、と音を鳴らした。

周囲にいる他のメンバーが集まり、またもやポーズを決め、順番に名乗る。

「我、アオイサカナ!」

「我、キイロイサカナ!」

「我、ムラサキサカナ!」

「そして…我、アカイサカナ!」

『我ら!!深海体操部!』




海水浴場を静まり返らせる声。

やかましく、水をも温くするような熱気が宿っている。


ドクロは一言呟いた。


「色違い個性無くない?」




サガサカナは、ポーズを決める彼らのもとへと飛び込んでいく。波打ち際をヒレだけで進み、水中に潜っていく。奇妙なモンスターの潜水に、周囲の人々は慌てて距離を置いた。

深海体操部はポーズを決めたまま待っている。

サガサカナは水中に全身を投じ、胴体(?)から力を抜き…折れるような動きで、一般的な魚の姿となる。アカイサカナは二回頷き、海面に身を浸し始めた。他三体もそれに続く。

一気に魚らしい姿になった一同。ドクロは砂浜に腰掛け、両手にフグを乗せて観戦する。他の海水浴客達も、自分達が泳ぐのも忘れて砂浜に上がり、タオルで体を拭きながら視線をモンスター一同へ集中させた。


(そういえば、どういう勝負をするのかしら)

ドクロは色々と妄想していた。

サガサカナは逆立ちを練習していたし、深海体操部は先ほどからポーズをよく決めている。となると組体操だろうか?

未知の種族が楽しくポーズを決め、人間界を盛り上げる。何とも滑稽で、平和な時間になりそうだ。


…と思っていたのも束の間。


「では!!!!これより!!!!向こうに見えるあの島まで競争する!!!」

アカイサカナが叫ぶなり、唐突に始まった。

荒波をたてるような、壮絶な水泳が。


「うおおおおお!!!」

白と青の水の壁が、激しい飛沫と共に打ち上げられる。人々は一気に歓声をあげ、海水浴場の監視スタッフも予想外の事態に手が出せない様子。

ドクロもただただそれを見つめ、フグは何故かまた頭上で踊りだして…。


そして、サガサカナが更に勢いをつけて泳いだ時。

水の塊が飛んできた。

「えっ?ぎゃっ!!」

ドクロにぶつかる水。その水圧弾の威力は猛烈で、ドクロとフグを吹き飛ばし…。

空高く舞わせる!

何が起きたのかも分からず、無言で回転する。

ドクロは目を回しながら勢いに全身を任せ、フグはこの状況下でも踊ってる。


地上へ落ちていく二人…。人助けならぬ魚助けをしたにも関わらず、海から追い出されてしまった。



都合よく、事務所前に頭から墜落する。



「あ、ドクロちゃんおかえり。フグちゃんも」

扉を開ける葵。

ドクロは、コンクリートの地面に頭を突っ込んだまま、足を震わせていた…。



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