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乙女ゲームの転生悪役令嬢に生まれ変わって破滅するなんて絶対に嫌なので向こうをまずは地獄に突き落とす〜ヒロインを崇拝してるようだけどこちらにとっては邪魔なだけなので退場してもらいます〜

作者: リーシャ

目が覚めたら、悪役令嬢セレフィア・アークライトになっていた。


前世ではごく普通の人間。


それがどういうわけか、乙女ゲームの登場人物に転生するなんて。


よりにもよって主人公をいじめ抜き、最終的に破滅する運命の悪役令嬢だなんて、冗談でしょ。


このゲーム、ストーリーは至ってシンプル。


どこにでもいる平凡な少女が、たまたま学園に転入してきたところから、物語は始まる。


その少女、モエリーヌこそが、この世界のヒロイン。


モエリーヌは、特別な能力も、飛び抜けた美貌もない。


なのに、なぜか周りの男たちを次々に虜にしていく、恐ろしいほどの人たらし。


婚約者であるはずの第一王子ガーレスは、モエリーヌが転んで膝を擦りむいただけで、まるで世界が終わったかのように心配する。


セレフィアとのデートを、その場でドタキャン。


学園の生徒会長で、冷静沈着なはずの公爵子息ランディは、モエリーヌが困っていると知るや、これまで築き上げてきた、完璧な計画をあっさり反故にするし、彼女の味方につく。


近衛騎士団の隊長で、最強の剣士と謳われるガイウスに至っては、モエリーヌのために命を投げ出すことも厭わないほど、盲目的に彼女を慕っている。


ゲームの記憶が蘇るたびに、無性に吐き気がした。


こんな男たち、本当に理解できない。


ヒロインが少し微笑んだだけで、自分たちの立場も、プライドも、何もかも捨ててしまうなんて。


デレデレしすぎ!


最初こそ、原作通りに破滅しないよう、モエリーヌとは距離を置こうと努力した。


モエリーヌはどこまでも無自覚な魔性。


彼女が困った顔をするだけで、男たちは邪魔をしてくる。


「セレフィア様、モエリーヌ殿にこれ以上ご迷惑をおかけするのはおやめください」


ランディが、冷たい視線を向けてそう言った。


まるで悪者だとでも言いたげに。


愚者はそっちなのにね。


「あなたも、モエリーヌ殿の輝きに気づいていないだけでしょう」


ガーレスは、私とモエリーヌを比較するように、そう言う。


「はあー」


もう我慢の限界。


「結構。ならば、私がこの物語を書き換える」


破滅する悪役令嬢?


笑わせないでほしい。


どうせ破滅するなら、道連れにしてやる。


ヒロインに転がされるだけの操り人形のような男たちに、痛い目を見せてやろう。


心の中でニヤリと笑った。


最初のターゲットは、婚約者であるガーレス王子。


モエリーヌがちょっと困った顔をするだけで、婚約者との約束を簡単に破る。


そのくせ、王位継承権を持つ立場を鼻にかけている。


プライドをズタズタにしてあげようかな。


腕を組んだ。


ガーレスは、王宮内の派閥争いに頭を悩ませていた。


特に、反対派の貴族たちが力をつけ始めていることに、焦りを感じているようだったので、情報を手に入れて、とある策略を練る。


まず、ガーレスに、ある重要な秘密情報を漏洩させておく。


反対派貴族たちの不正を暴くための、決定的な証拠となるもの。


情報は偽物だけどね。


「ガーレス様、わたくし、ある筋から興味深い情報を手に入れましたわ。もし、これが真実ならば、殿下の地位は盤石になるかと」


優雅に微笑み、偽の情報を彼に渡した。


彼は目を輝かせ、まんまとその情報に飛びつくけど、真偽を確かめもせずに、すぐにその情報を元に反対派の貴族たちを告発。


結果は、惨敗。


偽情報だったため逆に名誉棄損で訴えられ、彼の信頼は地に落ち、王族としての威厳も、プライドも、ズタズタ。


「セレフィア! なぜこんなことを!」


怒りに震えるガーレスに、冷たい視線を向けた。


「なぜ、ですって? 殿下は、いつもモエリーヌ殿のことばかり。わたくしのことなど、目に入っていなかったのでしょう? これが、殿下がおろそかにした代償です」


彼の顔は、絶望に染まっていた。


祝杯はまだ空けない。


次に狙うのは、ランディ生徒会長。


彼は、冷静沈着で頭が良いとされているけれど。


モエリーヌが絡むと、途端に判断力が鈍る。


彼の弱みは、家族。


ランディの父親である公爵は、実は裏で不正な取引に手を染めているという噂があった。


その噂を徹底的に調べ上げ、確固たる証拠を手に入れる。


もちろん、モエリーヌには知られないように、完璧に隠蔽された証拠。


なんでも証拠は残るもの。


ランディを呼び出した。


「ランディ様。わたくし、少々貴方の家の秘密を知ってしまいましたの」


ランディの冷静な表情が初めて崩れた。


「何を言っているのですか、セレフィア様」


「ご自身の目で確かめてみてはいかがです? もし、これが世間に知れ渡れば、公爵家は終わりですわね」


証拠の品をちらつかせれば、彼の顔は、見る見るうちに青ざめていく。


「あなたは何を望む?」


彼が絞り出すような声で、そう尋ねた。


話が早い。


「簡単なことです。モエリーヌ殿から離れてください。わたくしが困った時には、必ず手を貸すと誓ってくださいね」


ランディは、苦渋の表情を浮かべながらも、最終的には要求を呑んだ。


彼の家族を守るために、彼はモエリーヌを見捨てることを選ぶ。


彼の背中を見送りながら、満足げに微笑む。


最後のターゲットは、ガイウス隊長。


彼は、モエリーヌのためなら命すら惜しまないという、最も盲目的な男。


彼の正義感を利用して、彼を奈落の底に突き落としてやろう。


ガイウスは、騎士としての正義感が非常に強い。


不正を何よりも嫌う。


正義感を逆手に取ることにし、王宮内で密かに計画されていた、ある横領事件の情報を手に入れた、という罠。


その事件は、王族の一部も関与している、非常に複雑でデリケートなもの。


事件の黒幕が、まるでモエリーヌの親しい友人であるかのように、仕立て上げた。


ガチガチの偽装だ。


「ガイウス隊長。信じられないことですが、モエリーヌ殿の親しいご友人が、このような不正に手を染めていると聞いておりますわ」


悲しげな顔でガイウスにそう告げたれば、彼は激しく動揺した。


まさか、聖女のようなモエリーヌの周りに、そんな人間がいるとは信じられない、と。


「真実を、ご自身の目で確かめてください」


偽の証拠を彼に渡した。


彼を信じ込ませるために、巧妙に作り上げた完璧な偽証。


彼は、自分の目で真実を確かめると言って、その証拠を元に捜査を開始。


ガイウスは、持ち前の正義感から、事件の真相を深く追求したが暴き出したのは、仕組んだ偽りの真実。


結果として、彼は王族をも巻き込む不敬罪に問われることになる。


「ふふ」


「セレフィア様、なぜこのような真実を…」


牢獄に繋がれたガイウスは、恨めしそうに見つめる。


彼の目は、正義感に燃えていた頃とは違い、絶望に満ちていた。


「真実など、いくらでも作れるものですわ。それに、貴方はモエリーヌ殿のためなら、何でもするとおっしゃっていたでしょう? これもまた、モエリーヌ殿の身の回りで起きたことですわね」


冷酷に言い放ち、その場を後にした。


ガーレスは権威を失い、ランディは家族のために沈黙し、ガイウスは牢獄に落ちた。


モエリーヌをデレデレと甘やかすどころか、自分の身を守るのに精一杯。


今頃になってモエリーヌは、当然のように困惑していた。


今まで自分に優しかった男たちが、誰も助けてくれなくなったのだから。


彼女は恨めしそうに見つめるが、もうどうすることもできない。


なにか、彼らから聞いていたりするのかな。


彼女の周りには、誰もいなくなった。


「セレフィア様、なぜこんなことをなさるのですか?」


モエリーヌは、今にも泣き出しそうな顔で私にそう尋ねた。


「なぜ、ですって? 貴方があまりにも無自覚だったからです。貴方は、周りの人々の気持ちを踏みにじり、自分勝手に振る舞っていた。その報いです」


最高の笑顔でそう答えた。


乙女ゲームの悪役令嬢は、こうでなくちゃ。


破滅する運命。


ふふ、変えてやったわ。


この世界は、もう自分のもの。



男たちを陥れた後、生活は、以前にも増して輝きを増した。


ガーレス王子は、信頼を失って王宮での発言力をほとんど失い、公務から遠ざけられたという。


ランディは、家族の秘密を盾に取られ、言いなりに動くしかない操り人形。


ガイウスは、牢獄で過去の栄光を悔いているだろう。


モエリーヌは、助けを求めてきたが、冷たく突き放した。


「貴方がこれまで甘えてきた男どもは、もう貴方を助けることはできません。これからは、貴方自身で何とかするしかありません」


彼女は泣き崩れたが、何の感情も抱かなかった。


自業自得だ。


今まで、無自覚に他人を振り回してきた報いを受けるのは当然のこと。


本当に欲しかったのは、単なる復讐ではなかった。


このゲームの世界で、自分の人生を、自分の手で自由に切り開くこと。


ランディを使い、これまで彼が築き上げてきた情報網と、裏の繋がりを全て掌握。


これにより、国の経済状況、貴族たちの動向、果ては隣国の情勢まで、あらゆる情報が、集まるようになった。


ガーレスの失墜により、第一王子の座は空席に。


王位そのものには興味がなかった。


影からこの国を操る真の権力者になる方が、性に合っているし。


表向きはこれまで通りの公爵令嬢として振る舞った。


ランディを使い、国の重要な政策決定に影響力を与え、自分に都合の良いように法律を改正させ、新たな税制を導入。


貧しい者には施しを与え、私に忠実な貴族には優遇措置を与えることで、着実に支持者と信頼を積み上げていった。


過去、罵倒した貴族たちは、今では媚びへつらい、許可なくしては何もできない存在と化す。


彼らの顔を見るたびに、心の中で冷たい笑みがこみ上げてくる。


やった、と心が湧き上がっていく。


モエリーヌは、学園を卒業した後、どこか遠い田舎に嫁いだという噂を聞いた。


それはそうなる。


あれだけやらかした女の末路。


彼女の周りには、もう誰もいない。


男たちを虜にした輝きは、すっかり失われてしまったようだ。


人々は冷徹な知恵を持つ淑女と噂する。


それは畏怖と期待の表れなのだと、思っておいてあげよう。

⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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