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1−6:ホワイトキャットの受付嬢


「それでは、エリオス様、ティアナ様! 順番に、こちらの玉に触れてくださいますかニャ!?」


 そう言いながら、ホワイトキャットの受付嬢ミウがカウンターの下から取り出したのは……木台が付いた透明な水晶玉だった。人の頭ほどの大きさがあるそれは、パッと見は綺麗なガラス玉のようにしか見えないが……。


「これは、なんだい?」

「"レベルゲージ"というアーティファクトですニャ! これに触れると、なんと現在のレベルを測定することができますニャ!」


 長い尻尾を立てて揺らしながら、ミウが機嫌良く説明してくれた。

 こういうダンジョン産の特殊な効果を発揮する道具を、僕たちは"アーティファクト"と呼んでいる。アーティファクトは数を揃えるのは難しいが、その分高性能な物が多いため、今やアーティファクト無くしては成り立たない事も多い。

 ……ただし。


「え、でもレベルゲージって、板状のアーティファクトだったと思うんだけど?」


 そう、僕も家で何度かレベルゲージを見たことがあるし、なんなら一昨日使ったばかりなのだが……それらは手のひらサイズの、薄い板状の物ばかりだった。ガラスのような材質をしているのは同じでも、目の前のレベルゲージとは似ても似つかない形状をしている。


「ふっふっふっ。エリオス様が見たそれは、使い捨てタイプのレベルゲージなのではありませんかニャ? こちらのレベルゲージはなんと回数無制限、何度でも使えてしまうんですニャ!」

「え、そうなの?」


 レベルゲージって2種類あるのか、全然知らなかったよ。アーティファクトとは奥の深いものなんだな。

 ……ちなみに、前世の僕(ドグラス)は魔法の専門家ではあったものの、アーティファクトやマジックツールについては基本的な知識しか持っていなかったようだ。晩年にゴーレムの研究を始めた際、関連するアーティファクトやマジックツールを多少参考にした程度らしい。全く興味が無いわけではないが、分野が違うので必要であれば学ぶ……といった程度のスタンスだったようで、あまり知識の深掘りはしなかったようだ。


「というわけで、気にせずじゃんじゃんご利用くださいニャ!」


 ミウがそう言うのであれば、遠慮なく使わせて頂こうかな。


「………」


 そっと、水晶玉(レベルゲージ)に手を触れる。これでしばらくすると、使い捨てタイプのレベルゲージの場合は板に数字が刻まれるのだが……。


――ポンッ


 水晶玉の場合は、数字が玉の中に浮かび上がってくるようだ。その数字が"8"ということは、これは僕がレベル8ということを示しているのか……ん、あれ?


「確か、エリオス様は10歳でしたかニャ? 10歳の男子としては、破格の高さですニャ。たくさん努力されたんですニャ〜」

「あ、ああ……」


 一昨日に測定した時は6だったけど、一気に2つもレベルが上がっている。いくら元のレベルが低いとはいえ、モンスターと戦ったわけでもないのに普通ならあり得ないことだ。

 ……もしかしなくても、前世の記憶が蘇ったことが理由かな? たったあれしきのことで、鍛錬1年分くらいの経験値を簡単に得られてしまうのは……確かに嬉しいは嬉しいけど、ちょっとだけ空しさを感じるのもまた事実ではある。


「はい、これがギルドカードですニャ! 無くさないように持っているのですニャ〜」

「ありがとう」


 ミウから、灰色っぽい金属製のカードを受け取る。その表面を見てみると、名前とレベルが刻印されていた。大きさはかなりコンパクトで、ちょうど内ポケットに入りそうだったので大事にしまっておく。


「では、次はティアナさんですニャ!」

「は、はい!」


 続けて、ティアナがレベルゲージの前に立つ。水晶玉にそっと手をかざすと、僕と同じく"8"の数字が玉の中を踊った。


「うーん、ティアナさんは11歳と聞いていますニャ。女子でこのレベルはトップレベルに高いですニャ〜。ソリス家の関係者はメイドさんも戦えるんですかニャ?」

「うーん、どうだろう? 武門の家系だから、全く戦えないってことはないと思うけど……」


 ミウの何気ない一言に、曖昧な答えを返したけども……実は、ソリス家には戦うメイド・バトラー部隊が本当にいるのだ。

 構成員は計6人、男性3人に女性3人だ。全員が整った顔立ちをしており、上位貴族も参加するような格式高いパーティに入っても、なんら遜色の無い容姿を持つ。また所作も洗練されており、普通に僕よりもマナーには詳しい。

 それでいて全員が暗器の扱いに長けており、要人警護の技術も身に付けた武闘派たちだ。1人1人の実力は、"王家の影"と呼ばれる王家直属の隠密に勝るとも劣らないほど高いらしい。

 ……というか、実際に王家から要請を受けて王族警護にも参加したことがあるらしい。王家の信頼すら勝ち取るほどの練度を誇る、ソリス家きっての精鋭部隊である。


 ちなみに、食堂で僕をティアナから引き継ぎ、席まで案内してくれたメイドがその隠密部隊構成員の1人だったりする。一般兵100人に匹敵する戦闘力の持ち主ばかりだけど、普段はそれを隠しているわけだ。


「私、エリオス様と同じレベルですね。嬉しいです、一緒に頑張りましょう!」

「もちろんだとも」


 ミウからギルドカードを受け取りながら、ティアナが笑顔を見せてくれた。


「さて、これで探索者登録は完了ですニャ。ダンジョン基礎講座は受けていかれますかニャ?」

「あ、そっちは大丈夫だ。勉強は事前に積んであるから、後は実践あるのみだからね」


 探索者ギルドは、間口がとても広い。僕のような貴族の3男坊以降が探索者になることがあれば、スラム街の孤児が探索者になることだってある。

 ……そして、何も知らない孤児が探索者になったとて、そのままでは無為に命を散らすだけだ。ダンジョンはそんなに甘い場所ではないのだから。

 そのような悲劇を防ぐために、探索者ギルドは新しく探索者になった者向けにダンジョンの基礎を教える講座を用意しているわけだ。この講座が開かれた後の新人探索者の死亡率が1割以下に激減したというのだから、効果のほどが伺えるというものである。


 ただし、ダンジョン基礎講座はこれまでの人生で、学びの機会を得られなかった新人探索者のためのものだ。ギルド側もそれなりの労力をかけて教えているので、僕のような者は逆に居てはいけないし、空気を読んで普通は参加しないものだ。

 そのことは、ミウがあからさまにホッとした表情を浮かべたことからもよく分かる。規則なので全員に聞かなければならないし、参加を希望されたら受け入れる必要もあるのだが……まあギルドとしては普通に迷惑なので、仮にゴリ押ししたところで印象が悪くなるだけで、僕が得られるものは何も無い。


「よし、待たせたね、みんな。早速だけど、アルカディアスダンジョンに潜ろうか」

「エリオス様と一緒なら、どこにでも行きます!」

「賛成で〜す」

「……行きましょう」


 三者三様の言葉で返事をしてくれたが、全員が僕に賛同してくれた。

 ……さて。実はアルカディア王国、王都アルカディアスの中心部近くにダンジョンがある。名はそのまんま"アルカディアスダンジョン"で、探索者ギルドのすぐ隣に併設されている。

 そしてこれが、僕とティアナにとっての初ダンジョンだ。とても緊張するが、今まで学んだことを忘れないようにしなくてはな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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