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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~  作者: SUN_RISE
第1章:大魔法剣士の覚醒

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1−32:遭遇


――な……して……!…

「……うん?」


 第4階層から第2階層を無事に通り抜けて、第1階層へたどり着く。そうして、ちょうど第1階層のボス部屋の前を通ろうとした所で……ボス部屋の中から、何やら声が聞こえてくることに気付いた。


――き……ら、………もき……!?

――キン……キン……

――ぐあ……


 耳を澄ませてよく聞いてみると、誰かの怒号と金属を打ち付けるような音が聞こえてくる。かなり厳しい言葉が飛び交っているので、探索者側は苦戦しているみたいだ。


「うーん、どうしたんだろう……?」

「なんだか苦戦してるみたいっすね」


 ダンジョンの壁や扉は、絶対に壊すことができない。ボス部屋の扉もそれは然りで、どちらかが全滅するまで出入りすることはできない。当然、助けに入ることもできないのだ。

 ……そして、第1階層のボスはホブゴブリン2体だ。今の僕なら1人でも十分に勝てる相手だけど、決して侮っていい相手じゃない。棍棒の一撃をもらってしまえば、そのまま死んでもおかしくないのだから。


「……あ」


 そうこうしているうちに、怒号と金属音がパッと止んだ。これは、もしかして探索者側が全滅してしまったのか……と思っていたのだけれど。


――ギィィィ……


 重々しい音を響かせながら、扉がゆっくりと開いていく。レムレースが扉を開けることは無いそうなので、どうやら探索者側が勝ったみたいだ。

 そして、ボス部屋から出てきたのは全身鎧を着た騎士風の3人と……明らかに身なりの良い、見るからに貴族といった風貌の男子だった。騎士風の3人は全員がどこかしらに怪我をしているが、貴族 (仮)は無傷であった。


 その貴族 (仮)が、こちらを見て笑みを浮かべる……けど、あまり綺麗な笑みとは言えなかった。


「おい、そこの平民ども! 俺様を助けろ、これは命令だ!」

「………」


 その貴族 (仮)が、開口一番にふざけたことを言い放つ。

 ……うーん、一応僕は平民じゃないんだけどなぁ。まあ、僕が身に付けている装備品の質は3人とほとんど変わらない……どころか、普通にゼルマやフランクの方が良い装備を身に付けてるからね。初見で僕が貴族の端くれだと見抜ける人はそう居ないだろう。

 もっとも、たとえ相手が平民だからと言って、いきなりこういう物言いをするのは大変よろしくない。大体こういう残念な言動を取るのは、伯爵位以上の上位貴族の子弟なんだよね……大変遺憾なことに。だから、蔑みを込めて"上級貴族様"などと言われてしまうんだと思うけどね。

 アルカディア王国に限らず、地位の世襲を行う国には必ずと言っていいほど存在する病魔……国の宿痾(しゅくあ)ってやつかな? 身分上位層の一部がそんな体たらくだから、超実力主義のヴィルヘルム帝国に煮え湯を飲まされてしまったんだと思うけど。国家反逆罪に問われかねないから、絶対に口には出さないけどね。


 ……と、僕が黙って考えているのを無視されたと勘違いしたのか、貴族 (仮)が急に顔を真っ赤にして怒りだした。


「貴様ら、俺はバルテン伯爵家の三男なんだぞ!? 貴様らのような平民風情なぞ、我が家の力でどうとでもできるのだ!」

「へぇ」


 バルテン伯爵家……僕の記憶が正しければ、確か財務系の仕事を主に行っている貴族家だったかな? バルテン伯爵家は領地を持たない貴族なので、王都にて各種業務を司る"中央貴族"にあたる。

 ただ、本来はその優れた人格や能力でもって、国の(まつりごと)に貢献すべき立場なんだけど……バルテン伯爵家は現当主があまりにも無能すぎて、最近は家が傾きかけていると聞いたことがある。一応は上位貴族の括りに入るものの、いつ爵位を取り上げられてもおかしくない状況なのだとか。


 まあ、それなら護衛連中が弱いのも納得だね。傾きかけた貴族家に優秀な戦士が寄り付くとは思えないし、そもそもバルテン伯爵家は財務系貴族……つまり、ソリス男爵家(うち)のような軍事系貴族とは相性が悪い存在だ。彼らからすると軍隊が金食い虫にしか見えてないだろうから、私兵に対する待遇もそこまで良くないんじゃないかな?

 ……とは言え、仮にも上位貴族家の直系男子を守る護衛が、自分たちよりも数の少ないホブゴブリンに苦戦するなんて。それでよく護衛が務まるよな、とちょっと呆れてしまう。


「………」


 爵位は確かに相手の方が上だし、僕と同じ直系の三男なんだけど……この場合、僕の方が正論で押し切れるね。

 なにせ、貴族家当主の発言力が違いすぎる。いくら爵位に差があっても、聖騎士団副団長を務める父上とうだつの上がらない名ばかり伯爵様では格が違いすぎるのだ。国への貢献度という点で、父上の方が圧倒的に上になる。


 ……まあ、そうでなくとも僕自身がこの伯爵家三男坊様に対して、気に入らない部分があるんだけどね。一応、自己紹介とやんわりとした警告から入っておこうかな。


「その申し出はお断りさせて頂くよ」

「な、なんだと!?」


 チラッと横目で周囲を見る。僕たちの他に、この場には誰もいないようだ。


「僕はエリオス・ソリス。僕も貴族家の三男坊でね、ここには訓練と腕試しを兼ねて来てるんだよ」

「ソリス……?」


 あえて"男爵家"の部分を省いて自己紹介をし、伯爵家三男坊様の様子を見る。そして案の定、伯爵家三男坊様はソリス男爵家のことを知らなかったみたいだ。


「……ふん、俺様が知らないということは、ソリス家なぞ木っ端な貴族家に違いない。ああ、きっとそうだ。

 おい、木っ端貴族ごときが伯爵家に楯突くなんざ、覚悟はできてるんだろうな?」

「楯突いてるつもりは無いけど、ここはダンジョンだからね。身分の上下より戦闘力がものをいう場所だ。僕より実力で劣る人の指図を受けるいわれは無いね」

――ガシャガシャガシャ!


 ここで、ブロンズゴーレムが全員前に出てくる……まあ、僕が操作してるんだけどね。前に出したのは、分かりやすく威嚇をするためだ。

 ちなみにゼルマとフランク曰く、ブロンズゴーレムはパッと見ではゴーレムに見えないそうだ。兜のバイザーが下りているので、全身鎧の中に人が入っているようにも見えるらしい。


 ……だから伯爵家三男坊様御一行からすれば、8人の重装騎士に囲まれているように見えるわけだ。そりゃ、伯爵家三男坊様もビクビクするわけだよね……なんで護衛連中もビクビクしてるのか分からないけど。君ら、雇い主を守るのが仕事じゃないの?


「き、貴様!? 俺は伯爵家の三男なんだぞ!? て、手を出したらどうなるか分かってんだろうな!?」

「さて、どうなるんだい? ちょっと分からないなあ、無知な僕に教えてくれないかな?」

――ジャキンッ!!


 ブロンズゴーレムが剣の切っ先を一斉に伯爵家三男坊様へ向ける。

 ……それを見た伯爵家三男坊様が、ヘナヘナと力無く地面にへたり込む。そして、その下の地面に水たまりが広がっていく……どうやら、漏らしてしまったようだ。


「情けないな。戦いの場で爵位が君を守ってくれると思うのか? 伯爵子息だと声高々に叫べば、敵が恐れ(おのの)いて道を開けるとでも思うのか?

 ……ダンジョン探索を馬鹿にしないでもらえるか? モンスターやレムレースに爵位など関係無いし、そんなことを喚いてるうちに襲われて終わりだ」

「……う、ぐ……」


 かつて、僕が父上から言われた言葉を少し改変しながら言う。甘えが残っていた当時の僕も、父上に地面を転がされながら似たような言葉を投げかけられて、戦うことの厳しさを少しだけ思い知ったことがある。

 しかし、僕など所詮はその程度だ。前世の僕(ドグラス)はともかくとして、今世の僕は本物の戦場に立ったことは無い。戦いの本当の厳しさなど、ほんの欠片ほども体感したことは無いのだ。


 そんな僕のちっぽけな覚悟にさえ劣るようなら、ダンジョン探索になど来るべきではない。命を落とす前に、あるいは他の探索者が害を(こうむ)る前に……探索者なんてさっさと辞めた方がいい。


「良かったじゃないか、僕が駆け出しの探索者で。オズバルド本部長のような猛者に突っかかってたら、今頃君は塵になってたよ?」

「………」

「生きている幸運に感謝して、今後余計なことはしないことだね。探索者は身分の上下より、実力を重んじる人たちの集まりなのだから。

 ……行こうか、みんな」


 そう言ってから、僕はダンジョンの入口に向けて歩き始める。その後ろを、どうやらティアナたちは3人とも付いてきてくれているようだ。


 ……あの伯爵家三男坊様の護衛連中、怪我はしているものの、普通に立って歩ける程度だった。このままダンジョンから外へ出るだけなら、無事に帰れるだろう。

 もし、無理に奥へ探索に行くつもりなら……あとはもう、自己責任だな。


 さて、早めに帰ってオズバルド本部長に報告しておかないと。あとは父上にも相談かな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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