1−30:腕力が上がる装備型アーティファクト
予約投稿日を1日早く設定していました……大変申し訳ありません。
次話は11/18(火)に投稿となりますので、よろしくお願いいたします。
「ブゴォ…………」
「………」
相方を倒されて1体になったスモールボアが、大きな部屋の縁に沿ってゆっくりと移動していく。どうやら、僕たちの隙を窺っているみたいだ。
しかし、僕たちも隙を見せるつもりは無い。スモールボアを半包囲するようにブロンズゴーレムを展開し、スモールボアの移動に合わせて立ち位置を微調整していく。これなら急に突進攻撃を仕掛けられたとしても、すぐに迎撃態勢へと移行することができる。
「……ブゴォ、ブゴォッ、ブゴォォッ」
――ガッ、ガッ、ガッ……
ゆっくりと円を描くように移動していたスモールボアが、急に動きを止めてこちらを見据える。そして鼻息荒く、後ろ脚で地面を掻き始めた。
ブロンズゴーレムの包囲網に隙が見当たらなかったのだろう。どうやら意を決して、突進攻撃を仕掛けてくるようだ。
「……ブゴォォォォッ!!」
――ドドドドドドド!
ひとしきり力を溜めた後、スモールボアが勢い良く飛び出してくる。狙いはやはり、一番前に立っていた僕のようだ。
……もちろん、その突進攻撃を簡単に許すほど僕は甘くない。3重の……いや、4重の防衛線がスモールボアを出迎えた。
――ヒュッ! ズバッ!
「ブギィィィィッ!?」
――ズザザザザ……
ブロンズゴーレムの合間を強引に突破しようとしたスモールボアに向けて、両脇からロングソードを振るった。その剣閃は両前脚にしっかりと届き、脚を斬られたスモールボアが転んで地面を滑っていく。
……20戦40体目ともなれば、さすがに慣れてきたね。序盤こそ距離感を間違えてブロンズゴーレムがスモールボアに跳ね飛ばされたり、剣が届かなかったりしたこともあったけど……今は距離感もだいぶ掴めてきた。長柄の武器、例えばハルバード辺りに持ち替えることも考えていたけど、どうやら必要無さそうで良かったよ。
「ブゴォ……ブゴォ……」
「……ティアナ」
「はい、エリオス様……"レイ"」
――ビシュッ
「ブギィィィィ……!?」
ダメージを負い、スモールボアが苦しげにその場でうずくまっている。当初の予定通り、ティアナにトドメを任せることにした。
……レイがスモールボアの頭を撃ち抜く。スモールボアはゆっくりと横向きに倒れていき……そのまま、ドロップアイテムへと姿を変えた。
これで20連勝達成だ。ここでもボス部屋20連勝ボーナスドロップが適用されるのであれば、何かしら落ちていると思うけど……。
「……あ」
見ると、対スモールボア20連戦の中でわりと見慣れたドロップ品と……あまり見慣れない、指輪のようなドロップ品が落ちていた。
「こっちはボアレバーだな」
まずは、見慣れた方のドロップ品をブロンズゴーレムに拾わせる。スモールボアのドロップ品であるボアレバーだ。
手のひらサイズのそれは薬の原材料になる物だけど、万年品薄で売値は高めらしい。これだけスモールボアを倒しても10個しかドロップしないのだから、品薄なのも納得はできるけどね。
「それで、こっちは……指輪型アーティファクトかな?」
ボス部屋20連勝ボーナスドロップは、どの階層でも適用されるものらしい。この指輪型アーティファクトも、そうしてドロップした物だろう。
指輪をブロンズゴーレムから受け取り、鑑定を試みる。さて、どんな結果が出るかな……?
「いかがですか、エリオス様?」
「……これは、腕力が少しだけ上がる装備型アーティファクトみたいだ」
確か"パワーリング"というアーティファクトがあったはず。腕力が上がる効果からして、多分それだと思う。
あと、パワーリングにはマジックバッグと同じくランクがあったはずだけど……上がり幅は少しだけみたいだから、ランクを付けるならⅠかな?
「鑑定結果は"パワーリングⅠ"、売値は確か50万ペルナだったと思う」
「50万ペルナっすか……バングルに比べると安いっすね」
「そうは言うけどさ、ゼルマ。これもそれなりに優秀なアーティファクトだよ? なにせ、10個まで装備が可能だからね。
……まあ、腕輪型アーティファクトに比べるとパッとしないのは、確かにそうなんだけどね」
1つ1つは少ししか能力が上昇しなくても、複数装備すれば効果は積み重なっていく。パワーリングは指輪型アーティファクトなので、10個は装備できるわけだから……まあ、単純に1個だけの時と比べて10倍の恩恵が受けられるわけだ。
ただし、数を揃えられれば、だけどね。1つで大きな効果が得られる腕輪型アーティファクトと比べると、入手性の面で劣るのは否めない。スモールボア自体が手強い相手だから、大量に確保するのも大変なんだよね……。
……とまあ、ポーションを大量にドロップしつつアンチ◯◯バングルをボーナスドロップするホブゴブリンと比べると、ドロップ品の面でスモールボアは明らかに劣っている。それなら、スモールボアの方が優れている点は何かと言えば……。
「……経験値効率は断然こちらの方が良いんだよね。僕もレベルが2つ上がって17になったし」
「私も、レベルが2つ上がって15になりました。もうおとといの倍近くですよ」
「私も、今のでレベル19になったっす。上がるの早すぎて逆に怖いっすよ」
「……俺も、レベル20に、なりました」
「おお、それはおめでとう」
「……ありがとうございます」
遂に、フランクが節目のレベル20に到達したらしい。大変喜ばしいことなのは間違いないけど、本人は見てるだけで勝手にレベルが上がったから複雑な気分だろう……実際、フランクの表情は明らかに曇ってるし。
ただ、何も手出しをしていないゼルマとフランクでさえこれほど早くレベルが上がるのだから、いかにスモールボアの経験値が多いかが分かる。ドロップアイテムの微妙さに目を瞑れば、レベル上げには最適な相手だ。
そして、ゴーレム制御の訓練という点からもスモールボアが一番優れている。ホブゴブリンはただ斬り掛かるだけで倒せるけど、スモールボアは距離を測りながら適切なタイミングで脚を狙う必要がある。その分より複雑で精密なゴーレム操作をする必要があるから、スモールボア周回がダンジョンにおける訓練の最適解となっているわけだ。
……まあ、本当は私兵団員相手に演習をするのが一番良い訓練になるんだけどね。それだとアイテムを何も入手できないから、ちょっともったいないなと思ってしまう自分がいたりする。
まあ、それはともかく。現状ダンジョンに行ける時は、ドロップアイテム狙いでホブゴブリンを周回するか、経験値・熟練度稼ぎ目的でスモールボアを周回するかの2択になるだろう。
「よし、もう少しスモールボアを周回してみようか。もしかしたらパワーリングⅠ以外のボーナスドロップが手に入るかもしれないし」
とりあえず、今日はまだ時間がある。スモールボアを倒してレベルを上げつつ、ボーナスドロップ品がパワーリングの他にないかを見ていこう。思ったよりも早くスモールボアを倒していけたから、頑張ればあと2周40戦はいけるかな? それ以上は集中力が保たなそうだけど……。
……さて、2周目のボス周回に入る前に。
「その前に、まずはお昼だよね」
「よっ、待ってましたっす!」
「……楽しみです」
「うふふ、今日は私が準備いたしました」
マジックバッグの中から、お昼ご飯が入ったバスケットを取り出す。中にはティアナが用意してくれた、僕の大好物のソリスバーガーが入っている。
バンズの間に肉とチーズとレタスを挟んだシンプルなハンバーガーで、ソリス家伝統の野戦食だ。ここにオレンジ果汁水を合わせるのが、僕の一番好きな食べ方になる。
「はい、エリオス様。オレンジ果汁水とご一緒にどうぞ、お召し上がりください」
「ありがとう」
ああ、この香り。ゴーレム操作で溜まった疲れも吹き飛びそうだ。
ティアナ謹製のお昼ご飯、美味しく頂くとしましょうか!
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
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