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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~  作者: SUN_RISE
第1章:大魔法剣士の覚醒

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1−29:VSスモールボア・後編


「ブゴォォォォォッ!!」

――ガシャガシャ!


 2メートル級の筋肉の塊――スモールボアと、全金属製の重装歩兵――ブロンズゴーレム2体が真正面からぶつかる。スモールボアもブロンズゴーレムも完全にスピードに乗っているが、果たして激突の結果はどうだ?


「ブゴォォォッ!!」

――ガギィッ!

――ズザザザザザザ!!

「うおっ!?」


 スモールボアの突進攻撃を真正面から受け止め、しかし圧に押し負けたブロンズゴーレムが地面を滑っていく。攻撃の重みという点では、やはりCランク級のスモールボアに軍配が上がるようだ。

 だけど、ブロンズゴーレムも負けてはいない。単純な重さで言えばブロンズゴーレムの方が重いので、スモールボアの突進を受けても跳ね飛ばされることなく、地面を滑りながらも突進エネルギーを少しずつ削っていった。


――ザザザザザ……


 ……そして、遂にスモールボアの勢いが完全に止まる。やはりスモールボアの突進攻撃は破壊力が高く、ブロンズゴーレムでさえ10メートル近く押し込まれたものの……それでも、2体でスモールボアを押さえ込むことができた。盾は残念ながら2つともひしゃげてしまったけど、それだけのことで突進を止められたなら上出来だ。


――ザシュザシュッ!!

「ブギィィィィッッ!?」


 忘れないうちに、スモールボアの両前脚を剣で斬りつけておく。押さえ込まれた形のスモールボアにこれを避ける(すべ)はなく、悲鳴を上げながら完全に崩れ落ちてしまった。

 ……脚部が弱点とは聞いていたけど、予想以上に脆いな。すれ違いざまの一撃なら速度が乗ってる云々(うんぬん)という説明がつくけど、まさか立ち止まったままの剣の一撃でも簡単に崩せてしまうとは。

 スモールボアの脅威を生み出す(かなめ)となっているにも関わらず、脚部が最大の弱点となっていること……スモールボアをEランクたらしめる理由、なんとなく分かった気がする。こんな脆い部位が、なぜあれほどの突進エネルギーを生み出せているのか大いに疑問ではあるけどね。

 あと、スモールボアの突進攻撃はほぼ真っ直ぐにしか来ないことも分かった。横に軌道修正することは苦手なようで、ひたすら直線的に走り込んでくるのだ。おかげでカウンターが取りやすく、最初の1体もそれで簡単に転ばせることができた。


 ……脚を狙うなら、もっとリーチが長い武器の方がいいかな? でも、ブロンズゴーレムの強度的に長槍と盾を同時に持たせることはできないみたいだし……まあ、今はこのままでいいか。


「ブロンズゴーレム、やれ」

――ズバッ!

「ブギッ……!?」


 両前足を斬られ、機動力を完全に失ったスモールボアが2体。生身で近付くのはさすがに危険だけど、距離さえおけばもはや良い的でしかない。

 倒すと消えてしまうレムレースを、生き物と呼べるのかはちょっと疑問だけど……なるべく苦しませないように、首を斬って1体を仕留める。そうして、もう1体のスモールボアも仕留めようとして……ふと、その手を止めた。


「……? どうしましたか、エリオス様?」

「こっちのスモールボアは、ティアナが仕留めてくれるか?」

「……えっ!? わ、私がですか!?」

「そうだ」


 ここ何日かの僕とティアナのレベルの上がり方を見て、気付いたことがあるのだ。


「レムレースにトドメを刺した人が、少し多めに経験値を貰えるみたいなんだ。ティアナより僕のレベルが早く上がってるのは、多分それが理由なんだと思う。

 ……バットの討伐は今後もティアナに任せるつもりだけど、それだけだとティアナのレベルがあまり上がらないからさ」

「し、しかし、それならなおさらエリオス様が仕留めた方がよろしいかと」

「僕だけレベルが上がっても、パーティとしてのバランスが良くないんだよ」


 パーティの柱は、確かに僕かもしれない。では、パーティの()()は? タンクと答える人もいるかもしれないけど、僕はヒーラーだと思っている。

 そして、このパーティのヒーラー役はティアナだ。パーティの基礎たるティアナの強さが、そのままパーティ全体の強靭さに繋がるのだ。

 ……それに、ティアナは本当に努力家だ。優れた才能を努力で磨き上げ、光魔法については高い技量を持っている。レベルばかり高くて技量は低い、促成栽培(パワーレベリング)で強くなったような連中とは違うのだ。


「だから、僕たちのためにも……ね?」

「う……」


 そして、ティアナはこういうお願いの仕方にとても弱い。自分のことは後回しにしがちで、周りのことを第一に考える娘だから……そういう感じの理由付けをすれば、大概は頷いてくれるのだ。

 前世の記憶が蘇る前の僕も、その理屈でティアナのためになるようなことをたくさんお願いしてきたからね。その辺は慣れたものだ。


「……わ、分かりました」


 ふふ、ほらね。


「それじゃあ、頭を狙おうか」

「分かりました……"レイ"」

――ビシュッ

「ブゴッ……!?」


 一筋の光線がティアナの指先から放たれ、スモールボアの頭を貫く。その一撃で、スモールボアの体からフッと力が抜けて……。


――ボフンッ!


 白く光る粒子のようなものに、スモールボアは姿を変えていった。

 ……ティアナの魔法って、威力が相当高いよね。レイは弾速と連射性こそトップクラスだけど、攻撃魔法としては最低限の威力しかないからね……バットならいざ知らず、普通は、スモールボアほどの魔物の表皮を貫くことはできない。

 だけど、ティアナの魔法は違う。レイでスモールボアの表皮を貫き、一撃で仕留めてしまった。いくら魔法耐性の低いスモールボアでも、そこまでヤワじゃないはずなんだけど……。


 ……まあ、その辺は嬉しい誤算だからいいか。ティアナは天才、それでOKだ。


「さて、ドロップアイテムは……今回は無しか」


 なんでも、体の血を増やす薬の材料と体に筋肉が付きやすくなる薬の材料を落とすらしい。それぞれボアレバーとボアハートだったかな? さすがに確定ドロップではないみたいで、こうして何も落とさないパターンもあるみたいだ。

 ボアレバーとボアハートは需要に対して供給が全く追い付いてないらしく、万年品薄状態なんだとか。なので、それなりに高く売れるらしい。


「……とりあえず、スモールボア相手でも普通に戦えそうなのは分かったよ。スモールボア3体が相手だと安全マージンが取れなくなるから、しばらくはここか第5階層のボス部屋に留まろうかな」


 効率を求めるあまり無謀に走れば、結局は大怪我して効率が落ちてしまう……いや、ダンジョンであればそのまま死ぬことだってあり得る。僕は無理しないし、してはいけないのだ。


「一旦、ここでも20戦を目標にいこう。

 ……っと、盾が壊れたままなのは良くないよね。"リペア・ブロンズゴーレム"」


 スモールボアの突進攻撃で壊れていた、ブロンズゴーレムの盾を修復しておく。これ以降スモールボアの突進攻撃を受け止めるつもりはないけど、万が一の時の緊急手段として選択肢は残しておきたい。その時に"盾が壊れていました"では、緊急手段の意味が無いからね。


「よし、ボス狩りを始めるよ。みんな、準備はいい?」

「はい、いつでも始めてください」

「いいっすよ」

「……了解しました」

「オッケー。ブロンズゴーレム、扉の開け閉めを」

――ガチャッ、バタン……


 再び、部屋の端に光の柱が2本立つ。やはり距離があるので、突進攻撃は止められなさそうだ。

 まあ、出てきたばかりの棒立ちのスモールボアを囲って倒すだけじゃ、ゴーレム操作の訓練にならないからね。カウンターを狙うには高精度のゴーレム操作を要求されるし、その意味でもちょうど良い相手なのは間違いない。


「さあ、かかってこい!」

「「ブゴォォォッ!!」」


 スモールボア2体の咆哮がボス部屋にこだまする。まずは20戦、気合を入れて頑張るぞ!



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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