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1−26:可哀想なホブゴブリン


――ズバババッ!

「「「グギィッ!?」」」


 ブロンズゴーレム8体が一斉にロングソードを振るい、3体のホブゴブリンそれぞれの胴体に深い斬り傷を刻み付ける。ホブゴブリン共はそのダメージに耐えきれず、ドロップアイテムへと変化して消えていった。


 ……ここは、第2階層のボス部屋だ。"レムレースは出現直後に攻撃されると、防御も回避も何もできない"という情報があったので、その真偽の確認とゴーレム制御の練習も兼ねてホブゴブリン3体にブロンズゴーレム8体を差し向けてみたわけだけど……結果として相手に何もさせず、見事完封することができた。少なくとも、ホブゴブリンが相手なら情報は正しいことが確認できたわけだ。

 もちろん、もっと強いレムレースが相手だと通じない可能性もある。有益な情報ではあるけれど、確認は怠らないようにしようと思う。


「さすがエリオス様です!」

「強いっす、強すぎっす。私たちの出番が全然無いっす……」

「……一昨日よりも、ゴーレムの動きが良いですね」


 ティアナは純粋に喜び、ゼルマは出番が無かったと嘆き、フランクはゴーレムの動きをつぶさに観察する。私兵団員を相手に行ったゴーレム制御訓練の成果は存分に出ているようで、フランクからお墨付きをもらうことができた。この分なら、第3階層のボスであるホブゴブリン4体もさして苦労せず倒すことができるだろう。


「よし、第3階層に行こうか」


 ボス部屋を出て、一昨日は探索しなかった第3階層へと向かう。ブロンズゴーレムは前に4体、後ろに4体の布陣を敷き、背後からの奇襲にも対応できるよう警戒しながら階段を下りていった。



 ◇



 初探索となる第3階層も、変わらず地下遺跡のような風景の場所だった。これはアルカディアスダンジョンに限らず、どこのダンジョンも第20階層までは同じ地下遺跡のような風景が続くらしい。

 そして地図によると、アルカディアスダンジョン第3階層は一本道の途中に3つの小部屋がある構造となっているようだ。それぞれの小部屋の中には固定罠が仕掛けられており、踏むと発動する仕掛けになっている。罠の種類は木矢・レムレース召喚・毒ガスの3種類があるとのことだ。

 ちなみに、通常出現するレムレースはレッドジェリー・ゴブリン・バットの3種類で変わらないものの、召喚罠を踏むと稀に手強いレムレースが出現することもあるのだとか……。


「強いレムレースと戦えるなら試してみたいけど、さすがにちょっとリスクが高いよね……」

「……過去には、シビレマイマイが出て、死者が出たことも、あるそうです」

「シビレマイマイっすか……」


 シビレマイマイ……モンスターとしてのランクはDランクで、名前の通り麻痺攻撃を得意とする厄介な相手だ。その身に纏う粘液や消化液、果てはそれらが蒸発した気体にも麻痺毒成分が含まれていて、とにかく麻痺対策が必須の相手となる。

 そして、シビレマイマイはダンジョン第20階層と、一部のダンジョンの第21階層以降にのみ出現するレムレースだ。そんなのが第3階層で出てきたら、とんでもないことになるよね……。


「うん、無しだね。倒せる倒せない、とかいう以前の問題だよ。探索者として普通にアウトだ」


 探索者として最も忌避される行為――レムレースを他の探索者に押し付けるトレイン行為に繋がりかねないからね。レムレースを倒し切る自信があっても、絶対にやるべきじゃない。

 そう考えると、やっぱりボス部屋周回が一番バランスが良いな。出てくるレムレースは毎回一定だし、扉の開け閉めだけで戦えるから時間効率も良い。ボスが部屋の外に出てくることは無く、ボス討伐後はそのままボス部屋で休憩することもできる。


「予定通り、罠を避けてボス部屋まで行こう」

「エリオス様のおっしゃる通りに」

「了解っす」

「……了解」


 第3階層の罠は固定罠なうえ、全て可視罠だ。地図を見ながら設置位置を確認し、丁寧に罠を避けていこう。

 ブロンズゴーレム4体を前に、4体を後ろに配置しながら第3階層を進む。ゴーレムは全員ロングソード・ラウンドシールド装備にしてあるので、どんな状況にも柔軟に対応できるだろう。








 ……しかし、結局何事も無く第3階層のボス部屋前へと到着する。道中ではゴブリンと1回、バットと1回遭遇したけど、どちらもブロンズゴーレムですぐに倒した。レベルは上がらず、ドロップアイテムも無かった。


「よし、ボス部屋に入ろうか」


 ボス部屋の入り口とは到底思えない、相変わらず質素な扉を開けて中に入る。最初にブロンズゴーレム4体がボス部屋に入り、次にフランク、僕、ティアナ、ゼルマ、ブロンズゴーレム4体が続いていった。

 最後のブロンズゴーレムには、扉を開けたまま把持させる。ここで扉を閉めれば、ボス戦開始だ。


「今か、連続ボス戦だ。みんな、準備はいいか?」

「私はいつでも大丈夫です、エリオス様」

「私も大丈夫っすよ」

「……いつでも、構いません」


 全員から是の返答がきたので、ゴーレムに命じて扉を閉めさせる。

 ……光の柱が、部屋の中央に等間隔に4本立った。ここからホブゴブリンが出てくるのだろう。


「4体は光の柱の近くでそれぞれ待機だ。ホブゴブリンが現れた瞬間に斬れ。後の4体は僕たちを守るんだ」

――ザザッ!


 前にいたブロンズゴーレム4体を、それぞれ1体ずつ光の柱の近くに移動させる。さっき第2階層のボス部屋でやったように、ホブゴブリンが出てきた瞬間に斬るつもりだ。

 後ろにいたブロンズゴーレム4体は、万が一仕留め損ねた場合の後詰めとして僕らの前に立たせる。


 ……やがて、光の柱がホブゴブリンへと変化していく。


「「「「グギャ」」」」


 ホブゴブリン共が咆哮を上げた瞬間、ブロンズゴーレムに一斉に剣を突かせた。狙いは首元に定めているので、多少外れても致命傷を与えられるだろう。


――ズブブッッ!!

「「「「グギッ!?」」」」


 予想通り、ホブゴブリンは防御もままならないまま突きをまともに食らい……あっさりとダメージが許容値を超え、全員がドロップアイテムへと姿を変えていった。

 ボス部屋の扉を閉めてからホブゴブリンを全滅させるまで、僅か40秒間ほどの出来事だった。


「なんか、ホブゴブリンが可哀想になってきたっす……」

「……エリオス様、倒すのが早すぎます」

「さすがです、エリオス様!」


 いつも通りのティアナの称賛に、どこか(あき)れたような表情を浮かべるゼルマとフランク。2人はどこか現実感を喪失しているような様子だけど、まあ確かにそうなるよね。

 壊されても惜しくないゴーレムを前面に押し出すことで、ローリスクハイリターンを実現しているのだから。

 ゴーレムは破壊されてもすぐに修復できるし、損失は僕の魔力だけ。それも自然回復することが確定しているものだ。万が一があっても貴重な人材を失わなずに済むのが、ゴーレム軍団の最大のメリットと言える。


「さぁ、2回目のボス戦を始めるよ。ゼルマ、外に誰もいないか確認してから扉の開け閉めを頼む」

「了解っす」

――ガチャッ


――バタンッ


 扉の開け閉めが終わると同時に、同じ場所に再び光の柱が立つ。ブロンズゴーレムを動かさなくていいので、だいぶ効率良くホブゴブリンを倒していけそうだな。


「さあ、目標は60戦だ」


 第3階層のボス20連続討伐ボーナスに、変化や追加があるのか否か。それを確かめるために、まずは60戦いってみようか!



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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