1−24:青銅の不死兵団
「よ、よしっ……そろそろいけそうだ」
食物が大量に詰め込まれ、少し膨らんだお腹をそっとさする。30分ほど休憩して、ようやく動けるようになった。
そして非常に、ひじょ〜に不本意なことではあるのだけど……食べ物を大量に食べたことで、なぜかレベルが1つ上がった。力が漲るような感覚があったので、ほぼ間違いないだろう。
「お、エリオス様が復活なされたぞ!」
「誰がやったと思ってるんだ、誰が」
「さて、寡聞にして存じ上げませんなぁ? なあ、みんな」
「「「「おう!」」」」
全く、ルッツめ。無駄に難しい言葉を使って、僕を煙に巻こうというのかい? あと周りでノッてる私兵団員、お前ら絶対言葉の意味分かってないだろ。
「………」
それでも、これがソリス私兵団だ。貴族と平民が肩を並べて共に戦う、武門貴族の私兵戦力。1人1人が高い技量を持つ、生粋の戦闘集団なのだ。
探索者としても優秀なので、平時も経済的な貢献ができる稀有な存在でもある。特に気位の高い騎士団とかになると、"ダンジョン探索なんぞ下民のすることだ"なんて平気で言う人もいるからね……。
「……まあいいか。よし、今度こそやろうか、みんな」
「「「「はい!」」」」
返事は良いんだよなぁ、返事は……。
「"マニュファクチャー・ブロンズゴーレム"」
――ガガガガガガッ!
ゴーレムのパーツを空中に浮かべ、一気に組み上げる。昨日の改良では、魔力効率の改善に重点を置いていたけど……今後はゴーレム完成までの時間短縮も図りたいところだな。
――ズズンッ!
そうして、ブロンズゴーレム4体が顕現した。今回はロングソードにラウンドシールドと、基本的な装備構成にしてある。もちろん、武器は刃引き済だ。
「おお、初めてゴーレムを見たけど強そうですね」
「よし、ここは俺が!」
「いや、俺だ!」
やいのやいのと一頻り騒いだ後、私兵団員たちの中から4人が前に出てきた。どうやら、最初の相手はこの4人のようだ。
その後ろを見ると、今日来ていた36名が4人ずつのグループ9つに分かれている。特に何も言っていなかったが、ゴーレムと同数の私兵団員がチームを組んで戦うようだ。
「よし、それじゃあ練兵スペースに行こうか」
「「「「はい!」」」」
全員で広いグラウンドへと向かう。ここでなら、ゴーレムを縦横無尽に動かせそうだ。
◇
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
15回目の模擬戦を終え、その場にへたり込む。
震える足をポンポンと叩き、疲労困憊の体をどうにか立ち上がらせようとしたが、足は全く言うことを聞いてくれない。非常に有意義な訓練だったけど、まだ昼前だというのにダンジョン探索を終えた時よりも疲れたな……。
最初は1戦あたり5分、インターバル5分の4対4で模擬戦を実施していたけど、9戦ほどしてもだいぶ余裕があったので、ゴーレム数を6体に増やして6対6での模擬戦を行った。
……そこからが地獄だった。
ブロンズゴーレムを6体に増やした途端、制御難易度が桁違いに上がった。なんとか操作しきれたものの、魔力以上に体力と精神力がゴリゴリと削られていった。
それと同時に、慣れればいけそうな手応えも感じている。多分だけど、この辛さを乗り越えれば10体くらいまでは同じ感覚で操作できそうな、そんな気がしている。
あと、私兵団員の面々はゴーレムの攻撃を捌きつつ、隙あらば僕にも攻撃を仕掛けてきた。魔法士相手の戦い方としてはまさに正解だ。
大抵の魔法士は肉体的な強さはそれほどでもなく、かつ集中を乱せば魔法を止めることができる。刃引きした訓練用の武器とはいえ、当たれば痛いし魔法の集中も乱れるので対処するしかなかった。ちゃんと武具を装備しておいて良かったよ……。
もちろん、これも訓練内容のうちだ。実戦でも当然起こり得ることなので、魔法制御を乱さないようにしつつ敵の攻撃に対処する術は、今のうちに身に付けておかないといけない。それを実践できて、とても有意義な訓練となった。
「あ、ありがとうございました……」
「エ、エリオス様、なかなかやりますね……」
対する私兵団員の面々も、疲れは隠せないが爽やかな笑顔だ。
僕と模擬戦をしないチームは別のチームと模擬戦をしていたので、インターバルを挟みつつもほぼ全員が連戦をこなしている。途中から6人グループが6つになり、僕含めて模擬戦をすると1グループ余りが出るようになったので、長めの休憩を取れるようにはなったけど……その代わりに1グループあたりの人数が増え、連携はより難しくなった。
百戦錬磨の戦士ばかりなので、僕みたいにへたり込んでいる者はいないけれども……だいぶ気疲れしたであろうことは想像に難くない。自分たちと同数のゴーレムを捌きつつ、連携して動くのは相当な難しさだっただろう。
それでも、皆の顔からは充実感が読み取れる。お互い意義のある訓練ができて、本当に良かったよ。
「お疲れ様です、エリオス様」
「ありがとう、ティアナ」
ティアナがタオルを持ってきてくれたので、それを受け取って汗を拭く。そのまま立ち上がりたいところだけど、まだ足が笑っていて動くことができない。
「大丈夫ですか? 今魔法を掛けますね……"ヒール"」
――パァァァ……
「……おっ?」
ティアナの右手から柔らかな光が飛び出てきて、僕の体を包み込む。その瞬間、全身に溜まっていた疲れが消えていった。
ヒールは癒しを与える光属性魔法で、回復魔法の初歩だと言われている。だけど他者の魔力同士は反発するという性質のせいで、習得難易度は相当に高い。
「いつの間に……?」
「昨日、練習していたらできてしまいました♪ エリオス様が難しい魔法をお使いになられているので、何とか私も……と思いまして」
何でもないことのように言うティアナだけど、やったことはまさしく天才の所業だ。僕のような反則技ではなく、己の才覚のみで回復魔法を覚えてしまった。それも1日で、だ。
……これは凄いな、僕もうかうかしていられないよ。
「ありがとう、ティアナ。これなら午後も頑張れるよ。
……よし、お昼を食べたらまた特訓だ! みんな、今日はとことん付き合ってもらうからな!」
「「「「おう!」」」」
私兵団員のみんなから、是の声が返ってくる。やる気なのは良いことだ。
さて、今日中にゴーレム6体制御はものにしてしまいたいところだな。
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