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1−23:訓練のお誘い


 父上、母上と朝食を共にした後、着替えと準備を済ませた僕は、ティアナを伴って私兵団員の訓練場に行ってみることにした。今日は2人とも居るだろうか?


「おや、エリオス様じゃないですか」

「うん? あ、ルッツか。おはよう」

「おはようございます」


 訓練場に入ると、最初に声を掛けてきたのは大柄なスキンヘッドの私兵団員――ルッツだった。今は小休止をとっているところのようで、彼の得物である長剣を脇に置き、地面に座って休んでいる。

 ルッツは私兵団員の中でもかなりの古株で、もう25年間ここで働き続けているそうだ。確か今年で38歳だったかな? 13歳からずっとソリス私兵団に所属しているというのは驚きだけど、それゆえに彼は全身に多くの傷跡を抱えている。もちろん、目に見える傷跡も多いのだけど……それと同じくらいに、目に見えない内側の傷も多いらしい。

 ルッツは元々フランクと同じく、大剣を扱う剣士だったらしい。だけど怪我が理由で、得物をより軽い長剣に持ち替えたのだそうだ。それでも生粋の剣士らしく、剣を振るって戦うことが生きがいだと本人が言ってたな。


「ルッツ、今日はゼルマとフランクは居るかな?」

「2人でしたら、今日はどちらもお休みを頂いてますね」

「えっ、そうか……」


 残念だ、今日もダンジョンに行こうかと思ってたんだけど……まさか2人ともお休みとは。

 さすがに、僕とティアナだけでダンジョン探索は無理だ。これでも貴族の端くれだから、護衛無しでの外出は父上から許可が下りないだろう。


「参ったね、どうしようか?」

「他の団員を連れて行ってもいいですが、連携に少し不安があるのでは? やはり歳が近い方が、考えも近くて合わせやすいでしょうし」

「そうなんだよね……」


 別に、ゼルマとフランク以外の団員を信用していないわけじゃない。ただ、僕と年齢が近いのがその2人で、あとの団員は全員20代中盤〜40代前半になる。僕とは最低でも1回り以上の年齢差があるので、どうにも息を合わせづらいのだ。

 ダンジョンの浅層を探索するだけなら、それでもいいんだけど……さて、どうしようか?


「そういえば、男爵様から伺ったのですが……もう魔法が使えるようになったのですか、エリオス様?」

「ん? ああ、そうだよ」

「ゴーレム魔法でしたか、聞けばなかなか有用そうな魔法だとか」

「時と場合によるかな。ダンジョン探索にはピッタリだけどね」


 軍事的な観点で言えば、火属性の広域殲滅系魔法――"ビッグバン"や"プロミネンス"の方が、費用対効果の面では一番優れているらしい。離れた場所から強力な一撃で全てを破壊すればいいのだから、確かに楽だし魔力運用効率も良いだろう。

 ……ただ、破壊した道や建築物を修復する作業が必要になるから、工兵からはめちゃくちゃ嫌がられてるらしいけどね。火属性魔法で破壊された砦を拠点として再活用したい場合、瓦礫やら何やらが散乱したところを整地して、基礎や壁を修復して床や天井を整えて……といった手間が余計にかかる。再活用を前提とするなら、特に拠点は綺麗なまま取って欲しいというのが本音だろう。


 そういう時こそ、ゴーレム魔法が活躍できるかもしれない。確かに強力な魔法ではないし、拠点を攻略するのに時間もかかるけど……建物も兵力も損なうことなく、敵拠点を攻めることができる。加えて拠点を占拠・維持するためには兵士が必要なのだから、その代替ともなれる可能性をゴーレム魔法は秘めているわけだ。


 もちろん、ひたすら敵拠点を破壊して回るならビッグバンとかの方が効率は良い。そのあたりは、用途の違いで住み分けできそうかな。


「それなんですがね、エリオス様。ゴーレム魔法を用いて、我々と一戦交えてもらうことは可能でしょうか?」

「え? ゴーレムと戦うのかい?」

「はい、そうです」


 私兵団員の訓練に、ゴーレム魔法を使う? どういうことだろうか、


「こうやって訓練していても、我々には集団戦や対人戦の訓練がどうしても不足しがちになります。レムレースやモンスターは動きが単調なので、どうしても戦い方がワンパターン化されてしまいますし……模擬戦は模擬戦で、相手を怪我させないための加減が必要ですので。

 ですが、エリオス様のゴーレム相手なら怪我を気にせず戦えます。複数運用も可能と聞いておりますから、集団対集団の戦闘訓練も積めるでしょう。ゴーレムを操るのはあくまでエリオス様なので、戦い方も単調になりにくいでしょうし」

「うーん……」


 一応、悩むそぶりは見せたけど……これ、僕にとっても渡りに船というやつではないだろうか?

 僕としても、ゴーレムの複数運用や集団戦の練習はしたいと思っていたところだ。これが浅層に出現するレムレース相手だと、個体性能の差で一方的に蹂躙してハイおしまい、という結果にしかならない。それではまるで練習にならず、ただ経験値とドロップ品が増えていくだけだ。

 だけど、手練れ揃いの私兵団員が相手ならどうだ? 実力は私兵団員の方が圧倒的に上だし、参加人数も調整可能だ。最初は同数で試してみて、細かく人数を変えていけばいい。


 僕はゴーレム運用の訓練が積めて嬉しいし、私兵団員も足りない訓練が積めて嬉しい。まさにウィンウィンじゃないか。


 しかも、訓練場内での訓練はいつやってもいいと父上から許可されている。訓練内容を報告する必要はあるけれども、刃引きされた武器での模擬戦が許可されているくらいだから、ゴーレムを用いた集団戦の訓練も普通に許されるはず。その点、僕としてもありがたい。


「……いいよ、ぜひやろう。僕もこれからゴーレム魔法を練習していく身だから、最初はうまくできるか分からないけどね」

「それはつまり、時間が経つほどゴーレム軍団が洗練されていくということでしょうか? 我々としてもそれは望むところです」

「おっ、エリオス様のゴーレムと戦えるのか? そりゃ楽しみだな!」


 僕が乗り気なのを聞きつけてか、私兵団員がワラワラと寄ってくる。全員が訓練用の武器を持っており、やる気満々のようだ。


「じゃあ、早速やろうか」


 僕の方は、もう準備はできているからな。


「「「「……フフフフフフ……」」」」

「……ど、どうしたんだ、皆?」

「訓練の前に、恒例行事があるでしょう?」

「もう忘れちゃったんですか、エリオス様?」

「恒例行事……あっ」


 速攻で回れ右をして逃げの体勢に入る。遠く屋敷の方から、大きな鍋を抱えた私兵団員が歩いてくるのが見えた。


「逃がしませんぜ、エリオス様!」

「さあ、今日もたんとお召し上がりになって頂かなくては!」


 僕の肩を、丸太のように太い腕がしっかり掴んだ。ルッツの腕のようだけど、何とか離れようとしても微塵も体が動かない。

 うぐぐ、パワーで圧倒するとはなんと卑怯な……!


「ささ、ティアナ嬢もこちらへどうぞ?」

「あの、お手柔らかにお願いいたしますね? エリオス様の集中力が切れてしまっては、訓練にも差し支えますので……」

「ティアナ嬢は優しいなぁ。くそっ、俺もこんな嫁が欲しかったぜ」

「えっ、よっ、嫁だなんてそんな……」


 すごく、すごく気になるやり取りが後ろから聞こえるのだけど……僕はというと朝食会場に向けてズルズル引き摺られているところで、とても後ろを見る余裕が無い!


「さあ、お覚悟を!」

「"お覚悟を"とか言ってるし!? お前ら絶対楽しんでるだろ!?」


 僕の指摘にも、私兵団員の面々はニヤリとした笑みを返してくるだけだった。


「や〜め〜ろ〜!!」


 僕の魂からの叫びが、虚空へと溶けて消えていく。この後待ち受ける運命に必死で抗いながら、しかし僕の体はなす術なく地獄(朝食会場)へと引き摺られていった……。


 読者の皆さま、いつも本小説をご覧くださいまして、誠にありがとうございます。


 今回、読者の皆さまにお詫びとお断りを申し上げなければなりません……。

 本小説につきまして、いくつかの設定のブレ、及びそれに伴う表現内容の違和感の増大が散見されるようになってしまいましたため、現在大幅な改稿作業を行っております。それに伴い、1話あたりの文字数をならすための話数分割、及び設定内容の一部変更が発生いたします。

 話の大筋は変わりませんので、再度の読み返しは不要と考えておりますが……話数増大によるしおり位置の変化が発生いたしますので、最新の投稿話に合わせて頂けますと幸いです。

 よろしくお願い申し上げます。


◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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