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1−19:成果


 思わぬ所でマジックバッグⅠを2つ手に入れた僕たちは、一路探索者ギルドに向けて移動していく。

 もちろん、大量に手に入れたポーションやハイポーションを売る目的もあるけど……オズバルド本部長にお願いしていた魔法基礎訓練を受けるために、1度本部まで戻る必要があった。


 ……うん? 僕がわざわざ魔法基礎訓練を受ける必要があるのかって? もちろんあるよ。

 前世の僕(ドグラス)は完全なる天才型魔法士で、魔法士としての技量は飛び抜けて高かったけど……あまりに飛び抜けすぎていて、今の僕には使いこなせない謎技術が多すぎるのだ。

 単純に魔力量が足りないだけならいいのだけれど、魔法を行使するにあたってのコツというか、感覚的な部分がどうにも真似できない。前世の知識や記憶も万能ではなく、一部の魔法を行使するためには僕自身の魔法技量を磨かなければならないのだ。

 その点でゴーレム作製魔法は確かに高度だけど、魔法自体は小規模でまだ理解できる範疇のものだった。それが、例えば"遥か高空から大質量の物体を落とす魔法"やら"大地を激しく揺らし、地割れを発生させる魔法"やらになると、魔法が大規模過ぎてうまく行使できなくなってしまう。魔力量がどうのという問題以前に、望む結果を得るための方法が分からない状態なのだ。


 その辺のチグハグさを解消するためにも、オズバルド本部長の魔法訓練は絶対に受ける必要がある。鍛錬を積むのは個人的に好きなので、正直なところ楽しみだ。


「魔法訓練、楽しみですねエリオス様」

「そうだねティアナ、僕も楽しみだよ」

「私、魔法のことはよく分からないっすけど……そんなに楽しいでっすか?」

「ゼルマも、地道な鍛錬を積んで新しい技を身に付けたら達成感があるだろう? それに近い感覚だよ」

「あ〜、なるほど! よく分かったっす!」


 



 ◇



「ふむ、戻ってきたか。思ったより遅かったな」


 探索者ギルド本部の建物に入ると、オズバルド本部長が待っていた。少し待たせてしまったかもしれないな……。


「すみません、少しボス戦に熱が入ってしまいまして……」

「初探索でボス部屋に挑戦したのかね?

 ……いや、なるほどな。そこの2人に情報を聞いて、勝てるとふんで入ったか。特にケガも無さそうだものな」

「はい、その通りです。無理はしていませんよ」


 一瞬、オズバルド本部長の表情が険しくなったけど……僕たちの様子を見て、無茶な探索はしていないことを察して表情を緩めた。


「ニャニャ! 皆様お疲れ様ですにゃ!」

「あ、お疲れ様、ミウ」


 カウンターの向こうから、ミウが声を掛けてくる。元気印のホワイトキャットな受付嬢だ。


「アイテムの換金とレベル測定、ギルドカード更新はこちらで承りますニャ!」

「へえ、便利だね」


 まとめてやってくれるのか、それはありがたいな。ギルドカードにはレベルも書いてあるから、内容を書き換えるのかな?


「じゃあ、まずはレベル測定とギルドカード更新からお願いしようかな。はい、これがギルドカードね」

「私も、よろしくお願いいたします」

「私もお願いしまっす」

「……俺も、念のために」


 僕とティアナ、そしてゼルマはレベルが上がっているが、フランクはおそらく上がっていない。それでも見逃しがあるかもしれないので、フランクも測定してもらうことにしたようだ


「はいは〜い、ではお預かりしますニャ〜! それでは、エリオス様から順にこちらへお手をおかざしくださいですニャ!」


 ミウはそう言って、あの大きな水晶玉(レベルゲージ)をずいっとカウンターに出してきた。そこにそっと手をかざす。

 ……確か、レベルが上がったような感覚は4回あったはず。つまり、今の僕のレベルは……。


「……ニャニャ!?」


 水晶玉の中に"12"の数字が堂々と踊る。予想通り、僕のレベルは4つ上がっていた。

 これはホブゴブリンを倒して得た経験値に加えて、ゴーレムを操って戦ったことによる行動経験値も含まれているのだろう。ティアナよりレベルアップが早かったのは、おそらくそれが理由だと思う。


「うん、やっぱりレベル12だね。いいペースだよ」

「ニャ〜、今日だけで4つも上げるだニャんて……エリオス様、本当に無理な探索はされていないのですニャ?」

「してないよ。ほら、傷跡もなにも無いでしょ?」


 その場で軽くクルリと回り、ミウに全身をしっかりと見せる。


「動きの不自然さも全く無いですニャ……一体、どうやったらそこまで経験値を得られるのですかニャ?」

「ふふ、それは企業秘密ということで」

「ニャ〜、気にはなりますが、無理をなさっていなければそれ以上は聞かないのですニャ」


 良い受付嬢さんだよ、ミウはさ。




 そして、その後はティアナたちのレベル測定に移ったわけだけど……ティアナのレベルが8→11に、ゼルマのレベルが16→17に上がっていたことでまた驚かれた。とても探索初日で達成できるようなことではない、と。

 まあ、全てはゴーレム魔法のおかげなんだけどね。ボス部屋周回の効率の良さと、ゴーレムによるダメージ無視の戦闘がうまく噛み合ってここまでの成果を挙げることができたわけだ。

 ……ただ、ボス部屋周回で手に入るアーティファクトのことは秘密にしておきたい。僕らと同じようなことは、高レベルの探索者なら片手間でこなせてしまうけど……ドロップするという事実を彼ら彼女らが知らなければ、わざわざそんな非効率的なことはしないだろうから。


「さてさて、お次はアイテムの換金ですニャ! 何か換えたい物はありますかニャ?」

「そうだな……」


 リュックに満載だったアイテムは、全てマジックバッグに入れている。個数は一切カウントしていなかったけど、マジックバッグには中に入れた物の一覧が脳裏に浮かんでくるという機能があり、それで全体の個数を把握することができた。



 ☆


・ポーション×214

・ハイポーション×56

・キュアポーションⅠ×1

・キュアポーションⅡ×1

・レッドゼリー

・アンチポイズンバングル

・アンチパライズバングル

・アンチスリープバングル


 ☆



 これが現在の所持品一覧だ。ホブゴブリンがポーションを確定で落とすので、大量に倒した結果とんでもない数になっている。それはリュックが重くなるはずだよ……マジックバッグの良さを認識すると同時に、フランクの凄さも再認識した瞬間だった。


 ところで、マジックバッグ2つの使い分け方だけど……1つ目のマジックバッグ――便宜的に"マジックバッグA"とする――にはダンジョン探索で僕たち自身が使う物や、ギルド以外の誰かに売ったり譲ったりする物を入れる予定だ。主にポーション類や付替用の装備、あるいは父上に献上する予定の物がここに入ってくる。

 そして2つ目のマジックバッグ――こちらは"マジックバッグB"とする――は、探索者ギルドに売る予定の物を入れる。ドロップアイテムの中で僕たちが使わないであろう物は、全てこちらに入れるつもりだ。


 その使い分け方を元にアイテムを振り分けた結果、こうなっている。



◆マジックバッグA◆

(探索で使う物・ギルド以外に渡す物)


・ポーション×100

・ハイポーション×30

・キュアポーションⅠ×1

・キュアポーションⅡ×1

・アンチポイズンバングル

・アンチパライズバングル

・アンチスリープバングル


◆マジックバッグB◆

(探索者ギルドに売る物)


・ポーション×114

・ハイポーション×26

・レッドゼリー



「え〜っと、それじゃあポーション114個とハイポーション26個、それとレッドゼリー1個を換金したいんだけど……」

「……は、はい? 今、ポーション100個って言いましたニャ?」

「え? うん」


 ミウが目を丸くして、僕を見ている。一体どうしたんだろうか?


「ちょ、ちょっと待ってくださいニャ。大きめのカゴを持って来ますニャ」


 あ、ああ、そういうことね。ごめん、確かにポーション100個以上をカウンターにあけるのは非常識だったよね……次は気を付けないと。






 そうして無事換金できた僕たちは、1万9525ペルナを手にした。さすがに買値よりは少し安くなるみたいだけど、それでも中々の金額だ。


 もちろん僕は、そのお金を全て3人に渡した。


「えっ!? エリオス様、それはさすがに受け取れません!」

「僕のワガママに付き合ってもらってるんだから、これくらいはちゃんと受け取ってほしい。本当はマジックバッグを渡したいくらいだけど、さすがにそれは無理だからね……申し訳ない」

「そ、そこまではさすがに求めないっすよ。

 ……分かりました、ありがたく受け取るっす

「……ありがとうございます」


 僕抜きでダンジョンに潜った時の方が、稼ぎは段違いに多いだろうに……ゼルマもフランクも、文句1つ言わずに受け取ってくれた。ありがたいと同時に、申し訳ない気持ちにもなってくる。

 一方のティアナは1ペルナも受け取れないと宣ったので、受け取ってくれないなら僕のお小遣いも全部ティアナのために勝手に使うぞ、と言ったら折れてくれた。ティアナも年頃の女性だからね、自分のお金もぜひ持ってほしいものだ。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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