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1−18:アーティファクト屋


「……エリオス様、この辺りです」

「ありがとう、フランク」


 パウルさんから貰った地図をフランクに見せると、どうやら場所に心当たりがあったらしい。フランクに付いて貴族街を離れ、平民が暮らすエリアへと移動した。

 ……フランクに案内された先を見ると、暗くて狭くて中々に刺激的な場所であるらしい。本当にこんな所に、マジックバッグを取り扱うお店があるのか……?


「………」

――コンコン


 地図に示された建物を見つけ、扉をノックする。とても古めかしい建物で、特に看板等も立っておらず、本当に店なのか不安になったが……。


――ガラガラ

「ハイハイ、なんでっしゃろか?」


 なにやら不思議な口調をした男性が、扉を開けて姿を現した。かなりラフな格好をしており、とても商売人には見えない風貌だ。


「パウルさんから紹介されて来ました。こちらが紹介状です」

「……へぇ、それ寄越しぃ」

――パシィッ!


 パウルさんの名前を出すと、僕が差し出した紙をその男性はひったくるように乱暴に取った。その紙を、男性はじっと眺めている。


「なっ、あなた、エリオス様に対してしつれ「待て、ティアナ。僕は気にしていないから落ち着いてくれ」……かしこまりました、エリオス様がそうおっしゃられるのならば……」

「………」


 ティアナが抗議しようとしてくれたが、それを制止する。その間も、男性は紙をじっと読み込んでいた。


「……ふ〜ん、こりゃパウルの字で間違いあらへんな。で、こんな場所に貴族のお坊ちゃんが何の用?」

「マジックバッグの取り扱いが無いか、見に来ました。置いてありますか?」


 僕の返答に少し驚いた顔を見せた後、男性が腕を組んで考え始めた。


「……はぁ、先立つもんはちゃんと持っとんのやろな?」


 苦い顔をしながらそう返してきたけど、つまりこの男性は自らアーティファクト屋であることを認めたわけだ。すごく不本意そうな様子ではあるが、取引には応じてくれそうだ。


 ……しかし、これは参ったな。顔だけ出すつもりが、場の雰囲気的に冷やかしだけではちょっと良くなさそうだ。商談くらいはしなければ、この店を紹介してくれたパウルさんのメンツを潰しかねない。

 一応、マジックバッグⅠの相場が100万ペルナくらいで、アンチパライズバングルと等価交換できることはフランクから教えてもらったけど……父上への報告より先に、バングル系のアイテムを出してしまっていいものか。微妙だな……。


 ……でもまあ、ここで帰るという選択肢は最初から無いな。よし、腹を括ろう。


「お金はあまり持ち合わせがありませんが、代わりに出せるものはありますよ?」

「ふぅん、そっか。わ〜った、ほれ、上がりぃや」


 男性が手招きをして、建物の奥へと引っ込んでいく。それに付いて、僕たち4人も建物の中へと入っていった。




「そこに座りぃ」


 中に入ると、建物の外観からは決して分からないような綺麗な応接室へと通された。どうやらここで商談をするらしい。

 そこに置かれた椅子とテーブルのうち、奥の方の椅子に男性が座り、指でもう1つの椅子を指した。どうやら"そこに座れ"ということのようだ。


「失礼します。

 ……ごめんな3人とも、ちょっとだけ立って待っててもらえるか?」

「はい、エリオス様」

「気にしなくても大丈夫っすよ」

「……お待ちします」


 僕が椅子に座り、男性と向かい合う。椅子は1脚しか空いていなかったので、大変申し訳ないが3人には立って僕の後ろに控えてもらうことにした。


「先に自己紹介しますね。僕はエリオス・ソリス、ソリス男爵家の三男です。後ろの3人は、僕の専属メイドとソリス家の私兵団員です」

「ダンや、ここでしがないアーティファクト屋を営んどる。まあ、よろしゅう頼むわ、エリオス殿」


 なるほど、この人はダンという名前なのか。

 互いに名乗りを済ませた後は、商談に入る。一筋縄ではいかなそうな人物だけど、果たしてどうなるかな?


「それで、エリオス殿はマジックバッグが欲しいってことやけど……あれは需要が高くてな、今はⅠしか在庫があらへんのよ。それでも良ければ売ったるわ」


 おっと、これは僕からしたら意外な好展開だ。僕はてっきり"簡単に売ってやれるほどの数は無い"とかなんとか言って、なにかしらふっかけてくるものだと身構えていたのだけど……初手でそれなら話は早い。


「なるほど、マジックバッグⅠがあるのですか……フランク、例の物を出してくれ。一番高いやつだぞ?」

「……かしこまりました」

「……?」


 フランクに指示を出し、リュックからアレを取り出してもらう。ダンさんがある程度誠意を見せてくれたのだから、こちらも最初から良い方の手札を切らせてもらおう。


「……こちらです」

「っ!!」


 フランクが取り出したソレを見て、ダンさんの目の色が明らかに変わる。それはそうだよな、なにせ――






「――なんで、エリオス殿がそれを持っとんのや?」


 取り出したのは、マジックバッグⅠより貴重なアンチポイズンバングルなのだから。

 アーティファクト名は口に出さなかったが、ダンさんは一目見てそれがアンチポイズンバングルであるということを看破したらしい。アーティファクトを扱うお店の主だけあって、鑑定する(すべ)を持っているようだ。


「正当な方法で手に入れた物ですよ。我らがソリス家は、不正を決して許さない貴族ですので」


 入手場所については、さすがにごまかさせてもらうけどね。なんでもベラベラ喋るほど、僕は甘くないつもりだ。


「……その様子やと、それを鑑定して欲しいってわけでも無さそうやな」

「ええ、これがアンチポイズンバングルだということは把握済です」

「さよか……」


 再び腕を組み、ダンさんが何かを考えている。


 ……やがて、ダンさんはゆっくりと口を開いた。


「……マジックバッグⅠを2つと交換でどうや? それなら互いに損も無いし、等価交換やろ?」


 なんと、最初から相場通りの条件を提示してきた。マジックバッグⅠだと少し容量の不安があるので、2つ持ちする意味もある。


「ええ、それでいきましょう」

「よっしゃ、商談成立やな。マジックバッグを持ってきたるから、ちと待ってな」


 ダンさんが席を外し、建物の更に奥へと入っていく。その背中を眺めながら、交渉がうまくいったことに安堵していた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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