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1−17:帰還


 第2階層のボス部屋を後にした僕たちは、一路地上を目指して歩き始める。第2階層も第1階層もそこまで広くないので、時間はそこまでかからないだろう。


「皆、ケガは無いか?」

「はい、エリオス様。エリオス様が安全にかなり気を使ってくださったので、私の出番はほぼありませんでした」

「いや〜、軽いお守りのつもりが、なんかとんでもなく濃厚な探索になっちゃったっすね〜」

「……やはり、エリオス様といると、飽きないです」


 皆、口々に充実感を語ってくれた。バットの奇襲に警戒しながらの移動ではあるけど、余計な緊張感も無くて良い雰囲気だ。


――ゴゴゴ……

――ドゴォッ!

「ギャッ……!?」


 道中に出てくるレムレースは、ロックゴーレムとブロンズゴーレムで薙ぎ払っていく。ホブゴブリンのパワーとスピードに慣れてしまったので、それより格が落ちる道中のレムレースが弱く感じるな……まあ、油断は絶対にしないけどさ。



 ◇



「おっ、戻ってきたな!」

「お疲れ様です」


 無事地上へとたどり着くと、ダンジョン入り口番のパウルさんとツェツィーリアさんが出迎えてくれた。ちなみに、階段を上がる直前にゴーレムは還したので、4人での出場だ。

 ……外は少し日が傾き、間もなく夕方に差し掛かろうとしている。どうやら、僕の想定より少しだけ早く帰還できたみたいだ。


「どうだった、成果は?」

「まあ、それなりでした。第2階層までしか行きませんでしたので、この通りです」


 背負っていたリュックの中身をパウルさんに見せる。僕の方にはポーションとキュアポーションⅠ・Ⅱが入っているだけなので、運こそ良かったけどそこまで特筆する成果ではないように見えるかな?


「おっ、バットからキュアポーションがドロップしたのか。しかもⅠ・Ⅱの両方とは、随分幸先がいいねえ」

「はは、ビギナーズラックといったところでしょうか? 数は倒していないのですが、運良くドロップしてくれました」

「うん、うん、いいねえ」


 パウルさんが腕を組みながら、笑顔で頷いている。この人は高位探索者らしくとても良い人だから、新人探索者が成果を挙げたのを素直に喜んでくれているのだろう。


「しかし、第2階層までの探索にしては随分と時間がかかったな。それにだいぶ疲れてるみたいだけど、何をしてたんだい?」

「ああ、ずっとボス部屋で連戦してたんですよ」


 そう言いながら、フランクに目配せする。フランクは小さく頷くと、背負っていた大リュックを下ろして中を見せた。

 ……バングル系も入っているが、それはリュックの下の方にある。上から見えるのは大量のポーションとハイポーションだけだ。


「なに? 確かにホブゴブリンを狩り続けないと、この数は出せないが……だが、それは危険な行動だぞ?」

「大丈夫ですよ、僕にはコレがありますから。"マニュファクチャー・ロックゴーレム"」

――ガガガガガガ!

――ズゥゥゥン……


 その場にロックゴーレムを召喚し、岩でできた体をコツンとノックする。本当はより洗練されたブロンズゴーレムを見せたいところだったけど、それは父上への報告の場で使いたいので、今は魔力の消耗を抑えておくことにした。この場はロックゴーレムでも十分な説得力があるだろう。


「……え、これはまさかゴーレム!? 君が召喚したのか!?」

「ええ」

「敵では、ないのだな?」

「はい、僕の味方です」


 ゴーレム系は、実はレムレースとしても存在している。ボス部屋に出現する他、ダンジョントラップの中に敵性ゴーレムを呼び出すトラップがあるのだ。罠に関してはだいぶ奥に行かないと出現しないけど、踏み抜くと非常に面倒なことになるらしい。

 ゴーレム系は手強い割にはドロップ品が悪く、リスクとリターンがまるで釣り合っていないそうだ。経験値は強さ相応に多く得られるらしいので、タフさも相まって鍛えるには都合の良い相手なんだそうだけど……。


「……エリオス君、今日で10歳になったばかりなんだよね? なんでこんな高度な魔法を使えるんだい?」


 おっと、パウルさんに疑惑の目を向けられてしまったか。ティアナやゼルマやフランクなら、エリオス様すごいで適当に流してくれるけど……パウルさんからすれば、"10歳になるまで魔法の訓練をしてはならない"という国法で禁止された行動をしている可能性があるなら、追及しなければならないのだろう。

 もちろん、僕はそのようなこと百も承知だ。言い訳もちゃんと用意してある。


「……僕は今日、不思議な夢を見たんです」

「夢?」

「そうです。その夢の中では、僕は人里離れた場所で地属性魔法を研究し極めたおじいさんでした。その人生を追体験するような夢を見ているうちに、何度か地属性魔法を使っている場面も見ました。その地属性魔法を可能な限り再現したらこうなったんです」


 これはほとんど本当で、ほんの少しだけ嘘が混ざっている。夢でおじいさん魔法士(ドグラス)の人生を追体験したのは本当だし、前世の僕(ドグラス)が作り上げた魔法を使っているのも本当だ。その中で唯一嘘だと言えるのは"地属性魔法"という部分かな。

 ゴーレム魔法は、地()()()()()()()()()()。地属性だけで成り立つ魔法じゃない。ドグラスも地と闇の2属性を持っていて、だからこそゴーレム魔法を作り出すことができたわけだ。僕としては簡単に真似されたくないので、こういうミスリードを仕込んでいるわけだな。


 ……そして、アルカディア王国では"夢で見た"と言っておくと大抵のことは通じる。なにせ――






「――ああ、フィスタ様とニーシュ様の気まぐれか。夢で追体験してるなら、魔法の完成度が高いのも納得だよ」

「相当期待されているのですね、貴方は」


 ……とまあ、そういうことだ。


 アルカディア王国ではフィスタ様とニーシュ様の御意思なのか、特殊な力を得る人がごくまれに現れる。それは生まれつきだったり、ある一定の年齢を迎えてからであったりと様々だが、アルカディア王国では"実際に起こること"として広く認識されている。だから、僕のこれもフィスタ様とニーシュ様の御意思と考えられるわけだ。


「ただ、すごく疲れますね。見様見真似でゴーレムを作りましたが、操作してレムレースと戦わせるのは思ったより難しいです」

「ああ、だから傷も無いのにヘロヘロなのか。体力が無いお坊ちゃんなのかと思ったけど、なるほどその理由なら納得だな」

「どれほど鍛えても、こういう気疲れはどうしようもないですね」


 ははは、とパウルさんと笑い合う。とりあえず、疑いは晴れたようだ。


「……しかし、この荷物量はちょっと大変じゃないか?」

「ええ、僕もそう思います。なので、マジックバッグⅠをどこかで入手してこようと考えていまして」

「ああ、なるほどな……よし、それならアルカディアスに良い店があるぜ?」

「えっ?」


 そう言うと、パウルさんが備え付けの紙に何かを書いて渡してくれた。

 紙を見てみると、簡単な地図が書かれていた。パウルさんの署名も一緒だ。


「ここだ。パウルの紹介だと言えば、それなりの対応をしてくれるはずだ。署名もしておいたから、また行ってみてくれ」

「ありがとうございます!」


 紹介状を大切にしまう。今日は残念ながら持ち合わせが無いけど、善は急げと言うし顔だけ出してみようかな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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