1−15:踏破、第2階層
「……これは、とても運が良い、です」
「ポーションっぽい見た目だけど、これはなんだ?」
「……薄い青のポーションが、キュアポーションⅠ。水色のポーションが、キュアポーションⅡです。バットがドロップするのは、知っていましたが、私自身はほとんど見たことがありませんでした」
「なるほど、ドロップ率は低めなのか」
青みがかった色をした、謎のポーション。それを見たフランクが正体を教えてくれた。
キュアポーション……傷ではなく、状態異常を治すためのポーションだな。キュアポーションⅠは毒しか治せないが、キュアポーションⅡは麻痺も治すことができる。その点で、純粋な下位・上位互換のアイテムと言えるだろう。
ただ、毒を使ってくるモンスターやレムレースはそこそこいるけれど、麻痺攻撃の使い手はあまりいないのが実情だ。実際、第20階層までに出現するレムレースで麻痺攻撃を使ってくるのは、第20階層だけに出現する"シビレマイマイ"くらいしか居ない。あとは樹海ダンジョンのような特殊なダンジョンでもない限り、麻痺攻撃をしてくる敵と遭遇することはほとんど無いのだ。
……とまあ、そんなわけで。アンチパライズバングルと似たような理由で、キュアポーションⅠとⅡはそこまで値段に差が無かったはずだ。
「こいつは大事にとっておこう。また使う時がくるかもしれないからね」
毒攻撃を仕掛けてくるレムレースは、第8階層以降にしか出現しない。そこへ到達するまでには、まだまだ時間がかかるだろう。
……それでも、第2階層からは毒ガスの罠があるからな。全て固定罠なので近付かなければ無害だけど、備えておいて損は無いだろう。
「よし、先に進もうか。今日は第2階層のボス部屋まで行って、そこで周回したら探索終了だ」
「「「了解」」」
「よし、ロックゴーレム。先に進んでくれ」
――ゴゴゴ……
罠が無いであろう左ルートを、ロックゴーレム2体を先頭にして進んでいく。仮に地図が間違っていたとしても、ロックゴーレムが先に罠を踏んでくれるので安全性は格段に高まるはずだ。
その分、進行速度が犠牲になってしまうけど……それはもう仕方ないな、安全には代えられないのだから。
――ガシャン、ガシャン、ガシャン……
もちろん、最後尾はブロンズゴーレムが担当だ。Eランク相当のレムレースすら瞬殺する、僕の切り札で最大戦力だからな。最も厳しいポジションを任せている。
この布陣なら、余力をもって第2階層を突破できるだろう。
◇
「……よし、無事ボス部屋に到着だな」
第2階層も終わり、目の前に下り階段とボス部屋の入り口が見えてきた。
……道中でレッドジェリー4体、ゴブリン5体、バット4体と遭遇し、全てゴーレムで倒すことができた。バックアタックも2回ほどあったけど、ブロンズゴーレムがうまく捌いてくれた。ゴーレムで前後を挟む布陣は大正解だったみたいだ。
ダメージを無視できるからこその捨て身攻撃で、ロックゴーレムがバットを次々と打ち落とす様もなかなか見応えがあったな。
……さすがに、さっきのバットでドロップ運を使い切ったのか、何もドロップアイテムは無かったけど。既に多くの貴重なアイテムを入手できているので、僕としては悪くない気分だ。
「みんな、予定通りここでもボス周回をしようと思う。それでいいかな?」
「もちろんです、エリオス様」
「構いませんよ。むしろ、私も楽しみになってきたっす!」
「……エリオス様のお考えの通りに」
3人から同意を得たので、ロックゴーレムに扉を開けさせて中に入る。第1階層のボス戦は、20連勝することで特別なドロップ品を得ることができたけど……果たして、第2階層はどうかな?
仮にドロップ品を得られるとして、ボスはホブゴブリンのまま変わらないけど……それでも、ドロップ内容は変わるのだろうか?
それを今、試してみよう。
――バタン
全員が部屋に入り、最後にフランクが扉を閉める。
……ボス部屋に、3本の白い光の柱が現れる。その光の中から現れたのは……。
「「「ギャガァァァッ!!」」」
事前の情報通り、ホブゴブリンが3体だった。1体増えただけでも、なかなかの威圧感だな……だけど!
「ゼルマ、フランク、牽制を頼む! 僕がゴーレムで仕留める!」
「「了解!」」
「よし、全員行け!」
――ドスッ! ドスッ!
――ガシャン!
ロックゴーレム2体に加えて、ブロンズゴーレムもホブゴブリンに向けてけしかける。そこにゼルマとフランクも加われば、さすがにこちらの方が過剰戦力だった。
――ゴスッ!
「ギャッ!?」
――ズバッ!
「ギッ!?」
――ドゴォッ!
「ギャギッ!?」
わらわらと集まってくる敵に動揺したのか、ホブゴブリンはあっさりとゴーレム軍団に倒された。後にはポーション3つがドロップしているようだ。
……おっと、レベルが上がったみたいだな。これでレベル11かな? 帰ったらまたレベルゲージで見てみないとな。
「レベルが上がった。どうやら11になったみたいだ」
「え、もうっすか?」
「……早いですね。やはり、ボス周回は効率が良いのかも、しれません」
「案外、そろそろ2人もレベルアップするんじゃないかな?」
ダンジョンの階層を30分間うろつくよりも、ボス部屋を20周する方が経験値もドロップ品もたくさん得られるからね。罠に引っ掛かる心配も無いから、こっちの方がよっぽどいい。
……ただ、今度はまた別の問題も出てきてしまったわけだけど。
「そろそろ荷物が重くなってきたな……フランクは、キツくないか?」
「……まだまだ、全然大丈夫です」
「分かった、でも無理はしないでよ?」
「……了解」
最初こそ自分でリュックを背負っていたのだけれど、途中からフランクに持ってもらっていた。ポーションやハイポーションでリュックが一杯になってしまい。中身が液体だからなのかかなり重たくなってしまったのだ。予備のリュックを僕も背負っているけど、そちらも徐々に中が埋まりつつある。
……本気でボス部屋周回をするなら、"マジックバッグ"というアーティファクトが必要だな。見た目よりも物がたくさん入り、しかも重さを感じないアーティファクトであるマジックバッグ……ⅠからⅣまでの等級があるけど、最下級のマジックバッグⅠなら今の僕でもどうにか手に入れられるかもしれない。
それまでは、この重さも我慢だな。
「よし、2回目のボス狩りを始めよう。フランク、外に誰かいるかい?」
「……大丈夫です、閉めますよ」
フランクに再度扉を開け閉めしてもらう。さて、目標は40回だけど……どこまでいけるかな?
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