1−14:第2階層
「ごちそうさまでした」
「「「ごちそうさまでした」」」
ボス部屋での昼食会を終え、後片付けをする。完全に外から隔離され、レムレースに襲われる心配も全く無い快適な環境をダンジョン内で構築できるとは思わなかった。ボス部屋休憩所か……覚えておこう。
「そういえば、ボス部屋って全階層にあるのか?」
「……人が潜ったことのある、階層に限っていえば、全ての階層にあります」
「まあ、何階層か続けて同じボスモンスターだったりするっすけどね。ちなみに、第2階層と第3階層のボスもホブゴブリンで、数が1ずつ増えてくだけっす」
「へえ……」
第3階層ボスはホブゴブリン4体か。今の僕でもいけなくはないけど、ちょっと厳しいかな……。
レベルが上がって魔力量も増えたけど、それでもブロンズゴーレム3体か、ロックゴーレム7体を召喚するのが精一杯だ。反撃でゴーレムが破損する可能性を考えると、魔力的な余裕がほとんど無いのは怖い。ゼルマとフランクがいてくれるので、その分安全マージンは取れてるけど……時間的な部分も考えて、今日は第2階層までの探索に留めるのがベストかな。
一応、魔力の回復を待ってゴーレムの数を積み増していく方法も、あるといえばあるけど……それは、準備時間を十分にかけられる場合の話だ。魔力切れの時に不測の事態が起こる可能性も0ではないので、魔力残量には常に余裕をもっておきたいところだ。
◇
第1階層のボス部屋を出た僕たちは、すぐ目の前にある第2階層への階段を下っていく。この階層からは罠が設置されているので、より注意して行動しなければならない。
地図を確認するのはもちろんだけど、なにより自身の現在位置を見失わないよう注意しなければ。
「さて、第2階層に来たわけだけど……」
階段を下りて前を見ると、道が3方向に分かれている。右、正面、左の3方向だ。地図上はどのルートを通っても、次の階層への階段にはたどり着くことができる。
……ただし、右のルートには罠が多く仕掛けられているらしい。第2階層といえど、木矢の罠や毒ガスの罠など下手すると致命傷に繋がりかねない罠が混ざっているので、避けて通るのが正解だろう。
同じ理由で、正面のルートもやや厳しい。こちらは中間地点に小さめの部屋があり、そこに罠が1つだけ仕掛けられているのだけど……その罠が"移動検知型"というタイプの罠で、部屋内に動くものがある限り作動し続けるタイプの罠らしいのだ。部屋を通らないと次の階層へは行けないため、回避不可能な罠でもある。
そして、その罠の効果というのが、いわゆるレムレース召喚罠となっている。けたたましい音と共に無限にレムレースを呼び寄せ続け、部屋にいる限りは戦い続ける羽目になるらしい。
左ルートは特に罠なども無く、一本道で比較的安全に通れるようだ。ただし、左ルートだけは天井がやや高くなっているみたいで……。
「バット、苦手なんですよねぇ」
「……空を飛ぶレムレース、攻撃が届きにくい」
この階層から出現するバットが、かなりの頻度で飛来してくるらしい。はっきり言って弱いけど、空を飛ぶというその1点がかなり厄介なのだとか。
……これは、ゴーレム以外の魔法も使ってみるチャンスかな? 地属性の魔法は、なにもゴーレムを作るだけが能じゃないからね。
「「キィ!」」
おっと、噂をすればなんとやら。左ルートの奥から、バット2体が姿を現した。
バットは天井スレスレの高さを飛んでいて、さらに僕たちがいる場所も天井がかなり高くなっている。武器攻撃はちょっと届かなさそうだ。
ただし、魔法攻撃なら十分射程圏内だ。
「むぐぐ、これは下りてくるまで待つしかないっすね……」
「いや、ここから撃ち抜こう」
「……エリオス様、なにか良い方法が?」
「汎用性においては、地属性魔法の右に出るものは無いのさ。いくぞ、"ストーンバレット"」
――ヒュオ……
魔法を唱えると、僕の目の前に石のつぶてが1つ生成される。これを撃ち出して敵にぶつける魔法がストーンバレットで、地属性魔法においては基本中の基本たる攻撃魔法でもある。
そして、この魔法は結構応用が利く。そのままぶつけてもいいし、バットのように体力の無いレムレースが相手の場合は……。
「発射!」
――ヒュッ!
石つぶてをバットに向けて放つ。狙いは少しズレているが、これでいい。
「炸裂しろ!」
――パァァン!
「「ギッ!?」」
当たらないとでも思ったのか、油断しているバットの目前で石が破裂する。小さく分裂した石粒が、バット共の体をしたたかに打ち付けた。
通常のストーンバレットより威力は劣るが、その分攻撃範囲を広くした応用版だ。守りの固い敵や、体力のある敵が相手だと威力不足となるが……。
「「ギィィィィ……」」
翼に穴を開けられたバットが、力なく地面へと落ちてくる。
――ボトボトッ……
地面に落ちたバット2体が、ぐったりとしている。致命傷は与えられなかったようだが、あのダメージではもう飛び上がることはできないだろう。
……ここは、僕の手でトドメを刺してやるのが道理か。
「僕がトドメを刺す。手は出すなよ」
「「……了解」」
地面に横たわるバットに向けて、警戒しながらゆっくりと近付いていく。モンスターやレムレースの死に物狂いは、想像を超える力を発揮してくると聞いたことがあるからね……瀕死とはいえ、油断はできない。
剣と盾を構えて、リーチの中に入った。まずはバットを1体、手に持った剣で突き刺す。
「ギッ……」
刺されたバットは白い粒子へと代わり……何も落とさなかった。よし、次だ。
「……ギッ!」
こちらはまだ体力が残っていたようで、近付いた途端に思い切り飛び上がり、翼で叩こうとしてきた。空を飛べるだけあって羽ばたく力は結構強く、意外と侮れない攻撃だと聞いたことがある。
「ふっ!」
――ガギィッ!
「キッ!?」
もちろん、その攻撃は読んでいたので盾で防御する。いくら侮れない攻撃とはいえ、父上の攻撃を見慣れた僕からすれば防げて当然の威力でしかない。
「はっ!」
――ズバッ!
「ギィィッ!?」
返す剣で、バットの体を深く切り裂く。それが致命傷になったようで、白い粒子へと還っていき……。
……何やら、薄っすら青色をしたポーションと、水色のポーションがドロップした。
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