1−11:VSホブゴブリン
「さて、ボス部屋に入ったけど……」
「……何もいませんね、エリオス様」
ゴーレム達を先頭にボス部屋へ入ると、中はそこそこ広い部屋だった。綺麗な円形のドームのようで、床は綺麗に平らだ。戦いの場として相応しいだろう。
ただ、どこにもホブゴブリンの姿は無い。一体どこに……?
「あ〜……エリオス様? ここ、扉を閉めるとレムレースが出てくるんすよ」
「……倒すまで、扉、開かなくなります」
「へえ、そうなんだ」
見ると、フランクが扉を押さえてくれている。あれが閉まると、満を持してホブゴブリンが登場するようだ。
……ボス部屋の情報は本にも一切無かったけど、そんなに人気が無いのかな?
「……閉めます。準備、よろしいですか?」
「ああ、いつでもいいよ」
改めて、剣を構える。ロックゴーレム2体とブロンズゴーレムにもそれぞれ武器を構えさせた。
――バタン
そして、扉が閉まる。同時に、部屋の奥に二本の白い光の柱が立ち上り……。
「「ギャガ、ギャガ!」」
体の大きなゴブリンが2体、白い光の中から姿を現した。これがホブゴブリンか、棍棒まで持っていてなかなか強そうだな。
まあ、それでもゼルマやフランクにとっては、片手間で倒せる程度の相手でしかないのだろうけど。まだまだ2人に追い付くには遠いな……。
……おっと、よそ見してる場合じゃないな。
「行け、ブロンズゴーレム!」
――ガシャン!
虎の子のブロンズゴーレムを1体、ホブゴブリンに向けてけしかけた。ブロンズゴーレムは重厚な音を立てながらも、滑らかな動きでホブゴブリンに素早く肉薄していく。
「「ギャガッ!?」」
――ブォンッ!
接近を察知したホブゴブリンが棍棒を構えるが、ブロンズゴーレムはそれよりも先に、ロングソードを横薙ぎに振るった。
――ズバッ!
「「ギッ……」」
剣に斬られ、ホブゴブリン2体の首が宙を舞う。誰が見ても致命傷なダメージを負ったことで、ホブゴブリン2体は光の粒子となってダンジョンの空へと消えていった。
後に残ったのは、ポーションが2つと黄緑色の液体入り瓶――色合いからして、どうやらこれはハイポーションのようだ。より深い傷も癒すことができる、強力な回復薬だな。
「………」
まあ、なんとなくこうなる気はしてたけどね。ブロンズゴーレムが普通に強すぎて、ホブゴブリンでは相手として不足していたみたいだ。
もっとも、強いのは僕自身ではなくゴーレムなので、そこは勘違いしないようにしないと。剣の研鑽は欠かせないな。
「一瞬でしたね、さすがエリオス様です」
「えぇ……エリオス様、やっぱりそれ反則っすよ」
「……ホブゴブリンが、まるで赤子扱い。ブロンズゴーレム、強い」
ブロンズゴーレムは、少なくともランクE相当のレムレースを瞬殺する力があるのは分かった。もっと上のランクの敵が相手でも問題無いだろう。
……ならば、ロックゴーレムは? 僕が見る限りだと、ランクE相当のレムレースが相手でも良い勝負はできそうだけど……。
「ちなみに、もう一度ボスと戦う時はどうするんだ?」
「ああ、それなら扉を開け閉めすれば、すぐ出てくるっすよ」
「……次は、ロックゴーレム、ですか?」
「ああ、そのつもりだ」
もちろん、ブロンズゴーレムを最終ラインに据えておくけどな。
「……では、いきますね」
――ギィィ……
――バタン
フランクが扉を開け閉めすると、また光の柱が2本立った。
「「ギャガァァァ!!」」
そして、そこからホブゴブリン2体が出てくる。
「行け、ロックゴーレム! 敵を押し潰せ!」
――ドスンッ、ドスンッ、ドスンッ……
すぐに、ロックゴーレム2体をホブゴブリンと戦わせる。動きにブロンズゴーレムのような滑らかさは一切無く、鈍重そのものだ。
「「ギャガ!」」
――ドゴッ!
――ゴスッ!
そして、今度はホブゴブリンの攻撃の方が早かったようだ。岩鎚を振り上げるロックゴーレムの胴体に、ホブゴブリンの棍棒の一撃がそれぞれ命中する。
――ゴゴゴ……
……だが、ロックゴーレムは動じない。打撃点に多少のヒビは入ったものの、動きに支障が出るほどではなさそうだ。ホブゴブリンの一撃に余裕で耐えるとは、やはりゴーレムの守りの固さは凄いな。
「「ギャガッ!?」」
そして、先ほどの攻撃を必殺のつもりで放っていたのか、ホブゴブリンが退避行動に移っていない。今も射程圏内に入ったまま、唖然とロックゴーレムを見上げている。
そして、それはあまりに致命的過ぎる隙だった。
――ブォンッ!
――バギッ!!
「「ガグッ!?」」
ホブゴブリンの頭に、岩の棍棒が振り下ろされる。パニックからか棒立ちになっていたホブゴブリンは、その攻撃をまともに受けてしまった。
頭を叩き潰され、後ろに倒れていくホブゴブリン……その姿が白い粒子へと変わり、ポーション2つとハイポーションに変わったところで。
「おっ?」
「あ、レベルが上がりましたね」
少し、自分が強くなった感覚を覚えた。どうやらレベルが上がったみたいだ。
そして、パーティを組んでいたティアナにも経験値が入ったようで、ティアナのレベルも上がったようだ。
「………」
僕のロックゴーレムは、ホブゴブリンよりも強かったけど……やはり、ロックゴーレムの弱点が露呈してしまった。ホブゴブリンにすら先制攻撃を許してしまうほどの鈍重さは、さすがになんとかしないといけない。
ブロンズゴーレムは数を揃えることができないから、僕の主力はしばらくロックゴーレムになる。材質や構造、武器なんかの見直しもそうなんだけど……なにより、ゴーレムの行動を決める人工知能をブラッシュアップさせていかないとな。
「ロックゴーレムさんでも勝てましたね」
「1体1体が、ランクEのモンスターを超える強さを持つゴーレム軍団……」
「……まだまだ、エリオス様は、強くなれる」
そうだな……よし、決めた。
「ティアナ、ゼルマ、フランク。今日はしばらく、ここでホブゴブリンを狩り続けたいと思ってるんだけど。3人はどう思う?」
「エリオス様のおっしゃる通りに」
「マジですか……でも、その方がいい、のかな?」
「……エリオス様に、賛成します。無理はせず、ここで力を高めるのが、よろしいかと」
ゼルマは微妙だが、ティアナとフランクは賛成してくれた。
よし、ここでホブゴブリンを相手にしつつ、ゴーレム製作魔法の試験改良だな。扉の開け閉めをするだけで、手頃な強さのレムレースが固定湧きするというのは効率面でも本当にありがたい。
「よし、フランク。扉の開け閉めを頼む」
「……かしこまりました」
扉の開け閉めが行われ、再び光の柱が2本立ち上る。さて、3度目のボス狩りといこうか!
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